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形だけ大人になった僕たち  作者: 木痣間 片男(きあざま かたお)
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僕にとっての音楽の価値:夢は夢として

 いつの間にか音楽鑑賞が好きになり、自我が芽生えた中学くらいからずっと曲を聴き続けてきた。言い換えるなら、90年代からということになる。

 多くはロックとポップスに分類されるような曲だったが、ジャズやクラシック、フュージョン、クラブミュージックというようなジャンルの曲もよく聴いた。

 当時はバンドブームということもあり、大学時代、ご多分に漏れずロックバンドを組んだ。


 そういうことで、まずは「自分にとって繰り返し聞いてしまう好きな音楽は何か?」ということを考える。

 すなわちそれは、何度聴いても飽きないというか、いつまでも聴いていられる曲ということになるが、洋楽だったらイーグルスの『ホテル・カリフォルニア』や、レッド・ツェッペリンの『天国への階段』、ポリスの『見つめていたい』だ。古い曲で申し訳ないが、これらを僕のなかでの“3大リピート曲”と名付けている。

 邦楽はあまりないけれど、強いてあげるならオフコース(小田和正)とか大瀧詠一、あとはYMOというところだろう。

 さらに言うと、クラシックはたいていどれでも永遠に聴いていられる。もっともたくさん聴いているのは、これまたベタだけれど、チャイコフスキーの『ピアノ協奏曲第1番』である。


 ずっと聴いていられる曲というのは、すなわちそれは、自分にとって耳障りにならないということであって、いい曲かどうかというのはまた別な問題を有している。派手さはないが、かと言って退屈もしない。シンプルだが実によく練られた心地よい曲ということになる。


 さて、この”音楽を聴く”という行為に、これまで僕は何時間という時間(とき)を費やしてきただろうか。聴いている間は何もしないということでは、もちろんないが――仕事をしながら(診療ではなく、実験や論文を書きながら)、趣味や読書しながら、ドライブ中など――、おそらく人生のなかで5年間分くらいは音楽を聴くためだけに時間を費やしてきたと思う(1日10分間を音楽鑑賞にあてたとすると、1年で60時間、30年間で1800時間、すなわち5年間)。

 そういう意味では、読書(マンガを含む)と映画(アニメを含む)とを合わせれば、10年くらいになるか。


 そうした人生の大半の時間を費やしてきた余暇活動に対して、なにか役に立っていることはあるのか・・・? そう考えると・・・、たいしてない。もっと言うと、これだけの時間を費やしてきたにもかかわらず、そういう関係を仕事にしようとはいっさい思わなかった。

 作曲家になるとか、ミュージシャンになるとか、バンドマンになるとかということを考えたことはなかった。


 それどころか、何の脈絡もなく、思いつきのように医者になってしまった。


 何が言いたいかというと、「好きこそものの上手なれ」とは言うものの、少なくとも僕に関しては、酔狂したものにはならなかったということである。

 僕にとって医者になることと、アマチュアでもいいからミュージシャンになることとのどちらが現実的であったかと考えると、かなり微妙である。もしかしたら後者の方にだいぶ()があったのではないかとさえ感じる。


 なんとか医師国家試験に合格し、ある診療科の専門医資格を取得し、それなりの診療にこころがけてはいるが、この業界において一流になったとは言いがたい。一方で、けっしてナメているわけではないが、音楽が好きだったのなら、名もない楽団のシンバル奏者くらいにはなれなかっただろうか。


 将来の職業なんてものは、情熱を傾けていた好きなことよりも、ポッと思い浮かんだような職種を選んでしまうことの方が多いのではないか。そうでないと、挫折したときの落胆が半端ない。夢は夢として、趣味は趣味として、いつまでも愉しみとして適当に嗜んでいる程度の方が、少なくとも僕にとっては無難だったということだ。


 今回の投稿で何かを訴えたかったわけではない。音楽を楽しく語ろうと思って書きはじめた原稿だったが、いつものとおり、結論は暗い内容になってしまった。

 音楽関係に進まなかったからこそ、それはそれで、現実的妥協の負い目のなかで、いまの僕はがんばれるのかもしれない。

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