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第6話 これからどうしようか

 翌朝、俺たちは朝食を食べながら、今後の方針について話し合っていた。

 議題は簡単。

 どうすれば今後の旅が楽になるか、だ。


「んーボクはねぇ、これからのことを考えるとねぇ、やっぱり冒険者になるのいいと思うんだにゃ」


「へええ。そうなんだ?」


 俺の言葉に、チャノンが「そうにゃ」と相槌を打つ。


冒険者証(ぼーけんしゃしょー)があれば街にはいったり国境を通るのに払うおカネがすくなくなるんだにゃ」


 チャノンの話によると、冒険者になると関所での通行税だったり、街に入るための税が安くなるそうだ。

 しかも身分証としても使え、またこの町だけではなく、別の街や国に行っても使えるとのこと。


 まだ所持金は残っているとはいえ、旅はまだ続く。

 支出を押さえたいという気持ちは理解できるし、なにより身を証明するものがなにもない俺たちにとっては、是が非でも手に入れておきたいものだった。


「冒険者にもそんな特典があったとはね。知らなかったよ」


「にゃっはっは。こー見えてボクは物知りなんだにゃん」


 チャノンがえっへんとばかりに胸を張った。

 大きなふくらみがふたつ、どーんと前に突き出される。

 これに眉をしかめたのが、ぺったんこのセフィーだ。


「フン。長命のエルフであるわたしの方が様々な知識を持っているぞ。間違いなくな」


 謎の対抗心を燃やしながら、悔しそうな顔でチャノンのふくらみをチラッチラ見ている。

 ……セフィー、少なくとも胸の大きさじゃお前の圧倒的敗北だよ。


「チャノンお姉ちゃんもセフィーお姉ちゃんもいろんなこと知っててすごいなー」


 子供ゆえに胸が未知数のティファが、感心したように言う。

 ふたりに尊敬のまなざしを向け、「すごいすごい」と。


「フッ。わたしから学べばティファもすぐに賢くなるさ」


「ホント? ティファもかしこくなれる?」


「本当だとも」


「じゃあティファ、セフィーお姉ちゃんにいろいろおしえてもらうっ」


「フフッ。いいのか? わたしは厳しいぞ?」


「ティファがんばるもん!」


「そうか。良い子だな」


 セフィーがティファの頭を優しく撫でる。

 ひょっとしてセフィーがティファにだけ優しいのって、胸が自分と同じだからじゃないか?


「ねーねーカエデ、それじゃ冒険者になるってことでいいにゃん?」


「ん? ああ。構わないぞ」


「んにゃ。じゃーさー、冒険者になるのは、ボクとセフィーとカエデの3人でいい? ティファはまだちっちゃいからムリっちょだよねー?」


「ティファがんばるもん!」


「待つんだティファ。ここは『大人』であるわたしたちに任せておけ」


「セフィーお姉ちゃん……」


「安心しろ。わたしから学んでいれば、いつか必ずティファも冒険者になれる。約束しよう」


「わかった! じゃあティファがまんする!」


 すっかり絆が出来上がった2人だった。


「聞いた通りだ。わたしとチャノンの2人、それに只人族の男が一匹冒険者になるということでいいな?」


「や、そこはもう3人って言えばいいじゃん。……って、違う違う」


 俺は手をパタパタと振る。


「俺は冒険者にならないよ」


「ええー!? カエデは冒険者にならないにゃん? あんなに強いのになんでー?」


「簡単な理由だよ。俺は冒険者ギルドじゃなく、魔術師ギルドに登録しようと考えてるのさ」


 俺の言葉に、チャノンとセフィーが目を見開く


「ま、ま、ま、魔術師ギルドにゃーーーーーーん??? え? え? カエデ魔術師ギルドにはいるつもりだったにゃん?」


「そうだよ」


「馬鹿かお前は! 魔術師ギルドは高位の魔法使いでなければ入ることができないのだぞ!! そんなことも知らないのかっ。この馬鹿者!」


 いまセフィーがさりげなくディスながら言ったように、魔術師ギルドは冒険者ギルドと違い、加入することがかなり難しい。


 魔術師ギルドは知識と力量を維持するため、並みの魔法使いではまず入ることはできない。

 第三位階以上の魔法を使える者、もしくは体内に宿す魔力量が多い才能のある者しか入ることが許されないギルドなのだ。


 まー、ぶっちゃけ大賢者時代の俺が作った組織なんだけどね。

 魔術師ギルドが発行するギルド証は、存在するどのギルドのものより信頼をされていて、当然得られる特典も多い。


 関所や国境を超えるのに税はいっさい取られないし、魔術師ギルドが運営している宿泊施設には格安で泊まれる。

 大きな街にある図書館にも、フリーパスで入ることができるのだ。


 たまーに冒険者ギルドと魔術師ギルドをかけ持つ変なヤツもいるが、基本的には魔術師ギルドに入っちゃえばそれで十分。

 どこの国に行っても超優遇される素敵なギルド証なのだった。

 これもすべて、大賢者時代の俺ががんばったおかげだけどね。


「ねーカエデ、魔術師ギルドは試験がすっごいむずかしーって噂にゃ。大丈夫にゃん?」


「大丈夫だよ。てか、俺よりもチャノンたちは大丈夫か? 冒険者ギルドの試験にはモンスターとの戦闘もあるって聞くぜ」


「にゃっはっは。こー見えて、ボクは村一番の戦士だったにゃん。冒険者試験なんてよゆーにゃん。よゆー」


「わたしはレ・リミの森のエルフだぞ? わたしにかかれば冒険者の試験など……フッ。道端の石ころを蹴とばすようなものだ」


「そっか。んじゃ各自ギルドへの加入試験をがんばるってことで。あ、ティファはどうする? 宿で待っててもいいけど……俺と一緒に魔術師ギルドまで来るか?」


「カエデお兄ちゃんといっしょにいっていいの?」


「別に構わないぞ。ああ、でもそこのツンツンエルフはどうかな?」


 俺は昨夜のお返しとばかりに、挑発的な視線をセフィーに向ける。

 セフィーは睨み返しながら、


「冒険者ギルドの試験は危険が伴う。不本意だがそこの男と一緒にいる方がいいだろう」


「んにゃ。ボクもそう思うにゃ」


「そんじゃ決りだな。ティファ、行くぞ」


「うん!」


 こうして、チャノンとセフィーは冒険者ギルドへ。

 俺とティファは魔術師ギルドへと向かうのだった。

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