マシログッズを購入する
「あのぉ恩人、お名前を……」
「まぁ一期一会の縁だ、お互い名前はいいだろう?」
キリカはそっけなく返す。
「そんな事よりも、まずそんな恰好じゃあ競馬場を楽しめないなぁ。あんた、今日はいくら持っているのさ」
「え、カツアゲですか?恩人ですからカツアゲしなくても、お渡しします。ありがとうございました」
由香は財布から2万円を取り出すと両手で渡そうとする。
「え、ち、違ぇよ、金しまえ」
慌てた様子で由香に告げる。
「今日いくら使えるのか聞いてんの!」
由香の誤解を解くために大声で言う。
「あ、そうなんですか」
「当たり前だろ、カツアゲなんて真似しねぇよ、私そんな風にみえないだろ?」
キャップを脱いで、金に染めた髪をかきむしりまた被る。
パッと見ヤンキー少女なので、実際そう見えるのだが本人は不本意らしい。
「とりあえずショップ行ってなんか買おうぜ」
気を取り直して由香をメモリアル60にあるショップへ誘う。
馬のぬいぐるみをはじめとした所狭しと並んだグッズに由香は目を見張る。
「結構いろんなグッズ売っているんだな」と思っている由香をしり目にキリカは目当てのものを探す。
「うーん、どれがいいかなぁ。マシロの引退記念グッズか、これでいいだろう」
キリカはそういうと、桜花賞とヴィクトリアマイルを制した伝説の白毛馬・マシロのTシャツ・キャップ・トートバッグをレジに持っていく。
「私のってことですよね、支払いします」
由香が財布を出すのをキリカが手で制す。
「いや結構高額ですよね」
「あとでまとめて返してもらうからいいよ、そこは任せておけよ」
そういうとキリカは自分を支払いを済ます。
「ほれ、とりあえずこれに着替えてこいよ。あそこに女子トイレあるから。貴重品置き忘れてくるなよ」
「はい、すぐ着替えてきます」
そういうと由香は駆け出して行った。
マシロの黒のTシャツに着替え、マシロの黒のキャップを被り、黒のトートバッグを肩にかけたにわかマシロファンがそこにいた。
本人はなんのグッズが全く存じ上げないが。
「まぁ、それっぽい感じかな。下はまぁしょうがないな」
さすがにスカートや靴は売っていなかったのでタイトスカートとパンプスのままだが、それなりに競馬場スタイルになっているのを見てキリカは満足する。
元のジャケットとブラウスはトートバッグに突っ込んでいるようだ。
「鞄ダブったな、どうする、手荷物預けることできるけどさ」
「うーん、まぁそんなに邪魔でもないのでとりあえず持っておきます」
「そっか、とりあえずもう昼近いしな。何かつまみに行こうか」
そういうとキリカが歩き出したので由香ははぐれないようについていくのだった。