旅立ち編①〜賢者の目覚め
俺、蘇我理夢人はある日、異世界にてシャロン・ウォーレスという男の子に転生した。
父親の名前はパウル・ウォーレス、母親の名前はカミア・ウォーレス。
俺が生まれて約二年後、妹のメリナが生まれた。
父親のパウルは、ウィレットという村で雑貨屋を営んでいる。
俺がいた世界でいうコンビニのようなものだ。
ウィレット村は人口1000人ほどの小さな村。
山々に囲まれ自然豊かな美しい村だ。
ただ一つ、自然界に潜む凶悪な獣達がいることを除いて。
と言っても、危険な獣達が野まで降りてくることは滅多に無い。
俺には蘇我理夢人として生きた前世の記憶や能力がある。だから、赤ん坊の頃から本来であれば言葉を発することもできたのだが、この状況を説明することも億劫なので、言葉が合っているかわからないが赤ん坊でいることに徹した。
能力でいうと不思議なことが2点あった。
一つ目、この世界の文字について、誰に教わるでもなく自然に理解することができたこと
二つ目、これは言葉にできないことだが、何か不思議な力が身体の奥底に渦巻いている感覚があること
転生の時に謎の光が言っていた「知識を使う時、マゲンも解放される」
俺は時々その言葉を思い出す。
シャロンとして生まれてから五年の月日が経ったある日のこと・・・
ある日、俺は母親のカミアと一緒に村の図書館を訪れた。
村の図書館はレンガ作りの3階建て、大きな娯楽施設の少ない村の子供達にとって大切な遊び場だ。
といっても俺は同年代の子供と遊ぶではなく、頻繁に本を読みに来ていた。
最近は魔法に関する本を読み耽っている。
「シャロン、そんな難しい本わかるの?」
カミアが話しかけてきた。
「うん、だいたいね」
「あなたは私やパウルと違って優秀ね。将来学者になれそうね」
そう言ってカミアが笑う。
5歳児に将来のことを話すなよ、と思いつつ、転生前の自分を振り返ると学者になるなんて夢にも思わなかった。
転生したら何にでもなるチャンスがあるのかと思うと、少しワクワクした。
その時だった。
「誰かーーーー!!!!」
突然、図書館の裏庭から声が響いた。
カミアと一緒に声の方に向かうと人だかりができている。
すると、一人、村の男の子が図書館の壁にぶら下がっている。
友達と遊んでいて降りられなくなってしまったようだ。
人だかりには大人が数名程度。飛び降りて受け止めることはできるかもしれない。ただ、高さを考えると自分と同世代の子供にそれができるかどうか。
「なんとか助けられないか」
そう考えた時、自分の中の不思議な力が反応した。
俺が魔法の書物を読んでいた理由、それは自分の中の不思議な力が魔法でないかという仮説があったからだ。
この世界の生物は魔源という力を宿している。
それらが放出することで、魔法を使うことが可能なのだ。
マゲン・・・そう、光が話していたのは魔源のことだった。
(もし俺が魔法を使えるなら)
人だかりから少し離れて、俺は両手に力をこめた。
そして、男の子に向かい放出した。
すると、男の子の手は壁から離れた。
あっと人だかりから声が漏れたが、その瞬間、男の子は宙に浮かび、そのまま地面へとゆっくりと降りていった。
あたりは驚きと歓声に包まれた。俺もほっとした。だが、その時、すさまじい量の知識が頭の中に流れ込んできた。
「うわーーーーーーー」
カミアが俺の肩を抱いた。
「シャロン!?どうしたの!?」
頭に入ってくるもの、それはこの世界に存在するすべての魔法だった。
俺は思い出した。
「知識を使う時、マゲンも解放される」
あの時、光が話した言葉。
俺が魔法を使ったことで秘められていた魔源の鍵が開いたのだった。
「ハアハア」
鼓動も通常に戻り、ようやく流入が落ち着いたようだ。
「シャロン、大丈夫?」
顔を上げて周りを見渡すと、人だかりは消え、ちらちらと俺を心配する数人の視線があるくらいだ。
「母さんごめん、もう大丈夫だよ」
俺は笑顔を見せた。
その日の夜、皆が寝静まった後、俺はこっそり家の外に出た。
この世界では、全ての人が自分のステータスを確認することができる。
それは子供でも例外はなかった。
過去に見た時、俺のステータスは普通の子供だった。
確認
表示された画像を見て、俺は驚いた。
マスタージョブ:
賢者<レベル:♾️>
冒険者<レベル:♾️>
創生士<レベル:♾️>
なんだこれは・・・