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形だけ大人になった僕たち  作者: 木痣間 片男(きあざま かたお)
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一夜限りの関係から:「あなた、私と別れなければよかったのにね・・・・・・」

“一期一会”をテーマに物語を創造していると、常に頭に浮かんでくる妄想として、“一夜だけの関係”というものがある。


 ここで、「そんなものは両手以上あって、物語のひとつや2つ、3つや4つ、簡単に書けるぜ」という豪快なことを語れれば、このエッセイも少しは愉しい内容になるのだが、ナンパというものをしたことがなく、したがって、“女性と一夜限り”という関係を結んだこともない。

 そういう意味での一期一会の経験は、残念ながら、ない。

 途端につまらなくなってしまったけれど、でも冷静に考えれば、そういうケースってだいぶレアだと思う。


 ただ、2、3回会って、そういう関係に進んだものの、すぐに別れてしまったという経験は、実は、ある。


 長い前置きだったが、自分はけっしてモテる方ではなかったけれど、強く女性を意識していた時期はある。まあ、若ければ誰にでもそんな期間はある。

 だから、たとえば職場の飲み会の帰りに、どちらかの家かホテルかに転がり込み、飲み直したり、好きなものの話しを聞いたりしていれば、お互いそういう気持ちになることだって、おそらくある。

 ましてや好意があればなおさらだ。

 別にそのこと自体に何ら問題はない。ややこしくなるのは、たいして好きでもないのにズルズルと関係を続けているとか、最初は付き合うつもりはあったけれど、すぐに熱が冷めたとか、そういう場合だ。


 さらに長い前置きになったが、僕はけっして起用な性格ではないけれど、その二つの中間に位置するような状況に陥ったことがある。

 好意はある、だけど、付き合うにはいろいろな意味で熟慮を要するという段階のうちに行為におよんでしまったということだ。そういう経験が、昔、ある。


 男らしくなくなるので、あまり釈明したくないが、「この人、素敵だな」という異性がいたとして、自分も相手にも決まった恋人はいない。だから付き合うも、付き合わないも自由だ。ただ、まだ相手のことを十分理解しているわけではないので、付き合うかどうかの判断はできない。そんななかで、雰囲気に任せて関係を結んでしまった。相手もいいと思ってくれたのだろう。そういう経験を済ませば相手がぐっと近くなるのは当然で、そうして見えてきた本質を冷静に判断した結果、「ちょっと違ったな」という場合である。

 こういのは、けっしてレアではない。


 その“ちょっと違ったな感”の理由はいろいろある。想像していた性格と異なっていたとか、途端に束縛が強くなったとか、借金を抱えていたとか、釣った魚に餌はやらないタイプだったとか、要は、ヤッてみなければずっとわからなかったという部分だ。

 そういうことは、男女問わずある。


 と、ここまで読んできて、「男の身勝手で気分が悪い」と感じたのであれば、甘んじて受けるしかないが、繰り返すようで恐縮だが、けっしてあり得ない話しではないと思う。


 まだまだ前置きが続いているが、僕の場合は、女性がかなり依存体質だったということである。

 なんて言うか、体調の不良を訴えたり、悩みを相談されたり、グチを聞かされたりといったことが、途端に増えた。

「頼られている」と言えば聞こえはいいけれど、そういう問いかけが、深夜過ぎの電話で連続して寄せられたときには、相当の危機を感じた。明らかにパニック気質というか、パーソナリティ機能の偏りがあった。

 繰り返すが、「信頼されている(あかし)なのだから、好きな女性からの相談くらい責任を持て」ということを、まだ声高に訴える人もいるだろう。


 僕もそう思いたかった。が、しかし、限度というのはある。日々の診療に忙殺されている自分としては、翌日の体調に差し障るわけにはいかない。「そういうことを理解してくれてもいいのではないか」ということは、こちらとしても言いたい。

 なんだかんだで少しずつ距離を置くしかなかった。


 世の中にはいろいろな人間がいる。自分にぴったり合う異性がいればそれは理想かもしれないけれど、なかなかそんなうまくはいかない。

 最後にきれい事を言ってしまうことになるが、最終的にお互いをつなぎ止める要素は、相手への“(うやま)い”ということになる。離婚した人間が何を言っても説得力ないが、そういう意味で、僕が心がけていることは、「けっして付き合った女性の悪口を言わない」ということだ。どんな別れ方をしようが、どんな仕打ちを受けようが、だからといって、その経緯を吹聴したりしない。

 それは、どんな女性においても、「曲がりなりにも自分を成長させてくれた」という意識からくるもので、付き合わなければ何もわからなかったことだ。当たり前と言えば当たり前だけれど。


 3、4年ほどしたある日、偶然その彼女に出会った。彼女はマタニティーを着ていた。

「しばらくね・・・・・・。あなた、私と別れなければよかったのにね・・・・・・」と笑っていた。

 僕がシングルなのを知っている。

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