1章4話
あの日から1カ月が経ち、俺は今でも約束通り勉強を教え続けている。
「あーなんか面白いことねえかな。」入学当初から毎日が同じ日の連続、一つ変わったことと言えば1カ月前のあの日、先輩に教えを乞われたことだろう。初めは緊張したが今ではすっかり慣れてしまっている。
そんなことを考えながら校内を歩いていると、とあるポスターが目に入った。
「吹奏楽部定期演奏会?」入学当初から定期演奏会なるものはあった気がするが今までスルーしてきた。そんな中、今回だけはほんの気まぐれで、「まあ、暇だし一回行ってみるか。」と足を運んだのであった。
「来てみたはいいものの、結構本格的だな。」初めはプロのオーケストラでもあるまいし大した規模じゃないだろうと思っていたが、違った。
「あっ」そうだったこの学校は吹奏楽に力を入れているのをすっかり忘れていた。
引き返そう思ったときだった。
「聴きに来てくださったんですね。そんなところで立ってないでこちらへどうぞ。」
しまった。案内されてしまった。もう引き返せない。まあ仕方がない。諦めるか。
と案内されるがまま中に入り、椅子に座った。
それから10分ほど経つと吹奏楽部の代表らしき女性が現れ、お決まりの挨拶から始まり、その後、演奏曲を発表していった。
音楽について俺は詳しくないから何の曲か全く分からないが周りの反応を見るにそこそこ有名な曲なのだろう。
そうしていると最初の曲の演奏が始まった。
曲を聴いているともの凄い迫力と一体感を感じる。先ほども言ったように俺は音楽について詳しくない。それでもこれだけの凄さを感じるのだから詳しい人からしたらもっと凄いものだろう。
この学校が吹奏楽に力を入れているだけある。
その中に一人だけ異彩を放ち一際輝く女性がいる。綺麗な黒髪 すらりと伸びた白い手足 凛とした目にそのたたずまい。あの人は誰だろう?曲よりその女性に見入ってしまう。胸の鼓動が早くなる。体が熱い。この感覚はなんだ?
俺が人生で初めて感じるこの感覚
俺は昔から色々な本を読んできた。SFからミステリー恋愛ものなど多岐にわたる。
その恋愛小説に書いてあることが本当だとするのならば、これが「一目惚れ」というものなのだろう。
一目惚れとは不思議なものだ。その名の通り一目見ただけで、会ったこともない相手に惚れてしまうのだから。
名前も知らないその女性に見入っていると、気づかぬまま、全ての演奏は終わっていた。
そうしていると突然声を掛けられた。
「すみません。さっきからずっと私のこと見てますけど何か用ですか?」と少し強い口調で彼女はそういった。」
「あっえっと..」
突然一目惚れをした女性に声を掛けられたんだ、そりゃあ言葉も詰まる。
どう返せばいいだろう。理由もなく見てたとかだと不審な人だと思われてキモがられるかもだし...
この際正直に言ってしまおうか、「あなたに一目惚れしました」って。昭和じゃないんだ、少し恥ずかしいが、俺の人生の一世一代の大勝負玉砕覚悟で言ってみよう。
「あなたに一目惚れしました。」
よし言ってやったぞ!どう返ってくる!
「は?」
あーそりゃあそうなりますよね。普通いきなりそんなこと言われたらそうなりますよね。
分かります。分かりました。はい。
「すいません。」
「いや、いきなりだったから、ただ驚いただけ。別に嫌だったからとかではないの。むしろ私のことを好いてくれる人がいるなんて嬉しい。ありがとう。でもいまは気持ちだけ受け取っておくわ。」
「そういえば名前を聞いていなかったわよね。私の名前は1年生の桜井 凛。あなたの名前は?」
「俺の名前は葛城 壮亮です。同じ1年です。」
「1年生どうし、これからよろしくね。葛城君。」
「こちらこそよろしく。桜井さん。」
「これからも定期的に演奏会あるからよかったら来て。今度は私だけじゃなくしっかり演奏も聴くように。」
「分かった。また聴きに来るよ。今日はありがとう。」
「いいえ。こちらこそ。お話しできて楽しかったわ。」
「それじゃあ。」
「さよなら」
今日は初めての感覚を経験できたし話せたし、なんやかんや良い一日だった。
いつも見に来てくれる方、初めて見に来てくれた方たち本当にありがとうございます。
ブックマークやコメントなどはなくてもPV数が少し増えてるだけでも見てくれてるって実感が湧いてとても嬉しいですし励みになります!
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初心者ですけどこれからも頑張っていきます。
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