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第14話 口の悪いエルフ

 冒険者ギルド後にした俺たちは、そのまま術師ギルドへと来ていた。

 二日続けて来た理由はいたって単純。

 俺たちが冒険者試験を受けている間、ティファをカスパー導師に預かって貰うためだ。


 魔術師ギルドにいる者のほとんどは魔術の研究をしている。

 そして子持ちの魔術師が研究に没頭できるようにと、ギルドには託児所まであったりするのだ。

 ま、ギルド内に託児所を作るよう言ったのは前々世の俺なんだけどね。


「ここが魔術師ギルド……ボク入るのはじめてにゃ」


「わ、わたしもだ」


 チャノンとセフィーが緊張したように言う。

 魔術師ギルドは選ばれた者しか入ることが出来ない特別なギルド。

 いつもは脳天気なチャノンとやたら傲慢なセフィーでも、緊張してしまうのは仕方がないのかも知れないな。


「ティファきのうここにはいったよ!」


「どうだったにゃ? 怒られなかった?」


「なんかね、みんなつえ()持っててね、ご本ばっかよんでたの」


 緊張しているからか、ティファのざっくり過ぎる説明でも、チャノンとセフィーは真剣な顔で聞き入っている。

 どんだけ緊張してんだよ。


「さっさと入ろうぜ」


 俺は一人でスタスタと歩き、魔術師ギルドに入る。

 すぐに昨日もいた受付のお姉さんと目が合った。


「あ、君は昨日の……」


「こんにちはー。カスパー導師います?」


「おりますが……何かご用でしょうか?」


「ええ。カスパー導師に頼みたいことがありまして」


「……わかりました。いまギルドマスターを呼んで参ります」


 昨日は坊や扱いだったけど、正式なギルドの一員となったからか、お姉さんの対応はものすごく丁寧だった。

 すぐに呼びに行き、しばらくしてカスパー導師がやってくる。


「良く来たのうカエデ。何やらワシに頼みたいことがあるそうじゃな」


「ええ、実は……」


 俺はティファの手引き、カスパー導師の前へと連れて行く。


「妹のティファのことをカスパー導師にお願いしたくて」


「おおっ! ま、ま、まさか……ワシにティファ君の師となって欲しいということかっ!?」


「あ、違うん――」


「そうかそうか。うんうん。実力があるとはいえお主はまだ子供じゃ。やはり弟子を取るには早すぎたんじゃろうて」


「そうじゃなくて――」


「いや、みなまで言うな。ワシにはお主の気持ちがわかっておるぞ。痛いほどにな。師になるということには責任が伴うからのう。己の魔術の研鑽と弟子の面倒を両立させるには――」


 どこか遠い目をして絶好調に語り続けるカスパー導師。

 そんなお茶目なギルドマスターに対し、不意に辛辣な言葉が投げつけられた。

 

「少し黙れジジイ」


 これにはカスパー導師も驚き黙り込む。


「っ……」


 目をぱちくりさせながら発言の主を見たあと、小声で俺にこう訊いてきた。


「……のうカエデ」


「なんでしょうカスパー導師?」


「そこのエルフはお主の連れか?」


「いえ、違います。あんな口の悪いエルフなんて知りません」


「お、おいっ。なに他人のフリをしているんだ! わたしを知らないとか言うなっ」


 セフィーの抗議は華麗にスルー。


「ワシ、『ジジイ』なんて呼ばれたのはじめてじゃ……」


「カスパー導師ほどのご尊老を『ジジイ』呼ばわりするなんて酷い奴ですね。きっと育ちが悪いんでしょう。そんな奴は無視するに限りますよ」


「無視するなっ! おい! おいってばっ!」


 セフィーがぐいぐいと俺の服やら腕やら、挙句には髪まで引っ張ってくるが、いまさら相手になんかできない。


「ふぅむ。ワシにはお主の連れにしか見えんのじゃがのう」


「百歩譲って知り合いだとしましょう。でも決して連れの者ではありません。どちらかというと悪質なストーカーですかね。勝手に僕のベッドで寝てたりするタチの悪い奴です」


「あ、あれは2人のベッドという約束だったじゃないかっ」


「……その若さでお主も苦労しておるのじゃな」


「お気遣い感謝します。ですがこれも修行の一環として受け止めようと思います」


「くぅぅ。わたしを……わたしを無視するなんて――おいチャノン。お前からもこの只人族の男に言ってやってくれ。わたしを無視するなって! さあ早くっ」


「セフィーの自業自得にゃん。ボクしーらない」


 チャノンはそう言うと、我関せずとばかりにセフィーに背を向ける。


「セフィーお姉ちゃん。ティファはセフィーお姉ちゃんのみかただよ」


「おお……ティファ。わたしが信頼できる相手はお前だけだ」


「セフィーお姉ちゃん!」


「ティファ!」


 セフィーとティファの二人がひしっと抱き合う。

 その一部始終を見ていたカスパー導師が、


「やっぱりお主の連れなんじゃな」


 と言ってきた。


「あんなエルフを連れてきて申し訳ありません。このエルフは只人族に騙された過去があり、只人族の――特に男を嫌っているのです」


「エルフは容姿が美しい種族じゃからな。それ故に不運に見舞われることも多かろう。しかしジジイか……。ちょっとだけ胸が痛いのう」


「マジですみません」


「良い。お主の話を最後まで聞かぬワシも悪かった。して……ワシにティファ君を任せるとは、どういう意味でじゃ?」


 やっと本題に戻った。

 俺は姿勢を正す。


「それはですね、どうしても外せない用事がありまして……。数日でいいのでティファを預かってもらいたいんです」


「用事とな?」


「はい。後ろの二人が冒険者試験を受けるというので、それに同行しようかと」


「獣人の娘と、口の悪いエルフのか」


「ええ。口の悪いエルフのです」


「なにやら事情がありそうじゃな。うむ。別に構わんぞ。ティファ君はお主同様、魔術師ギルド期待の新人じゃからな。安心してワシに預けるが良い」


 カスパー導師が理快諾してくれた。

 俺は頭を下げて礼を言う。


「ありがとうございます!」


「良い良い。元よりギルドとは助け合うためにあるのじゃからな」


「それじゃあ、明日の朝ティファを連れてきますね」


「うむ。任せよ。メイア、お主も良いな?」


 カスパー導師が受付のお姉さんに顔を向ける。

 お姉さんってメイアって名前だったんだ。


「畏まりました。ティファ様のお部屋を手配しておきます」


「結構。ではワシはこのあと錬金術ギルドの統括本部長との会食があるので失礼させてもらおう」


 カスパー導師はそう言い残して去っていった。

 こうして、明日はティファを魔術師後ギルドに預かってもらえることが決まり、一安心。

 帰り道、俺とチャノンとセフィーは武器屋で装備を整え、冒険者試験に挑むのだった。

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