-幕間- 「暗黒卿の"紋章"講座」
諸君、元気にしているだろうか?
今回はわたし、暗黒卿ヴァルスがみんなの為に紋章の何たるかをわかりやすく解説したいと思う!
まず第一に、紋章とは何か?それは我がエルデリーグ王国の成り立ちから入らなければならない。
千年前、この大地は12の国がひしめく戦乱の地だった。
それを、神より王者の紋章を授かった、一人の少年が統治し一つの国にまとめ上げたのだ。
王者の紋章はそのまま国の紋章となり、偉大なる力によって、戦で荒廃した大地を潤し豊穣な土地として再生させる。
12の国の王達はその奇跡を目の当たりにして、真の王に跪き、12の国は1つの国の12の領土となった。
国家統一後、真の王となった少年は再び神より啓示を受け、新たに授かった12色の大紋章を12人の領主達にそれぞれの特色で選び授けた。
国の力は更に盤石になり、国は栄え、民は王を称えた。
しかし、偉大なる王は戦乱の世の統一と、先の大地を蘇らせる軌跡によって力を使い果たしており若くして崩御。
国は悲しみに包まれたが、それが更に国の心を一つにまとめ上げる。
これが現代に至るまで続く、千年王国エルデリーグの歴史。
そしてそれ以降、神より授けられし大紋章による承認を持ってして、12の領主らの血の繋がりを持つ子孫たちへと新たな紋章が代々継承されて行った。
千年の年月の中で貴族は数を増やし、現在では紋章を扱えない貴族の方が珍しいとされている。
ロックス家 黒色 闇属性
オルランド家 黄色 雷属性
クシュリナーダ家 白色 光属性
アスリュート家 青色 水属性
etc……
しかし、それぞれの家に伝わる紋章は、代を重ねるごとに多種多様な能力を持ち、その力も強力になっていった。
それ故に悪用する者も出てきてしまう。
自分の力を過信し、力に呑まれて暴走する者は歴史上枚挙にいとまが無い。
だがしかし、そのような暴挙が許されるはずもなく、国を挙げての対策が講じられた。
紋章罪の制定。国家への登録の義務化。
取締り機関も立ち上げられ、これらは厳しく管理される事となる。
誰かの為にある力。
それが真の王となった少年が、神より紋章を授けられた時に心に刻んだ言葉。
その力はあまりにも強い。その為の責任もまた必然的に大きくなる。
紋章の力……
人間の持つ生命力を高め、紋章が持つ色を付与する。
例を挙げるならば、ブリザリオ伯は婿養子になったが、元はアスリュート家の次男だった為、青の紋章を受け継いでいる。
青の紋章は水の加護を持ち、紋章の発動時に所有者のオーラに水の力を与える。
ブリザリオ伯は拳にグローブのように氷を纏い相手を攻撃する使い方をするが、これを氷の剣として扱うなど、可能性は所有者次第で無限に増える。
紋章の力は魔法にも付与できるが、紋章の特性と相性の悪い魔法は掛け合わせると弱体化してしまう事がある。
紋章の発動には条件があり、通常時よりも多くのオーラを消費する。
オーラは休息する事で回復するが、使いすぎると後遺症など最悪死に至る場合もある為、注意が必要となる。
紋章には相性があり、色の持つ特性によっては完封される場合もありうる。
このように紋章とは使い方次第で様々な可能性を持つ。
それは使う者によって良くもなり、悪くもなる。
願わくば全ての紋章が正しく活用される事を願う。
最後に一つだけ皆に伝えたい。
我が国の英雄にして悲劇の王。
わたしが敬愛するその王の名は……
"ヴァルス・エルデリーグ"
わたしの遠い御先祖様だ。