1章3話
送られてきた住所を見ながら来たはいいものの
「なんだこのデカさは...こんな家漫画でしか見たことないぞ。」まずはその大きさに驚愕した。が
大きさだけじゃない。広い庭、さらに黒い服を着たSPらしき人までいる。
「とりあえずインターホンを押してみるか。」とインターホンを押すと、SPらしき人が門を開けてくれ中に通してくれた。
「お嬢様から話は聞いています。どうぞ。」
門を通り中に入ると広い庭には池があり色鮮やかな鯉たちが泳いでいる。松の木?らしき木もきれいに剪定されている。
「すごいですね。家もですけどこの木とか池とか。」
「旦那様のご趣味です。」そう一言だけ返ってきた。
綺麗に手入れされた庭を眺めながら着いていくと、家 というより屋敷と表現した方がいいだろう。その扉が開かれた。
「葛城くん!今日は来てくれてありがとう。さあさあどうぞ中に入って。」
制服姿しか見たことがなかったから私服姿は新鮮だ。それに先輩の服のチョイスにセンスのよさが垣間見える。
「お邪魔します。」
先輩に促され入ってみると家の中も見事だ。大理石の床や上には豪華なシャンデリアがあり、ところどころに絵画が飾ってある。
「庭にも驚きましたが家の中もすごいですね。」センスのない俺にはすごいとしか表現できないのが申し訳ないくらいだ。
「そう?ありがとう。これはお父さんがデザイナーさんに頼んでデザインしてもらったんだ。」
そんな他愛のない会話を交わしながら長い階段を上り、部屋の前にたどり着いた。
「ここが私の部屋。先に中に入っといて。お茶とお菓子持ってくるから。」と言うと先輩は行ってしまった。
「ここが女の子の部屋か...」
生涯で一度も女の子の部屋になど入ったことのない俺には少々刺激が強い。甘い良い匂いにピンクで統一された家具、それに窓からは庭を一望できる。
勉強の用意をしながら部屋のあちこちに目をやっていると先輩が帰ってきた。
「お待たせ。今日はよろしくね。」と先輩は紅茶を俺の前に置く。香りで分かるこの紅茶も高いものだろう。
「じゃあ始めましょうか。まずこの教科書のここからやっていきましょう。」
家から引っ張り出してきた使い古された教科書のページをめくり指をさす。
「よし、頑張ろう!!」
「今日はありがとうね。いろいろ教えてもらって助かったよ。」
空は綺麗なオレンジに染まり時刻は18時頃を過ぎている。
「先輩も今日のこと忘れないように復習ちゃんとしてくださいよ。」
今日は疲れた。人に勉強を教えるのなんか初めての経験だ。帰ったらご飯食べて風呂入ってすぐ寝よう。
「分かった。今日は本当にありがとう。気を付けて帰ってね。」
先輩もかなり疲れたのだろう眠そうにしている。
「それじゃあ。さよなら。」
そう言い俺は帰路についた。