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形だけ大人になった僕たち  作者: 木痣間 片男(きあざま かたお)
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SNS交流から:画像なんてない方が夢を抱けるのではないか

 “一期一会”の究極のようなことが、いまの時代では起こるという話しをする。

 

 それは、SNSによる友だちリクエストだ。見ず知らずの人から申請が来ることは珍しくない。

 なかには怪しいリクエストもあるから、そういうものはいっさい受け付けないという人もいるだろうし、知人の知人くらいの間柄がはっきりするなら承認する場合もある。アカウントの乗っ取りということがあるから、そのあたりは皆さん慎重だと思う。


 自己紹介に加えて、出身大学や職場まで明示してリクエストをくれた人がいた。東京在住、30代半ばの独身女性だった。

 僕はSNSをすべて公開しているから、たまたまたどり着いたのかもしれない。被災地で支援活動をしていると、ボランティアに関心のある人から申請がくることがこれまでも何回かあったし、丁寧なアピールがあれば、受けることはやぶさかでない。問題なく承認した。


 職場仲間と撮影したスナップや、作った手料理のアップ写真が添付されてきた。それらはすべて和やかな雰囲気で、美味しそうな画像だった。その女性は、料理教室の講師だったのだ。

 写真の彼女はとても可愛らしくあったが、線が細く内気なタイプのように見えた。

 その人自身のアカウントにアクセスすることも可能だったので、彼女の投稿した配信記事をのぞき見ることもできた。普段の生活や、仕事の様子などを、より詳しくうかがい知ることができて、それはまあ、楽しい作業だった。


 真面目で好い人そうだなと。


 1週間に1~2回くらいの間隔でメッセージが送られてきた。季節の挨拶だったり、プライベートな出来事だったり、仕事の話題だったりと、それらは昔で言うところの文通みたいなものだった。


 1ヶ月くらい経った頃だろうか、「折り入って相談があります」という内容のメッセージが届いた。

「僕にわかることであれば、何なりとどうぞ」と返信したところ、「どなたか先生のお知り合いで、いまお付き合いされていない男性医師はいらっしゃらないでしょうか? 失礼に値するお話を差し上げて申し訳ありません・・・・・・」。


 んっ、どういうことだろう!?

「単刀直入に言えば、東京近郊にお住まいの独身医師を紹介して欲しいということですか?」という趣旨の文章を、再度返した。


 目的はそういうことだった。


 勘違いをして欲しくないけれど、そう言われたことに対して失礼とは思わない。出会い系サイトみたいなものがある時代だから、さして驚きはしない。時代なのだなという気持ちはあるし、たまたまそういう目的の人に出会っただけだ。

 疑問はふたつ。面識のない僕のような男を信じて、どうして紹介をしてもらおうと思ったのか? 危険とは感じなかったのだろうか。あともうひとつは、そういうことなら、まあ、僕ではダメなのだろうかということだ。


 大学時代、ロックバンドを組んでいたという話しを以前にした。

 音楽をはじめるきっかけなんて、みんな大体同じで、要は格好よく見られたい。突き詰めればモテたいということだ。そのためには、自分の好きなジャンルの音楽を好む異性を求めたくなる。

 ネットがそこまで発達している時代ではなかった当時、僕の取った行動は、音楽雑誌の後ろの方に載っている読者欄のところから、それ系の音楽が好きで文通を求めている女子に手紙を出すことだった。


 もちろん、返事はすぐに来た。好きなミュージシャンが共通しているわけだから、そういう話題に関しては話しが噛み合う。音楽の好みやバンド活動のエピソードなんかを交えて数回の文通を繰り返した。


 そうなってくると、「写真の交換でもしよう」ということになる。当然そうなる。自然な流れだ。

 僕は、手元にあった演奏中の写真を、2、3枚送った。それは照明が当たっていたり、髪を立てていたりしたものだから、僕なりにイケてなくはないと思える写真だった。

 女子から送られてきた写真に関しては、あまりよく覚えていないのだけれど、実年齢より幼いような印象を受けた。さらに言うと、こともあろうか、その子よりも同じ写真に写っていた友だちの方に興味を抱いた。

 あまり明かしたくはないが、いずれにせよ、写真交換を機会に手紙は減り、自然に文通も終了した。


 こんなことを言うとちょっと年寄りじみてしまうけれど、いまはネットを通じて簡単に画像を送ることができる。それはそれで、情報の伝達をすばやく行うことができて、いいこともある。

 “一期一会”の究極と言ったけれど、結局やっていることは数十年前と同じだ。信用などなくともSNS交流はできる。

 さらに言うなら、いきなり写真を見ることのできてしまう現代の方が、もしかしたらよほど残酷なのかもしれない。医師仲間の友人を紹介してくれとは、つまり・・・・・・、そういうことだったのだ。

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