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形だけ大人になった僕たち  作者: 木痣間 片男(きあざま かたお)
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女医の生態から:かつては同じ目標だったはずなのに

 ミステリアスで近寄りがたいけれど、とても興味のある職種と言えば、間違いなく“女医さん”だろう。しかも“美女医”とくれば、ちょっと足を踏まれるくらいはなんてことない。


 僕の出会った女医の話しをしようと思うのだが、女医のすべてがそうであるわけでけっしてはなく、また、男性医師にも同様なことが言えるので、彼女らに限った話しではないということも付け加えておく――男女共同参画の時代ですから。

 女医というと、西川史子先生のイメージがあるかもしれないが、テレビ用に作ったキャラかもしれない。が、しかし、あれもひとつのロールモデルだ。


 そこでまず思うのは、女医の人生ほど波瀾万丈というか、周囲の環境に左右される職種はない。そういう意味では、幸せになる人もいれば、こう言っては語弊があるかもしれないが、あまり幸せとは言えない人生を歩む人もいる。

 ただ、もともと優秀で経済的余裕があるだけに――そして、美女医であればあるほど――他の職種よりはフレキシビリティーが高いということは言える。生き方を選べるというか・・・・・・。しかし、それもまた逆に作用することがあって、選択できる幅が広いだけにさらに悩みが深まるという側面もある。要は、いろいろな因子によって翻弄されやすいということだ――そういうのも、西川先生を見ればわかるだろう。


 あえてカテゴライズすると、「仕事に邁進するウルトラハイパー女医」と、「三役をこなすドリームライフ女医」と、「自由な暮らしを謳歌するナチュラルフリー女医」とが存在する。


 伴侶に恵まれなかった場合には、患者のために臨床と研究とに打ち込むことを人生の命題とすることができる――ツレやコドモがいないということは、僕もそうだからあまり強調したくないが――。男性医師と同等なレベルで、医者としての責務を果たすことも可能である。

 以前の大学病院には、脳神経外科と心臓外科と婦人科と眼科に准教授クラスの女医がいた。いずれも尊敬できる立派な人だったが、すべて未婚かバツイチだ。

 そういう女医たちによっても大病院は支えられているということで、さらに言うと、医大生の1/3が女子学生になったことで、女医でありさえすれば難なく男性医師をゲットできるという時代ではなくなったということだ。


 一方、たまたま理解ある伴侶と勤務する病院体制とに恵まれ、妊娠・出産・育児と診療業務との両立を可能にした“勝ち組女医”もいる。社会人・母・妻の三役をこなす女医だ。

 夫も医師(もしくは御曹司)で、稼ぎとキャリアは順調そのもの。自分は産休・育休を取りながら、“非常勤女医ママ”になっても生活水準を落とさず高級マンションに住み、毎年そろってグアムへ家族旅行。夫のハーバード留学のタイミングで子を増やし、海外暮らしを満喫しながら子供にはバイリンガルへの道筋を作る。最終的には、自分も学位と専門資格を取得する。いずれは夫婦で開業、もしくは自分だけ開業して夫は教授への出世街道を突き進む。子供を医学部に進学させ、後継にも問題なし・・・・・・。

 自分との大きなギャップに、書いていて嫌になってきた。


「結婚はしてないけれど、研究留学のために来日しているドイツ人の彼氏がいます。フリーランス麻酔科医として働く合間に、趣味の自転車をやりながら執筆活動やテレビドラマの制作協力などを行っています。あと片手間でモ・デ・ル!」なんていう女医も、まあまあ増えてきた。

 医者として勤め上げなければという自責の念などどこ吹く風、仕事のペースダウンを余儀なくされた焦りもなく、キャリアアップに対する不安もなく、自分の時間を謳歌している女医である。

 大学での研修を終えた時点で例数の稼げる市中病院の麻酔科に入局。2年の後に標榜医資格を取得すると、あっさりとそこも退職。あとは民間医局に属し、スポット的に仕事をこなしている。サイクリングを楽しんでいるようで、「伊能忠敬プロジェクト」と称して全国の港エリアを走り回っている。

 彼女曰く、「自分で働く時間を調節できるのがメリットです。ある程度のキャリアを積み、経済的な余裕を手に入れたあとは、趣味や自分の時間を増やしつつ好きな場所に移住してのんびり働きたいってことです」とのこと。


 基本的な目標は,パーソナルライフの充実した仕事のできるスマートな女医になるはずだったのに・・・・・・、三者三様かもしれないが、めぐり合った環境や立場によって、その終末像が大きく異なっていったようにも思える。


 最後に、無自覚なままハマっていった「こんな女医にはなりたくない」という「リアルロスジェネ女医」について触れる。

 これも1例だけれど、地方の“ロスジェネ勤務医(90年代後半から2000年の初めころに卒業)”として下っ端の雑務をこなしつつ、中堅として、ハイリスク診療にも従事しなければならない。「うちは医師不足だから」という理由で、いつまでも定年を引き延ばされている使いものにならない高齢医師の代診も担わざるを得ない。新人時代は、『白い巨塔』のような無給のうえに下働きを強要されたものの、中堅になったころに“若手や女性を大切にしよう”という手のひら返しの憂き目にあった、もっともワリを食った世代の女医である。

 なまじ責任感があるから、後輩や同僚の手前逃げることもできない。結果、婚期も遅れ、いつまでも終わりの見えない過重労働に喘いでいる。

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