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短編集

一欠片のぼくらに祝福を

作者: 壱宮凪


 ぽんっと破裂して、流れ星(ボク)が生まれた。

 他の流れ星や流星群はどうやってかは知らないけれど、とにかくそれがボクの誕生。 

 最初は同じように生まれた兄弟たちと一緒だったんだけれど、すぐにあちこちに飛び散っていった。

 僕らが生まれた瞬間っていうのはそりゃもう大変で、とんでもない熱量が一気に弾けてしまったらしい。

 らしいっていうのは、ボクのその時の記憶が酷く曖昧で、一緒の方角に飛ばされた兄さんたちから聞いた話と、あとはボクを構成する物質の破損や変化でそうなのかなって予想。

 宇宙はとにかく広くて退屈で、ボクのやることといえばボクってなんだろうって自問自答くらいしかすることがない。

 

 まあとにかく、壮大にして神秘的な超新星だったはずだ。この銀河のどこかで――アンドロメダかマゼランか、はたまたかもっと別の場所なのかわからないけど、とにかくどこかの銀河にいるナニモノかがボクと兄弟の誕生をきっと見ていたことだろう。


 記録が残っていたらいいのに――


 基本的にずっと一直線に飛んでいくだけのボクだけど、時々は楽しいこともある。どこかの星を通ったときなんて、衛星軌道ギリギリで衝突するんじゃないかってワクワクした。惑星脱出の船も出たほどかなり危なかった。あれはスリル満点でボクもヒヤッとしたよ。


 危険をもたらしたこともあれば、喜びを与えたこともある。

 これまたどこかの惑星にボクが通ったとき、ボクの接近がとっても珍しくって、大歓迎で迎えてくれた。

 ようこそ流れ星! 歓迎! って大合唱を浴びながら通過した惑星には叶うならもう一度行きたい。

 一直線に飛んでるから、無理なんだけど。


まあ、そんな風にして、時々色々あっては退屈をしのいできたボクだけれども、そろそろその旅も終わりに近づいてきた。

 とある大きな惑星の周回軌道に入ったみたいで、さっきからぐんぐんぐんぐん、重力を感じてる。


 この引っ張られる感じ、最高にエキサイティング。


 ボクをとらえたこの惑星の名前はよく知らないけれど、見ているだけでとっても楽しい。一周するたびにたくさんの表情をみせる。

 時折、惑星のなかにいるみんながボクを呼ぶ声まで聞こえる。

 青くて、密度の濃い物質に包まれた不思議な、どこか懐かしい惑星。

 どれだけの時間、キミの周りをぐるぐるしていられるかわからないけれど、大気圏に入って一筋の閃光となるその日を待ち遠しく思うよ。


 ボクは流れ星、かつて地球と呼ばれた惑星の欠片さ。

 仲良くしておくれ。





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― 新着の感想 ―
[一言] 他の惑星から脱出と思ったら、なるほどそういうことなのですね。遠い遠いいつかのお話。 ほんのりと切なく、流れ星が旅をしていた時間を感じさせる物語でした。 「悪魔と目玉」もとても素晴らしかっ…
[一言] はじめまして 最後の結末がなんだか切なくて、そうくるかぁ、と思いました。 主人公の話し方がとても好きです。 壱宮さまの作品は今作が初めてでしたが、とても面白かったので、別作品も読んでみたいと…
[一言] 最後の2行にあっと言わされました。 タグのスペースオペラの意味がわかった気がします。
2021/12/16 16:50 退会済み
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