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紅の末裔  作者: みるく
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【序章】蘇芳さん

「……うげー」



やけに外が騒がしくてカーテンを開けたら案の定、雨。言うまでもなく今日の靴はブーツに決定だ。けれどいつもより30分早く起きたからよしとしよう。



とりあえず暖房と電気を点けてテレビ起動。それからトイレ洗顔お化粧、今日の占い……は12位だから無視。おにぎり作って、荷物まとめて、着替えながらニュースチェック。



『次のニュースです。昨夜、21歳の女性が連れ去られそうになる事件が起きました。手口や目撃情報、女性が大学生であることから、警察は先月から起きている女子大生連続誘拐未遂事件と断定し、捜索しています』


「あ」



思わず声に出てしまう。けれど悲しいかな、それを気にしてくれる人は誰もいない。



「(明日テストだ。しかも金曜日の課題のデータってパソコンで処理しなきゃ)」



この歳で物忘れが激しいのは残念極まりない。そしてこのパターンだと大抵ほかにも忘れている。



『犯人は男性で、身長180程の痩せ型、上下黒いスーツにサングラスを着用していたということです』



「(しかも今日部活!!そして遅刻してるーっ)」



けれど朝の時間帯というのはどこまでもヒトを急かす。ロクに考える時間も与えてくれない。



「やーばーいーっ」


『なお犯人は複数確認されており、車で移動してい』



ハイハイ暖房電気テレビ消灯カバンおっけー忘れ物なしいや何かあるけど!!気にしない。していられない。



「いってくる!!」



一人暮らしになると独り言が増えるっていうけれど、実際アレは本当だと思う。



「(てか外さむっ。でも早く歩けば体暖まるし学校にも早く着くし一石二鳥!!よっしゃあスピードアーップ!!)」



*****



というわけでベストレコードを叩き出し学校に到着はした。したのは大変よろしいが問題はここからだ。



「(あ、暑いスピードアップのし過ぎだコレ。学校に到着したのはいいけどとんでもない……っ化粧がぁっ……)」



そしてまたいつものパターン。



教室に突入すると、自称面倒くさがり屋さんの安曇アズミがボケ〜っと外を眺めていた。



「おはよーっ」


「あ、おはよう」


「あずみー」


「んー?」


「トイレ行ってくるー」


「いってら〜」



大人っぽいけどどこか不思議な安曇は、あたしが二言目にトイレ〜と踵を返してもそれなりの対応をしてくれる。



授業5分前。3分あれば充分だ。



「……」



端から見れば、お淑やかに身嗜みを整えている学生に映るだろう。というかそう見せているのだから当たり前なのだが。



「(ばぁかあっち!!汗ヤバいでやぁ〜てかこんなばかの距離で調子こいた。せっかく化粧ばしといてこの顔!!ばかしょーしー!!)」



将来ヒトの脳内がさらけ出されるような機械が発明されたらあたしは一発でお嫁に行けなくなるだろう。



そんなこんなで汗処理は完了した。これだから朝の貸切トイレはステキだ。



「ただいまー」


「おかえりー」



やっと落ち着いたと思いきや、何やら様子がおかしい。あたし以外の学生はソワソワと落ち着きがなく、普段は落書きにのみ使用される紙屑同然のプリントを今日は凝視している。



「あれ?今日ってさあ」


「中間テストだよ」


「わおーそりゃアグレッシブな情報をありがとう。そう言う安曇もプリントの見直しに精を出していらっしゃるー……ね」


「くれない……まさかー」


「うんー、忘れてたっ。でもまぁたまーにだから、ね」



安曇のドンマイ的な視線を受け流していると、紙の束を持った先生がやって来た。



「おはよう。それでは予告通り今日はテストを行う。座席表を張り出すので、それに従うように」


「(せんせーおやすみなさーい)」



完全に試合放棄をしたあたしは、暫しの二度寝と洒落込むことにした。



ちなみにテストの日をド忘れしたのは今回で3回目。ちなみに今年は2回目。



静か過ぎる暮らし故に少しの物音にすら敏感になって、咎める人がいないから必要以上にボケーッとしてしまう。その結果、時間に追われ肝心な事をド忘れしてみたり、同じ失敗を繰り返したり。



こういう日常でも、地方出身の一人暮らし、至って健全な女子大生にだって恐らく、普通のこと。



少なくともあたし蘇芳紅スオウ クレナイは2年9カ月続いた学生生活で慣れてしまっていた。

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