1章2話
「あっ!来てくれた!思ったより早かったね。」
当たり前だ。女の人をしかも先輩を長い間待たせるなんて、そんな失礼なことするはずがない。それくらい、彼女いない歴=人生の俺でもわかる。
「授業終わってからすぐに荷物まとめて来ましたから。それで、用件は何ですか?はっきり言って、先輩と接点ないですから、予想もつかないです。」
嫌な予感が当たらなければいいが...
「うん...頼みごとがあるんだけど...]
少し横を向き、恥ずかしがりながら先輩はそう言う。
「頼み事?」
「そう、頼み事。私こう見えて勉強全くできないんだ...中学生の頃、少し事情があって不登校でね。」
その事情というのが少し気になるが、そこは触れないでおこう。
「だから、中学生で学ぶものを1から教えてほしいの。同級生には恥ずかしくて言えないし。葛城君、中学の頃、模試で県1位を取ったことがあるって聞いたから。」
「葛城君なら真面目そうだし誰にもこのこと言わないと思うし...」
たしかに俺は中学生の頃、模試で県1位を取ったことがある。だが、面倒くさいことはごめんだ。教えるのも面倒くさいし、何より、俺が先輩に勉強を教えていることを知られたら、男子共からどんな目で見られるかたまったもんじゃない。俺の高校生活が滅茶苦茶になる。
「すみませんがお断りさせていただきます。俺先輩に教えるほど賢くないですし模試だって1回だけです。もっと他に適任がいるかと。」
「お願い。葛城君しかいないの。理由はわからないけどなぜか信用できるの。」
「なぜです?俺たちは初対面ですよ。そもそも教える義理もありませんし、信用できるって意味わからないですよ。」
「気持ちはわかるけど、これは私の勘。あとタダで教えてっていうわけじゃないお金だって払う。だからお願い。」
真剣な顔で先輩はそう言う。
「・・・・・」
こんな顔で言われたらこっちも断るのは気が引けてくる。
「分かりました。教えます。だけど条件があります。」
「1つ 校内で俺に話しかけないこと。2つ 教えるのは週に1回。この条件がのめるのであれば勉強を教えます。」
当たり前だが、条件をのめないであればこの話はなかったことになる。
「分かった。2つの条件絶対に守る。」
さっきと同じ真剣な顔で先輩はそう言った。
「それなら、時間と場所を決めておきましょう。先輩は何曜日がいいですか?」
俺はいつでも暇なので問題はないのだが。遊ぶ友達なんて数えるくらいしかいない。しかも俺と同じオタクだ。なのでどこか出かけるなんてそうそうない。
「うーん・・・日曜日かな予定ないし、月曜日教わったことを学校ですぐ活かせるし。」
「分かりました。俺も暇なので日曜日にしましょう。何時にどこにします?」
「10時に私の家でどうかな?」
「わかりました。そうしましょう。」
実は激しく動揺しているが、表情にださずにそう言った。
(女子の家なんて行ったこと人生で一度もないぞ...てっきり図書館でとかいわれると思ったのにまさか先輩の家とは・・・)
この日はそれ以上話もなく、連絡先だけ交換して帰った。