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形だけ大人になった僕たち  作者: 木痣間 片男(きあざま かたお)
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SNS友だちから:親友はいないけれど

 あまり明かしたくないが、僕にはやはりどう考えても“親友”がいない。すなわち、互いに心を許し合っている友がいないということである。

 親友がいないということは、悩みを打ち明けたり、相談できたりする相手がいないのではないかとネガティブに考える人がいるかもしれない。

 確かにそういう一面はあるかもしれないが、親友がいないからといって悩みを打ち明けられないとは限らない。


 たとえば、ここで連載している僕の恥ずかしい過去について、周囲の誰にも言っていないが、誰が読むかわからない不特定多数の人に向けて、ここにこうして文章として打ち明けることができている。そして、感想やコメントによっては、きちんとした相談の(てい)をなし、それによって僕は救いを得ている。

 つまり何が言いたいかというと、相談相手は何も親友である必要はないし、逆に親友だからといって何でも相談できるとも限らない。悩みを打ち明けられる人と、心を許し合っている人というのとでは、その対象人物は違うということである。


 SNSや、こうしたWEB小説のような場所のほうが、もしかしたら気兼ねなく自分の気持ちを吐露(とろ)できるということがある。

 実際僕は、SNSで知り合ったサンフランシスコに住む見知らぬ日本人女性に、なんでもかんでも身の上話をしてしまったことがある。

 

 その人は、以前に夜の仕事をしていた30代の女性である。ストリップダンスなんていうのも経験していると言って(書いて)いた。大企業社長の愛人になったこともあり、自分なりに苦労して生きてきた。たまたま来日していた米国人との間に子供ができてしまって、いまはその男性宅の近くで子育てをしながら真面目に暮らしている(ただし、籍はまだ入れてもらっていないとのことである)。

 なんか、世の中の表も裏もすべて知り尽くしているような人だった。知らないうちに僕は、自分のちっぽけな悩みや、過去の過ちや、悔みきれない失敗のようなものをすべて語ってしまった。


 人は皆、多かれ少なかれ、自分を取り繕いながら他人と接している。

 周りの人に対して激しい怒りや恨みを抱いていること、受けている金銭や社会的地位に不満があること、恵まれている人が妬ましくて仕方ない感情があること、影響力のある身近な人の悪事に巻き込まれていること、将来に絶望していること、変わった性癖、過去の罪悪、トラウマなどは、けっして他人に知られたくない。

 自分のことを知っている相手であればあるほど、自分のことを考えてくれる人であればあるほど・・・・・・、逆に言えない。

 心配を与えてしまう、気を遣われてしまう、負担をかけてしまう、そういった感情が湧き上がってしまい・・・・・・、打ち明けられない。


 僕には職場の同僚や、社会活動をしている関係で比較的仲の良い友達はいる。ただそれは、仕事場やイベントにおける共通意識という部分で意気投合しているが、では深い悩みを打ち明けられるかと問われれば、答えはおそらく「ノー」だ。打ち明けられない。というか、打ち明ける気すら起きない。

 多くの場合、深刻であればあるほど、切実であればあるほど、他人はどうすることもできない。通り一遍の対応しか取ってもらえなければ、打ち明けた方も「訴えても無駄なんだ」ということで、かえって絶望する。


 自分のことをたいして知らない相手なら・・・・・・、気心の知られていない相手なら・・・・・・、気軽に、いやけっこう真剣に言える。

 元ダンサーに、僕は、「なんでも打ち明けられる親友と言えるような人がいないんだよね」と言ったところ、「そんなもんだよ、でも、こうして打ち明けているじゃない」という返答だった。

「人間なんてのは、人と付き合うから悩みが生まれるのよ。友達がいなければ、少なくとも人間関係で悩む必要なんてない。私、日本を離れて、ここで娘と2人だからぜんぜん悩みなんてないよ」ということだった。


 はっきり言って、親友でも、精神科医でも、心理士でも、カウンセラーでも、相手は誰でもいいのだが、悩みを打ち明けられる対人を有している人が、この現代人のなかにどれくらいいるだろうか。

「こんな重いこと、いざとなったら誰にも言えない」、それが現実ではないだろうか。


「日本のお医者さん、あなたはけっこう恵まれている方よ。でも、これからの日本で生き残るための一番大切な考え方は、悩みの打ち明けられない悩みに備えておくことで、そうでなければ、私のように、こう言ってはなんだけれど、下には下がいるということを思って暮らすか、そのどちらかしかありませんよ」と言った言葉が忘れられない。

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