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形だけ大人になった僕たち  作者: 木痣間 片男(きあざま かたお)
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趣味から:人生の大半は暇つぶし

 患者にしばしば伝える一言がある。「“趣味”をもったらどうですか?」ということである。

 読書でも将棋でも、日曜大工でも家庭菜園でも、散歩でもラジオ体操でもなんでもいいいのだけれど、それは、認知力を下げないとか、指先を使うことによるリハビリとかもあるが、病のことばかり考えているよりは、何か熱中できるものをもっていた方が気が休まるのではないかという提案である。


 が、しかし、言うのは簡単だが、趣味を見つけることはそう容易いことでない。患者からも、「たいしてやりたいことないんだよねぇ」と返されることも多い。


 趣味といっても、それはさまざまだ。

 何千万をかけて骨董品を求める収集家や、庭に線路を敷いてしまう鉄道マニアや、ジオラマ室のある模型オタクや、セミプロ級の腕前をもつ音楽好きなどがいる。そこまででないにしても、毎年フルマラソンに出場するとか、執筆連載を抱えているとか、○○アマチュア大会で入賞するとか・・・、そのくらいのことをこなしている人は、堂々と趣味を語る資格がありそうである。


 僕自身においては、他人から「趣味は何ですか?」と尋ねられた場合の返答として、こうした駄文を書くことや、しいてあげるなら、“ジョギング”とか、“乗馬”、“山登り”、“読書”、“ボランティア活動”、“木工”、“音楽鑑賞”、“漫画やアニメ”というものがある。

 なんかたくさんあるように思えるかもしれないが、ちょっと冷静に考えてみると、趣味というのとは少し違う。

 それはつまり、僕にとってエッセイ執筆は“平穏維持”であり、ジョギングは“ノルマ”であり、乗馬は“癒し”である。山登りは“心の洗濯”であり、読書は“インプット”であり、ボランティア活動や木工は“自己満足”であり、音楽は“娯楽”であり、漫画やアニメは“密かなオタク行為”である。


 そんなことを言うと、「メリットがあるからやっているわけで、基本的に楽しいからやっているということでいいではないか」と慰めてくれる人がいるだろうけれど、でも、もし、「楽しいことでいい」というなら、“美女と飲みながらの会話”や、“毎日好きなモノを食べる”や、“ギャンブルに興じていたい”が可能なら、これらを趣味にしたいと思うのだが、こういうことも趣味として認めてくれるだろうか。

 そう考えると、一定のスキルアップや、乗り越えるための努力や、道徳的に正しいや、人の役に立つなどの効用がなければ、趣味として認定されないような気がする。


 ゴルフを趣味にして毎週のようにクラブを握っていた友人が、ある日を境にゴルフを止めた。理由を尋ねてみると、「スコアが伸びないので、かえってストレスになってきた」ということだった。

 言われれば当たり前なのだが、技術を磨いていく趣味には限界を感じることがある。それはスポーツに限ったことではなく、絵画や写真などの芸術なんかでも頭打ちという状態はやってくる。それどころか、映画や音楽を1本あるいは1曲を、観たり聴いたりすることすらできなくなってくる――まあ、根気が続かなくなってきたということなのかもしれない。


「仕事に従事し、子を育てた後は、人間としての役割を終える。納税さえしていれば、あとは長い長い道楽だ」と言っていた先輩がいた。経済的な余裕があって、幸せな家庭を築けたから言えることであって、「独り身の自分としては、それどころではない」と思ったが、でもよく考えてみると、いま僕がやっていることはタシナミ程度、まさにその道楽に他ならない。


 “趣味”と言うからには、「少しずつスキルを高めたい」とか、「一定の成果を上げたい」とかを考えていたが、はじめから道楽と考えれば取っ掛かりは楽なのかもしれない。

 というより、人生の大半は暇つぶしというのなら、少しでも濃密で充実した暇つぶしになるよう、いまから準備しておくに越したことはない。

 趣味をもたない患者には、そう伝えてみたい。

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