2 【短編】転生悪役令嬢が婚約者を得る話 前編
テンプレートチャレンジ第二弾。よくわからないまま、なろうで流行りの悪役令嬢ものを書いてみる。
生まれ変わった私はゲームの世界の住人でした。
なんてありきたりすぎて、もしかしてまだ仕事してるとこになにか頭おかしくなったのではと思わざるを得ない…これは夢だ夢、それしか考えられない。
なにせ、私は今いる世界…このゲームを作成したチームのゲームプログラマーだから。
納期目前の追い上げ時だったから、おかしくなってゲームの中に迷い込んじゃった、とかなくもない。
私は夢を見ているんだ、そうだ。
最後の記憶は動作確認と表した販売前のゲームプレイ…ぶっちゃけプログラミングでエラーを探るわけだから実際のゲーム操作は必要ない。
私がやりたいからやるだけだったりする。
時間ないのにプレイするのは私がここのメーカーの作品が好きだから、と、単純にゲームオタクだからだといえば、世のオタクから気持ちだけはわかってもらえるはずだ。
まぁ公私混同ぶりはさておき。
全ルート、隠しまでクリアしてやりきった気持ちを得たとこまでしか記憶にないから、そのあと会社で寝てしまったかな?
だから今この状況は夢の話だ、たぶん。
「悪女め!」
「はぁ…」
ゲーム内ではかろうじて名前を与えられた脇役、ヒロインに仇なす悪役令嬢。
私は今その女性になっている。
確かここは共通ルートの中頃、ヒロインに嫌がらせを続けてきた悪役令嬢が悪女として粛正されるところか、よりによってここかよ。
「社交の場での数々の狼藉許されないぞ」
「仰る通りでございます」
「え?」
「私は二度とこちらには伺いません…王都にももちろん。エーラ・ギ・プレ様にも今後接触致しません…こちらでよろしいでしょうか?」
「ルーナ様…」
「貴方には悪いことしたわ…目が覚めました、ありがとう」
正直、ゲームの中での悪女はここで退場だ。
本編では自分の無実ぶりをアピールしてかなり粘ってくるけど、夢の中ならなんでもありなので争いごとを避けたい私は即終了を選んだ。
与えられるはずの罰を列挙して、ヒロインに謝り終了。
確か語られない設定だが、キャラデザイン担当とシナリオライターが、悪女は反省し身を改めヒロインとも交流が戻るとかどうこう聞いていた。
ゲーム内でそれが語られることがなくても、なかなか優しい世界設定にしてるなぁと思った記憶がある。
なので、そのまま採用だ。
夢の中まで嫌な思いをする必要はない。
断罪なんて現実世界で仕事三昧で楽しみゲームしかない私には味わいたくない経験だ、夢の中であっても。
というわけでとっとと帰る、悪女はそこそこいい家に住んでいるし、家業も安定してる設定だから、引きこもりを満喫してみようか。
どのへんで夢が覚めるか見物だけど。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
「目が覚めない…」
なんてことだろう、目が覚めない。
この世界で2日目を経験することになろうとは…。
まぁいいでしょう、どうせなら納期あけのバカンスだと思ってこの世界を体験しよう。
ともあれパソコンだのスマホだのない世界でローカルな家業である仕事をこなしてみたり、街へでて観光してみたり。
商談楽しかったなー、ビジネスの話し合いは楽しい。
お金がどれだけ得られるかとか胸が躍る以外の項目がない。
しかも動くお金が大きいからやりがいなんてのもでてきてしまう。
まぁ商談でも街へ出向いても周りは私のことを悪女なんだとひそひそ様子見つつも怯えているのは困ったことだけど。
「お嬢様」
「?」
執事から急務で呼び出される。
難破船の知らせだ。
悪女のビジネスには貿易もある。
栄えた港があるここは、王都へ輸入品を運び届ける中継地点みたいなものだ。
悪女は王都生まれではないことや、女性ながらに家業を継いでることをコンプレックスに思っていた。
まあ世界設定がそうだから仕方ないけど、仕事安定してる家の令嬢っておいしいけどな。
「お嬢様、こちらですー!」
港を管轄する民間商業のまとめ役に案内されれば、まあボロボロになった大きな船と、助かった乗組員の手当を地上でしているところ。
損傷具合を見る限り海賊か…んーそれは本編販売して目標売上に到達したときのファンディスクの話になってくるんだけど。
「こちらの方が、長です」
「はじめまして」
乗組員と少し離れたとこに座る男性を見て思い出す。
本編ファンディスクのあと、第二シーズン出すときのヒーローの1人だ。
断罪イベントの時にいたイケメンと同じく彼もイケメンですね。
「貴方が、この港の管轄を?」
「えぇ、ルーナ・ディ・キャロと申します…見たところ海賊に襲撃されたようですが?」
「その通りだ」
「私の方で修繕と物資の補給を手配しましょう」
「いいのか?」
「海賊については元より王陛下が公認されてしまったことにも問題があります。国のことは国の民で責任をとらせて頂きますわ…ただし、詳細はお聞かせください。王陛下へ陳情をお持ちしたいので」
「あぁ、わかった。恩に着る」
「お急ぎかとは思いますが、修繕等が終わるまではこの港街を楽しんでいってください……あら」
思いの外、令嬢らしい言葉遣いができてるなぁと他人事に考えて話していたら、彼の手の甲が切られて血が滲んでいるのを見つけてしまった。
彼はそれに気づいてたいしたことはないと呟いた。
「それよりも、他の乗組員の手当を…」
なるほど、乗組員の手当に人手がいっぱいだから自分はいいということか。
「では私が手当を」
「いや、ご令嬢にそんなこと」
「傷が化膿すれば航海に支障をきたします。船長がそれでは安定した航海は難しいかと」
手を、と有無を言わせない口調でいえば、彼は渋々傷ついた手の甲を差し出した。
執事に急ぎ手当用の道具を持ってこさせ、消毒から包帯を巻くまでしてみせる。
幸いこの悪女、手当のスキルがあった。
そんな裏設定あったか考えたけど思い出せないから仕方ない。
「うまいものだな…」
「お褒め頂き光栄です」
「ありがとう」
「では、後のことはランポに任せてますので、そちらに。急用あれば私も向かいますのでお声掛けください」
第二期ヒーローの一人と話して満足。
にしても、第二期についてはあまり聞いてなかったからな…港で出会う的なとこは覚えてるけど、結局どこでフラグたてて好感度あげてくんだっけ…まぁいいか。
彼から離れて最後の引き継ぎをしようとまとめ役に話しかけると、心底驚いた様子でこちらにやってきた。
「お、お嬢様、異国の言葉喋れるんで?」
「え?…えぇ、まあ」
おっとスペイン語が離せるのは設定違反だったかな?
英語含めヨーロッパ全般あたりなら話せてしまうからなー…無駄にオタク根性出して聖地巡礼するためにヨーロッパ各国の言語を最低限覚えましたなんて結構濃いことしてたな、学生時代の私。
役に立ったからいいけど。
つっこまれても困ると思い、私は急ぎ屋敷へ戻った。




