対戦
「勝負は一対一。交互に攻守を交代して点が取れなくなった方の負け」
「何度も断ったのに結局……」
結局勝負することになってしまった。
勝負の内容は高宮くんが言った通り一対一の点の取り合い。
審判は高宮くんが勤めてくれる。
「逃げるなら今のうちだぞ山吹。女子が無理してやる必要ないからな」
なんというお約束のセリフ。シンジくんの負けフラグがどんどん積まれていく。
でも正直こういうのは嫌いじゃない。
「これ以上言うと負けた時に恥かきますよ。……ぐだぐだ言ってないで早く始めましょう」
そう言い指先をくいくいと曲げ挑発する私を見て。
「なぁ大和のやつ雰囲気ちょっと変わったかぁ?」
「運転するとき性格変わる人がいるけどそのたぐいかな?」
審判と外野がうるさい。
それにその例え方は抵抗がある。本来の私が解放されたといってほしい。
「よし、それじゃあやろうか。…………ピィー!」
高宮くんの笛とともにシンジくんが私にボールをパスする。
ボールを受け取り小走り程度の速さでドリブル。
シンジくんとちょうどいい距離に近づいたところで…………抜いた。
ダブルタッチ。
片方の足でボールを内側にずらし、もう片方の足で前に運ぶ技だ。
「……あ」
気づいた時にはもう遅い。私はシンジくんを置き去りにしゴールの目の前まで来ていた。
「くそ!」
慌てて追いかけるがもう間に合う距離ではない。
うーん、これじゃあかわいそうだからちょっと待っててあげようかな。
私はドリブルを辞めるとシンジくんの方に向き直る。
「なっ!」
「は?」
「これは……」
その場の空気が一変した。
挑発。
身内でやれば盛り上がる行為だが見ず知らずの、しかもサッカーをするのには適していない制服を着た女子が行えば当然場は凍り付く。
「ふざけんな!」
シンジくんは猛ダッシュで突っ込んでくるが私は追いつかれる前にゴールに入れた。
「くそっ、まだまだ!」
攻守交代。今度は私が守りでシンジくんは攻めだ。
長引かせても意味ないのでとっとと終わらせよう。




