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第13話 代筆

「へええ。そこそこ大きなとこじゃないか」


 チャノンの案内の下、冒険者ギルドへとやってきた俺たち。


「いちおう言っておくと、そこの看板には『冒険者ギルド』ってちゃんと書かれてるぜ」


「だってさセフィー。ボクの言ったとーりでしょ?」


「わたしは万が一を警戒していただけだ」


「にゃっはっは。それじゃ入るにゃん」


 チャノンが扉を開ける。

 冒険者ギルドは入口の正面には受付カウンターがあり、右には酒場が併設されているスタンダードな造りだった。


「あ、さっきのおねーさんがいるにゃん」


 チャノンが受付嬢に手を振った。

 振られた受付嬢の顔が僅かに引きつる。


「ま、またいらしたんですね」


「うん。こんどは字ぃかける仲間を連れてきたんだにゃ。さっきの紙まただしてほしーにゃ」


 受付嬢は、チャノンの隣にいる俺を見る。

 目に入れても痛くないほどの愛くるしい少年だったからか、にこりと笑みを浮かべた。


「まあ、カワイイ坊やね」


 受付嬢が二枚の用紙をカウンターに並べる。


「いい坊や? これがお姉さんたちの冒険者試験申請用紙よ。お姉さんたちにはさっき説明したけけれど、ここに名前を書いて、試験費用の銀貨1枚を払えば手続きが完了するわ」


 俺が子供だからか、お姉さんが喋り方がだいぶフランクになった。


「お姉さん、ペン借りていいですか?」


「いいわよ。これを使って」


 ペンを受け取り、申請用紙にチャノンとセフィーの名を書こうとしたところで、


「おい。ちゃんと書かれていることを読んだのだろうな?」


 セフィーが小声で訊いてきた。


「大丈夫だよ。ここに書かれていることは冒険者試験の内容と、万が一試験中に死傷しても文句は言わないってことだけだ。セフィーの名を書いても借金背負わされたり奴隷になったりしないから安心しな」


「な、なぜそのことを知っているっ? チャノンに訊いたのか?」


「カマかけただけだったんだけど……当たったみたいだな。そりゃお前が只人族を嫌うのも当然だ」


「フ、フンッ。やっと理解したか。そうだ。お前たち只人族は他種族はもちろん、同族ですら欺くことに抵抗がない。ティファのような幼い子供ですら平然と欺し奴隷にするのだからな。まったく……本当に最低な種族だ」


「セフィーを欺し苦労かけたこと、同じ只人族として俺が代わりに謝るよ。悪かったな」


「っ……」


 まさか俺から謝罪の言葉が出るとは思わなかったのか、セフィーが面食らった顔をする。


「只人族のなかには悪いヤツはたくさんいる。でも俺は絶対にセフィーを欺したりしないから、そこだけは信じてくれ」


「ティファもセフィーお姉ちゃんにウソつかないよ」


 俺の言葉にティファが便乗してくる。

 セフィーはぷいとそっぽを向き、


「……心に留めておこう」


 と言うのだった。


「あれ? セフィーお姉ちゃんお顔がまっ赤だよ? おねつ?」


「そ、そんなわけあるか! 赤くなどなっていない!」


「にゃっはっは。ティファ、セフィーは照れてるだけにゃ」


「照れてなどいないぞ! 本当だぞ!」


 コントをはじめた2人を余所に、俺は申請用紙に2人の名前を書き、


「……ふむ。お姉さん、もう一枚申請用紙をもらっていいですか?」


「え、もう一枚? 書き間違いでもしちゃった?」


「いいえ。そうではなくて、僕も冒険者試験を受けようと思って」


 今朝までは受けるつもりがなかったけど、少し気になることができたからね。

 念のため受けておきますか。


「坊やが? 本気で言っているの?」


「はい。本気です」


「……そもそも坊や、いまいくつなの?」


「12歳です」


「じゅっ、12歳っ!? なのね君、冒険者に年齢制限はないとはいえ、とても危険な仕事なのよ? 坊やにはまだ早いと思うわ」


「あ、そこは大丈夫です。こう見えて僕、魔法使えるので」


「ええっ!? そ、その歳で魔法をっ?」


「ついでに言うと魔術師ギルドにも所属しています」


「……冗談……よね?」


「ホントですよ。ギルドカード見ます? ほら」


 俺は受付嬢にギルドカードを見せる。

 受付嬢はただただ唖然。

 ギルドカードと俺の顔を交互に見ては口をパクパクさせている。


「嘘……本物のギルドカードだわ……。み、見せてくれてありがとう。じゃ、じゃあ、もう一枚用意するわね」


 受付嬢がもう一枚申請用紙を出し、そこに自分の名前を書く。

 そして3人分の銀貨3枚を支払い、


「試験は明日行います。明朝ギルド前へ集合してください」


「わかりました」


「はーいにゃ」


「……チッ、しょうがないから来てやろう」


 こうして俺、チャノン、セフィーの3人が冒険者試験を受けることになったのだった。


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