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第1話:パーティ戦力外通知

 最初に断っておくと、これは僕、クリフ・カリオスの日記のようなものであり、他人に読まれる想定はしていない。


 もし何かの間違いでこれを読んでしまった人がいたとすれば、その時は見なかったことにするか、ゴミ箱にでも捨ててくれると助かる。


 それじゃ、まず、何をどこから書こうか?


 この国、ラケルス王国で錬金術が盛んなことや、国家資格を持った錬金術師アルケミストが、おもにダンジョン探索等で多岐に渡る活動をしていることなどに関しては、この国に住む人間なら誰でも知っていることだから、今さら書くまでもないとは思う。


 ……いや、でも一応、書いておこうか。

 錬金術師アルケミスト化合獣キメラという、人工生命体を瓶に入れ、使役することが可能な職業である。


 化合獣キメラとは〝キメラティックモンスター〟の俗称であり、縮めてキメモンなんて呼び方をすることもある。錬金術師アルケミストの学園では、瓶から出した化合獣キメラ同士を戦わせて優劣を競い合う「キメモンバトル」なんていう風習があったりするんだけど、この話を深堀りするとそれだけでページが埋まってしまいそうなので、ここでは割愛することにする。


 まあ、とにかく、この国における錬金術師アルケミストとは、瓶から出したモンスターを使役して戦わせることのできる職業だと考えてもらって差し支えない。


 僕の家庭は優秀な錬金術師アルケミストの家庭で、父親も母親もそうだったし、遡っていくと祖父や曽祖父もそうであるらしい。


 そんなわけなので、僕は非常に期待され錬金術師アルケミストを育成する魔導学園アカデミーに入学した。

 少なくとも筆記に関しては、僕は常に成績上位をキープしていた。その部分だけを考えるなら、僕という者の存在が一族の名に泥を塗ることはなかったろう。


 そう、学科だけの成績なら……


 ともかくその後、18才で学園を卒業した僕は、エイネストという街にある冒険者パーティに入れてもらうことができた。

 そこで僕は3年間の学びを活かし、自ら錬成した化合獣キメラを使ってパーティに貢献しようとしたわけだけど……





「おい、クリフ」





 ある日のこと、パーティリーダーのジェイドが僕が呼びだして、みんなの前でこう告げた。


「お前、いい加減パーティ抜けろや。お前みたいのがいると足手まといなんだよ」


 僕は、羞恥の感情でかあっと顔が火照るのを感じた。

 周りのメンバーの顔を見回すと、そこには嘲笑や呆れの顔があるだけで、僕のことを庇う者はいない。


「……どうしてですか?」


「どうしてってお前、そんなん自分が一番わかってんだろうが!」


 ジェイドはドン!と机を叩いた。

 僕は腰元にぶら下げた瓶を無意識の内にぎゅっと握る。


魔導学園いいとこの出と聞いたからパーティに入れたやったのに、使役できるのは最弱のスライムだけとか、ふざけんのも大概にしろやカス!」


「で、でもヒールスライムとか、ポイズンスライムとか、シャドウスライムとか色々なのを使役できますよ!」


「間に合ってんだよ、そんなもの! 最弱のスライムなんかに頼らなくっても、回復は僧侶プリーストにやらしゃあいいし、戦いは戦士ウォリアーにやらしゃあいい。てめえの、ちんけな水飴どもがウチのメンバーより活躍したことがあるか?」


 僕は言い返せなかった。

 彼の言うことは正しいからだ。


 僕はいわゆる落ちこぼれ、底辺錬金術師(アルケミスト)である。

 学園に在籍した3年間、何をどうやって錬成しても僕はマンティコアやカーバンクルなどのまともな化合獣キメラを作ることはできず、使役することができたのは、その失敗作であるスライムだけだけだった。


 付いたあだ名は水飴職人スライムマイスター


 その、あまりの才能のなさに教師たちは呆れ果て、卒業間際の頃合いには僕に対する指導の全てを投げ捨ててしまったほどだった。


「それでも、パーティは抜けられません! 生活がかかっているんです!」


「そりゃ、こっちだって同じだよ! その忌々しいペンダントがなきゃ今すぐに首にしてやるのによ!」


 ジェイドは憎々しげな目で、僕の胸元にかかっている金色のものをにらみつけた。

 それは国営の魔導学園アカデミー出身者であることを示す身分証であり、国が推奨する錬金術師アルケミスト育成事業の補助するためのものでもある。


 簡単に言えばこれを付けている限り、僕がどんなにヘボ錬金術師アルケミストだったとしても、一度契約したパーティは一定期間、僕を解雇することができないのだ。

 だからジェイドはこのように、みんなの前で恥をかかせることで、僕を自主的にこのパーティから追い出そうとしているようだが……


 だが、しかし引くことはできない。

 なぜなら僕は、ほとんど勘当に近い形で実家から追い出されてしまい、今はこのパーティの分前だけでなんとか食いつないでいる状況なのだ。


 ジェイドはチッと舌打ちすると、僕の耳元でこうささやいた。


「……ダンジョンの中じゃ気を付けやがんな。お互い暗くてよく見えねぇから、ついつい()()()()()()しれねぇ」


 それは恐ろしく冷ややかで、ぞっとするような声だった。

 翌日、僕は彼の言葉の意味を身を持って知ることとなる――

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