表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/34

第23話:影の覚醒

 ――なんじ、力を欲するか?


 突如、脳内に鳴り響いたその思念こえに僕は戸惑いを隠せなかった。

 舌っ足らずなセラの声とも、生真面目なルミナのものとも違う、聞いたことのない少女の思念こえ


 ――君は、誰?


 ――我は影なる者。


 ――かげなるもの?


 ――むぅ、もう一度聞くぞ。力が欲しいか?


 その思念こえの主はじれったそうに、再び僕に聞いてきた。

 この際、相手はどうでもいい。「力が欲しい」と僕は答えた。


 ――よかろう。ならば【鎧化アムド】を解除せよ。


 ――で、でも、それじゃあ……


 ――ええい、いいから我を信じよっ!


 それは突飛な指示ではあったが、この状況でノーと言う選択肢は、残念ながら今の僕にはなかった。


 言われた通り【鎧化アムド】を解除すると、生身になった僕の前に人型のセラが現れる。しかし、いつもとは雰囲気が違う。彼女は右手を左手で押さえ「ククク……」と含み笑いをし、 


「我が姉よ、しばし体を借りるぞ」


 そう言って髪を掻き上げた。


 すると変化が訪れる。

 まるでインクでも垂らしたみたいに、ピンク色の髪が漆黒に染まり、体が一回り大きくなる。呆気に取られる僕の前に現れたのは、裸ワイシャツの格好をした14才ほどの美少女だった。


「ま、まさか、お前は……!?」


「我が名は〝アンブラ〟! 我が王の忠実な下僕にして、最強の暗黒水飴シャドウスライムなり!」


 アンブラと名乗る黒髪の少女は額に手を当てて謎のポーズを取った。

 何が起きたかはわからない。

 だが、直感的に理解できた。今ここにいるこの少女が、僕が使役する3匹目のスライム〝アンブラ〟なのだということを。


「さあ、我が王よ。反撃のときだ。我が手を取り、魔力を捧ぐがいい」


 アンブラは大仰な言葉遣いで、左手を僕に差し出した。

 迷ってる暇はなさそうだった。僕が急いでそれを取り、言われた通り魔力を流すと、彼女の右手には30センチほどの短いワンドが現れる。


「おお、我が王よ感じるぞっ! 王の甘美で膨大な魔力を!」

 

 言うとアンブラは杖先に漆黒のエネルギー球を発生させた。

 スイカほどの大きさになったその球は、彼女が杖を一振すると、再起動したアイアンゴーレムめがけ一直線に飛んでゆく。


「【暗黒魔弾シャドウボール】!」


 それは敵の胴に命中した。

 するとゴーレムは一瞬、ひるみ、ガクンと膝を折りそうになる。


「き、効いてる!」


「フッ……当然だ。我の闇属性のエネルギーは物質の壁を通り抜け、その本質にダメージを与える。相手が何でできていようとも我の魔法からは逃げられない」


 そう言いアンブラは杖を構えた。

 2発目を放つつもりだろう。

 僕は彼女の手を握り、全力でそれを支援する。


「【暗黒魔弾シャドウボール】!」


 暗黒の球はまたも命中。

 アイアンゴーレムは一瞬、硬直する。

 それでも敵は止まらなかった。人工物であるために、恐れや痛みといった感覚を持ち合わせてはいないのだろう。


 僕らの後ろにはルミナがいる。

 彼女を攻撃させるわけにはいかない。


「アンブラ、僕が囮になる。攻撃は君に任せていい?」


「フッ……愚問だな、我が王よ。最強の暗黒水飴シャドウスライムたるこの我が、必ず彼奴きゃつを仕留めてみせよう!」


 僕は彼女から手を離し、アイアンゴーレムが破壊した石畳の欠片を拾って相手に向かって投げ付ける。

 

「こっちに来いよ、このウスノロ! 僕が相手になってやる!」


 僕は欠片を次々拾い、ゴーレムに向けて投げ続けた。

 もちろんこんな攻撃は相手にとって屁でもない。だが顔の前を飛ぶハエを振り払いたくなる感情か、あるいはそれに近い機能のようなものはこの敵も持っていたのだろう。


 アイアンゴーレムは、突然、ぐるりと向きを変え僕にヘイトを向けてきた。僕は相手に近付きすぎず、かつ遠すぎない絶妙な位置で敵を挑発し続ける。


「今だ、アンブラっ!」


 アイアンゴーレムが彼女に背を向けた瞬間、影を司るスライム少女は特大の闇魔法攻撃を敵の胴体に命中させた。それはダメージが大きかったらしく、ゴーレムはのけぞる姿勢を取る。


 よし、行けるっ!


 大きなダメージを食らったことで、当然ヘイトはアンブラに向くが、僕は執拗に欠片を投げ付け再び敵を誘引した。


 後はもうその作業の繰り返しだった。

 囮役の僕が敵を引き付けて、即死急の拳をぎりぎりかわす。

 その背にアンブラが魔法を打ち込みダメージを蓄積させてゆく。


 するうちゴーレムの体は傷付き、ビキビキとヒビが入っていった。

 あと、もうちょっとで倒せそうだ。


 そう思った時、異変が起きた。

 突如立ち止まったゴーレムは、先程のように腕を伸ばしアンブラの方に狙いを定めた。また、あの攻撃をするつもりだ――ルミナを襲った凶弾を。


「来い、アンブラ!」


 叫んだ僕は、欠片を投げるのをやめてゴレームの背後から彼女を呼んだ。

 こちらの意図を察した察した少女は全速力で走って来る。


 アンブラがゴーレムの股下をくぐるのと、そいつが鉛玉を発砲するのはほとんど同じタイミングだった。結果、盛大に狙いを外した敵は背中からシュウと煙を上げて、再び反動モードになる。


「今だアンブラ! 魔力は僕が供給する! 特大のやつをぶちこむぞっ!」


「ククク……我が王よ、承知した! 我が名はアンブラ、影なるしもべ。最強の暗黒水飴シャドウスライムなり。我が王の前に立ちはだかる敵を、業火によって討ち滅ぼさん。き尽くせ――【暗黒獄炎衝撃波シャドウプロミネンスデスウェイブ】ッッッ!」


 アンブラは右手を敵の足にかざし、長い名前の呪文を唱えた。

 直後、漆黒の火柱がアイアンゴーレムを呑み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ