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形だけ大人になった僕たち  作者: 木痣間 片男(きあざま かたお)
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購買意識の変化から: 最終的に欲しいものとは?

 僕らのような一般庶民にとって大切な決定のひとつは、「何を買うか?」ということである。

 20~40代の女子たちとの会話で、「欲しいものは何か?」という話題になった。福島県の田舎であることが影響しているのだろう、もっとも多かったのは“車”だった。

 主婦もいたので、“大きなテレビ“や”ドラム式の洗濯機“といった実用品の買い換えという希望もあった。さらには、結婚式に着ていくための新しい洋服だとか、セグウェイだとか、ウォーキングマシンだとか、まあいろいろだった。


 自分においても、年齢を重ねることによって生じてきた購買意識の変化がある。

 それは、どんな商品を買うかということもそうだが、何を基準にどういう方法で買うかにおいても、時代とともに変化していった。


 20代のころは背伸びをしたかったので、車をはじめ、ブランド品のようなものを求める傾向が強かった。店頭で実物を見て、失敗がないよう、よく吟味して買った。そこには品質と値段との査定というか、かけ引きのようなものが強く存在していた。

「イギリスの工房で、専門の手作り職人が1年をかけて丹精込めて作りました」なんていうウリによって靴やカバンを買い、「一点モノ」や「限定品」なんていうレアさによって服や時計を買った。


 品質や値段が均一化していくとともに、店員とのコミュニケーションによって買う買わないを判断するようになった。

 セレクトショップ(ATELIER SAB)において、ぜんぜん売る気のない、けだるい女性店員がいた。容姿といいセンスといい、けっして悪くない。むしろかなり高水準だった。でも、洋服の話はほとんどしない。知識もない。つまり、たいしてファッションには興味がないのだ。

 なんでこんな仕事に就いたのかわからないけれど――きっと、お金のためか、楽な仕事と思っているのだろう――、彼女のくだらないジョークを交えた街の餃子屋の話だとか、阿字ヶ浦での海水浴の話の方がよほど面白かった。

 普通だったら、こういう店員からモノを買おうと思わないだろうが、「最近入荷してきた服の中で、ワタシが買いだと思うのは、というか、彼にプレゼントするんだったら断然コレ」というたった一言で、僕は買ってしまった――この時代の買い方がもっとも楽しかったと思っている。


 やがて時代は、安くて高品質のモノをどんどん量産できるようになった。通販サイトの普及と、このご時世によって、実店舗に行って買うという頻度が激減した。ついには、服や靴といったサイズを要する商品までもネットで買うようになってしまった。

 そこでは“口コミ”や“レヴュー”が大きな購買動機となった。ファストファッションに代表されるように、自身で現物を見ずとも他人の評価を基準にモノを買っても、ほぼ失敗はなくなった。

 便利と言えば便利になったが、一方で、店員と話をしながら買うという行為が楽しめなくなったのは事実だし、売る側においても、商品の知識を学ぶ必要性がますます減った。


 ところでこの年齢になってきて、最近自分で買った商品を冷静に考えてみると・・・・・・、『AMAZON』の購入履歴を眺めて気づいたのだが、それはノスタルジックにともなうモノだった。


 その一部を紹介する。

 “わが青春のアルカディア:音楽集”、“伊藤つかさ:ゴールデン☆ベスト”、“オフコース写真:We are”、“黒木瞳写真集:17か月のDesigned Woman”、“西川史子DVD:love affair”、“寺山修司:書を捨てよ、町へ出よう(角川文庫)”、“オールナイトフジ・メモリアル・フォト:みんな大好き”、“TO-Y:Original Image Album”、“野球狂の詩:オリジナルサウンドトラック”、“DEAD END:DEAD LINE”などなど・・・・・・(すべてわかったという人がいたら、親友になれるような気がする)。


 すべて、懐かしさから衝動的にポチってしまったものだ。

 フリマアプリやネットオークションによって、たちどころに欲しいものを見つけることができる。それどころか、オススメを紹介してくることで購入意欲の連鎖が継続する。

 これもまた、時代なのだろう。


 さて、これからなのだが、生活に必要な消耗品以外買いたいモノは、ほぼなくなると思う。

 家を買おうとは思わない。高級ブランド品には、もはや関心はない。これ以上趣味の幅を広げるつもりはない。女に貢ぐようなことも、おそらくはないだろう。文化・芸術といったジャンルを少しは楽しもうと思うが、それほど高価なものではない。安心して旅行に行ける時代が、はたして来るのか。かと言って、寄附できるほどの余裕はない。

 経産省には申し訳ないが、“購買指数”を下げてしまう人間の一員になるだろう。


 冒頭で述べた女子の欲しいものの上位は、実のところ、“プライベートなゆったりした時間”、“週休2日”、“イライラしない心”、“優しい気持ち”といったメンタリティに関する要求だった。

 物欲の満たされた、成熟したいまの時代を象徴している。現代人の欲しいもの、それは所有欲や贅沢なんていうものではなく、平穏な暮らしなのだ。

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