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Fromのないラブレター  作者: すずかけあおい


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4/7

Fromのないラブレター④

 というわけで、ひとりずつ聞いていくことにした。

 帰宅してさっそく隣の長沢家に行くと、玄関に莉音がいた。帰ってきたところのようだ。

「りいちゃん、今ちょっといい?」

「うん、なに?」

 くりんとした目を向けられ、本当に可愛いなあと感動さえ覚える。唯と同じ人間とは思えない。

「りいちゃんは僕のことどう思ってる?」

「大好き!」

 即答された。もしかしたらラブレターの差出人は莉音かもしれない。もう少し話を聞こうと思ったら、莉音のほうが先に口を開いた。

「ゆいちゃんはもうひとりのお兄ちゃんだと思ってるよ」

「あ、……そう」

 これは違う。好きは好きでも兄弟に対する好意のようなものだ。

「どうしたの、急に」

「ううん、ちょっと聞いてみたかっただけ」

 首をこてんと傾けた莉音は不思議そうな顔で唯を見る。突然変なことを聞いたから、驚かせてしまったかもしれない。

「ごめんね、本当になにもないんだ。あ、いっちゃんは上にいる?」

「いるよ。今日は午前中だけだったみたい。大学生って忙しいのか暇なのかわからないね」

「そうだね」

 本当に素直で可愛い。苦笑して階段をあがり、音伊の部屋のドアをノックする。

「いっちゃん、唯です」

「どうぞ」

 中から声が聞こえて、そっとドアを開く。音伊は机でノートパソコンに向かっていた。なにかを入力していて、あ、と思う。あのラブレターはパソコンで入力された文字だった。もしかしたら音伊かもしれない。

「いっちゃん、変なこと聞くけど、僕のことどう思ってる?」

「……? 本当に変なことだな。どうした、急に」

「ううん、ちょっと聞いてみたくて」

 椅子をくるりとまわしてこちらを向いた音伊は、柔らかに微笑んだ。優しい笑顔は昔から変わらない。おいでおいでと手招きをされ、素直に従う。

「唯は可愛い弟だと思ってるよ。なにかあったのか?」

 頭を撫でられ、首を横に振る。優しさをしみじみと感じながら、音伊も違うとわかる。

 あのラブレターには『つき合ってください』と書かれていた。つまり兄弟としての好意ではない。莉音も音伊も違う。

 残るはひとり。でも遊び人の士音が唯を好きなんてことがあるのだろうか。まさか、遊び相手のひとりに迎えようとか……? ぶんぶんと首を横に振る。遊び相手なんていらないし、唯は本気の相手としかつき合いたくない。断ろう。

「どうした?」

「な、なんでもない。ちょっと考えごと」

 音伊が唯の動きを不思議そうに見ている。不審な動きをしてしまった。恥ずかしくて縮こまる。

 話していると隣の部屋から物音が聞こえてきた。士音が帰ってきたようだ。

「ごめんね、変なこと聞いて。じゃあまたね」

「ああ。なにかあったら相談するんだよ」

「うん、ありがとう」

 音伊の部屋を出て、廊下を進んで隣の部屋へ。ノックをすると「唯以外なら入っていい」と返事があった。これは唯が来ていることをわかっている。

「僕だけど入るよ」

「唯はだめだって言っただろ」

「しおくんの意地悪」

 こんな意地悪なことを言う士音が、唯を好きなんてありえるのだろうか。でも聞いてみないことにはわからない。好きな子ほどいじめたいタイプなのかもしれない。

「しおくんって僕のこと好き?」

 ストレートに聞くと、士音は固まった。

「ついに頭おかしくなったのか」

 真面目な顔をされ、士音も違うとわかる。この反応は、照れとかごまかしとかではなく素だ。首をかしげた士音は思案げに眉を寄せ、ゆっくりと唯に近づいてきた。ずいっと顔を覗き込まれて、圧で今度は唯が固まる。

「俺と遊びたいってこと?」

 ぶんぶんと横に振り、近づいてきた顔から逃げるために頭を引く。士音も違う。

 慌てて士音の部屋から逃げ出し、長沢家をあとにする。自室に戻って、しまっておいたラブレターを机に出す。一日経っても新しい文字が浮かんできたり、なにかが現れたりということはない。

「うーん……、いっちゃんじゃない、りいちゃんも違うし、しおくんも違う」

 三兄弟でないなら、この手紙の主はいったい誰?


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