Fromのないラブレター⑦
こうしてラブレター事件は一件落着。日曜日の今日は百瀬とつき合ってはじめてのデートだ。昨日は緊張してよく眠れなかった。今も胸がどきどきしている。
家に迎えに来てくれると言うので、甘えることにした。少しでも恋人っぽいことを楽しみたい。それに、百瀬はいつも唯を睨んでいたくせに、けっこう優しかったりする。ただわかりにくいだけだ。今週学校で一緒にすごした数日でも新たな一面を知れたのだ。一日そばにいたら、もっと百瀬を知れるかもしれない。こんなにどきどきわくわくするのも気恥ずかしい。百瀬も同じ気持ちでいてほしいな、なんて願望もあったりして。浮かれてるなあ、と自分に苦笑した。
インターホンが鳴り、モニターで百瀬の姿を確認する。すぐ行く、と応答してから家を出ると、なぜか百瀬と隣家の三兄弟が対峙していた。
「……? なにしてるの?」
四人が唯に気がつき、視線が一気に集まる。美形四人の視線を受けるなんて、なにごとだ。
「……まさか先越されるとは思わなかった」
士音が眉を寄せて苦い顔をしている。
「僕たちのゆいちゃんなのになあ」
莉音も唇を尖らせる。本当になんだろう。
「そう簡単に唯を渡すと思わないほうがいいよ」
優しい笑みを浮かべた音伊が、ちらりと百瀬を見る。百瀬は不機嫌そうに三兄弟を睨んでいる。いったいなにが起こっているのか、頭の中が疑問符でいっぱいになる。
状況がわからないまま固まっている唯の手を、百瀬が掴んで引っ張った。三兄弟の視線が厳しくなり、本当になにが起こってるんだ、と混乱しながら手を引かれる。
「行こう、唯」
「な、名前……」
「あいつらがいいなら俺だっていいだろ」
「それは…………うん」
でも猛烈に恥ずかしい。名前を呼ばれるってこんなにどきどきすることなんだ。
少し振り返ると三兄弟が睨んでいる。本当によくわからないけれど、百瀬とつないだ手がすごく温かいことだけは、はっきりとしていた。冬に近い空気の冷たさも忘れそうなくらい、心までぽかぽかする。
いつか僕も百瀬のこと「紅葉」って呼ぶのかな。
想像しただけで恥ずかしくなった。
終




