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4 インターン②

「どうしてあんなに分からず屋なのかね、あの頭でっかちのバカ部員は!」


「ほんと大変そうですね」


「大変も大変、おお大変だよ。俺はガキのお守りをやるために我が社に入ったんじゃないっつーの!」


 オジさんが怒りながら冷酒を飲み干し、グラスをカウンターに置いた。


 オジさんのすぐ隣の席に移動して話を聞いていた僕は、遠慮がちにおじさんに聞いた。


「あの、結構飲まれてますが……お代わり頼まれます?」


「お、そうだな。大将、同じの!」


 店主が無言で新しい冷酒のグラスをカウンターに置いた。


 オジさんが話し始めて30分ほどが経った。内容の詳細はよく分からなかったが、僕は時々相槌を打ちながら真面目な顔で話を聞いた。


 オジさんの話を総合すると、「我が社」の「部員」のせいで色々と苦労しているらしい。聞いてて何だか可哀想になってきた。


「学生さんよう、神妙な顔してるけど、こんなオッサンの愚痴聞いて楽しいか?」


 オジさんが突然僕に聞いて来た。僕は慌てて正直に答えてしまう。


「た、楽しいかと言えば楽しくはないですが、大人の世界って大変なんだなあと勉強になります」


 オジさんは怒らなかった。僕の目をしばらく見つめると、口を開いた。


「ふん、正直な奴だな。だが気に入った。社会に出ても、あのバカ部員みたいにはなるなよ。何も考えずに『西方』『西方』と連呼しやがって。『ホクチン』を簡単に捨て石以下にする訳にいかんのがどうして分からん……」


 そこまで話したオジさんが、ハッと我に返った顔になり、僕に言った。


「なあ、学生さん。今の話の意味、分かったか?」


「いえ、全然……すみません」


 僕が正直に謝ると、オジさんは少しホッとした顔で言った。


「……それならいい。今日はヤケ酒しようと早退したんだが、学生さんと話せて楽しかったよ。もし今度また会ったときは俺が奢ってやるよ」


「ホントですか!? ありがとうございます!」


「ったく、遠慮のない奴だな。だが素直なのはいいことだ。社会人になっても素直さは忘れるなよ。それじゃな」


 オジさんは、そう言ってニヤリと笑うと、勘定を済ませて店を出て行った。


 これって仲良くなれたのかな……

 

 僕は、ぬるくなったビールを飲み干すと、店主にお会計をお願いした。

 

「うちの常連の相手をしてくれたお礼だ。お代はいらないよ」

 

 店主がニカッと笑ってそう言った。

 

 僕は居酒屋を出た。外はすっかり暗くなっていた。

 

 結局オジさんの言ってたことよく分からなかったな。ネットで調べながら事務所へ戻ろうか……

 

 僕はスマホを取り出すと、四ツ谷駅に向かって歩き始めた。

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