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形だけ大人になった僕たち  作者: 木痣間 片男(きあざま かたお)
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同級生の女友達との交流から:医学部への進路変更

 僕が大学に通っていた頃の医学部は、定員の4分の1程度が女子だった。つまり、一学年100人だったので、25人くらいが女医を目指す女子学生だったのだ。しっかりしている娘が多く、かつ個性的だった。

 学生同士で付き合っている友人もいたが、同窓生で、同業者になる相手との恋愛はいかがなものかと思う人にとっての狙い目は、女子医学生の女友達だ。“類は友を呼ぶ”ではないが、その娘たちも面白い。


 医学部時代は、出席番号順にグループやペアを組まされることが多かった。僕のすぐ後が女子だったので、必然的に仲良くなった。気さくで明るく賢かった。それはそれで楽しかったのだが、ある日の実習中に、こんな言葉をかけられた。

「木痣間くんさぁ、ワタシの女子校時代の親友がさぁ、いるんだけど・・・・・・、その娘、お茶大なんだよね」

 最初は何を言い出すのかわからなかったが、『お茶の水女子大』と言えば有名だ。才女の集う女子大と言ってもいい。

「大学からはお互い別々になったんだけど、いまでもたまに会って遊んでいるの。新幹線で通っているから地元にいるのよ」

 ほう、栃木から東京まで通っているとは大変だ。

「夏休みとか時間があるって言うから、今度、その娘と一緒に遊ばない?」

 なにっ、“棚からぼた餅”、“カモがネギをしょってやってくる”、なんと形容してもいい、この願ったり叶ったりのリクエストに、一も二もなくOKした。


 が、しかし待てよ、とりあえず確認したくなった。

「その娘、どんな娘・・・・・・、かわいい?」

「そうね、ワタシの友人だから性格はメチャクチャ好いよ。明るくて楽しい娘だよ。顔はねぇ、可愛いというより美人だね」

 テンションは一瞬にして上昇気流に乗った。


 とりあえず、男3人くらいをあっと言う間にかき集めた。女子は2人だが、そこはそういうことで了解済みだ。

 当時の学生の遊びと言えば、ドライブして、遊技場で時間を調整して、飲むというのが定番だが、「どこでどうした」なんて話しはどうだっていい。要は、その娘がどういう娘で、どういうものに興味があって、誰を好んで、恋への進展があるのかないのかという、この一点だ。


 結論を言う。容姿は若い頃の賀来千香子、髪型はワンレンショート、体つきはほどよい筋肉質、性格はサバサバすっきり系、メチャクチャ優秀で、趣味はスポーツ観戦、特技は超能力、好きなタイプは石ちゃん、親は実業家、そんな感じだった。つまり、いまでいうところの“ハイスペック女子”だった。

 まずは、「超能力??」、何ができるのかと思いきや、スプーン曲げができるとのことだった。霊感も強い。

 石ちゃんのような楽しくて頼りがいのある人が好みだったが、現実的には玉置浩二も好きとのこと(このギャップはいかがなものか)。

「このオンナを落とす」、われわれの間に瞬時に芽生えた共通認識だった。


 関係を一回きりで終わらせるわけにはいかない。僕らは、スキーに行ったり、映画を観たり、飲みに誘ったりと、たまに会って遊ぶようになった。

 ただ、どう考えてもライバルが多かった。僕の声がけした2人の悪友はもちろん、そいつらからも尾ヒレが付いて、友好関係は広がった。僕の知らない間に、その娘を誘っていることもあった。まあ、それはそれで仕方がない。弱肉強食の恋愛の世界である。


 けっこう濃密な時間を過ごしてきた。たまには医者になることへの覚悟を偉そうに説く機会もあった。そのためか、僕に対する彼女のアタリは、けっして悪くなかった。


 そんなこんなで、われわれはあと2年を残すが、4年制大学に通う彼女は卒業を間近に控えた。結局、彼女は特定の彼氏を作ることはなかったようだ。

 ここらではっきりさせた方がいいのか、僕は悩んだ末に彼女を呼び出した。

 卒後はどうするのだ、どんな就職口を希望しているのか、東京で暮らすのか、僕らと、もう少し長く一緒にいられることはできるのか? つまりは、「僕と付き合える可能性はあるのか、ないのか」ということを遠回しに尋ねたかったのだ。


 彼女から、信じられない言葉が告げられた。


「実は、大学は去年退学したの。いまは、言ってみれば浪人生ね、引きこもり。来年の春までに医学部を受け直す予定なの」

 なんと彼女は、僕らとの交流を重ねるうちに医者になりたいと考えるようになったのだ。

「えっ、医学部を・・・、本当に・・・、受かりそうなの?」と尋ねたところ、いともあっさり、「ワタシ、受験生を相手に家庭教師のバイトをしていたから、たぶん大丈夫、教科を絞れば自信あるわ」

 どこまで優秀なオンナなんだ。そんな大きな目標を掲げた娘に、漫然と日々を過ごしているような僕ごときが何を打ち明けられるというのだ。


「ところで木痣間君、話しって何?」

「いや、あの、その・・・・・・、最近のキミを見ていると、なにか思い詰めたところがあって・・・、卒業も近いし、将来どうするのかなぁって思ってね。でも、そうなんだ、友だちも医者になろうと思ってがんばっているし、医学部を考えるようになったのは、ある意味自然だよね・・・・・・」

 せめて、そんな理解を示すしかなかった。相談のひとつもなかったことが、僕との関係を雄弁に物語っていた。


 彼女は、群馬大学の医学部に見事に合格した。学士編入という手段を使ったのかどうかは記憶にないが、いずれにせよ並々ならぬ努力と覚悟のうえでの行動だろう。

 そんなスーパー女医さんが増えていくであろうこれからの医学界を、僕は、頼もしくもあり、寂しくもあり、見つめている。

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