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第9話 秘められし力

 実技試験で的を破壊したことにより、俺は残りの試験をすっ飛ばして合格となった。

 ギルド証は数時間で発行可能とのこと。

 そんなわけで、


「カエデ、これがお主の魔術師ギルド証じゃ。受け取るが良い」


 俺はシュマイツァー導師から、ミスリル製のギルド証を受け取る。


「ありがとうございます」


「そのギルド証はお主にしか使えん。本人でなければ文字が表示されない仕組みになっておるんじゃよ」


「へええ。それはすごい技術ですね」


「お主の言う通りじゃ。凄いの一言に尽きる。この技術はな、偉大なる錬金術師クォルツ殿が発明なさったものなのじゃ。数々の魔道具を創り出した白金の錬金術師。かの御仁の偉業は、我々魔術師ギルドにも多くの恩恵をもたらしてくれた」


「いやあ、そんなに褒めないでくださいよー」


 前世の頑張りを褒められ、俺は頭をポリポリ。


「む? なんでお主が照れておるのじゃ」


「いえ、なんでもありません」


 俺はきりっと表情を戻す。


「そうか。……さて、これで本日からカエデは我々魔術師ギルドの一員じゃ。念のため魔術師ギルドの成り立ちと活動について説明をしておくかのう」


「お願いします」


「まず魔術師ギルドが創設されたのは――――……」


 シュマイツァー導師の話を要約すると、だいたいこんな感じだった。

 偉大なる大賢者キャスバル(前々世の俺)が設立した魔術師ギルド。

 目的は魔術の発展と地位向上だ。


 魔術師ギルドでは冒険者ギルドのように魔法に関する依頼を受け、報酬を受け取ることが出来る。

 依頼は魔法学園の講師からモンスター退治までと、魔法に関わることならなんでもござれ。

 世の中には、魔法でしか倒せないモンスターが多数存在するからだ。


 だからだろう。

 魔術師ギルドの報酬は、冒険者ギルドのものよりずっと多いそうだ。


 ギルドではランクが存在し、これは実力ではなくギルドへの貢献度で上がっていくシステムらしい。

 他にも、普通では手に入らないような魔道具や魔法の武具の販売なども行っているし、ギルド支部がある国なら入国税がかからず入ることができるとのことだった。


「――といったところかのう。何か質問はあるかね?」


「いいえ、ありません」


 俺がそう答えると、


「ティファもありません!」


 なぜかティファも追従してきた。

 シュマイツァー導師はティファに優しく微笑み、そこでふと何かを思いついたのだろう。


「お主の妹は魔術師にはならんのかのう?」


 と訊いてきたじゃありませんか。

 俺は慌てて首を振る。


「い、いえっ。ティファは魔法を学んだことがありませんので」


「ふうむ。しかしカエデ、お主の妹なんじゃろ?」


「そうだよ。ティファはカエデお兄ちゃんの妹だよ」


 俺が口を開くより先にティファが答えてしまう。

 事前に「俺の妹ってことにするんだぞ」って強く言い聞かせていた結果だ。


「魔法の才は遺伝によるものが多いと伝え聞く。カエデがこれほどの魔法の才を見せたのじゃ。きっとこの娘も魔法の才があるに違いない」


 シュマイツァー導師はしたり顔でそう語ると、


「誰か、内見の水晶球をここに」


 と声をあげた。

 すぐに部下のひとりが水晶球を持ってくる。


「この水晶球も白金の錬金術師殿がお作りになった魔道具のひとつでのう。触れた者の魔力の強さを光と色で表すことが出来るのじゃ。本当はこの水晶球に触れるのも試験の一つだったのじゃよ」


 シュマイツァー導師はそう言うと、水晶球をティファに差し出し、


「さあ、触れてみるが良い」


 と言ってきた。

 周囲の人たちは興味津々でこっちを見ている。

 まずい。このままじゃバレて(・・・)しまう。


「あっ、あの! シュマイツァー導師! ティファはっ――妹は魔術師になんて」――」


「ここにさわるの? えい」


 俺の努力も空しく、ティファが水晶球に触れてしまった。

 瞬間――


「ぬぅぅぅっ!? こ、この輝きは――――ッ!?」


 水晶球が眩い光を発した。

 太陽が落ちてきたんじゃないかって眩しさだ。

 それを見た俺は、一人ため息をつき、呟く。


「はぁ……。ティファの潜在能力がバレてしまったか」


 そうなのだ。

 出会った時から気づいていたけど、ティファは凄まじく強い魔力をその身に宿していたのだ。

 それこそ、大賢者時代にいた6人の弟子に匹敵するレベルで。


「なっ、なんという光の強さじゃ!! しかも……白い光じゃとっ!? この娘はあの……ひ、光魔法の才を持つというのかっ!!!!」


 ちょービックリするシュマイツァー導師。

 光魔法とは、俺が試験で使った闇魔法の対極に位置する魔法で、これまた使える者が少ない――というか、ほとんどいない属性魔法だ。


 半端ない潜在能力とは思っていたけど、まさか光魔法とはねー。

 これには俺も驚いた。


「な、なあカエデ。どうじゃろう? お主の妹も魔術師ギルドに入れてみてはっ?」


 シュマイツァー導師が鼻息も荒く訊いてくる。

 俺の肩をがしっと掴むその手からは、「絶対に逃さないぞ」という強い意思が伝わってきていた。


「い、いやー……妹は魔法に興味が――」


「ティファもまほーつかえるのっ?」


 キラッキラした瞳でシュマイツァー導師を見あげるティファ。

 シュマイツァー導師もキラッキラした瞳で頷く。


「そうじゃ。お主の魔法の才は、兄のカエデに劣らぬものじゃ。どうじゃろう? お主も魔術師ギルドに入ってはみんか? ギルドに入れば美味しいお菓子が食べ放題じゃぞ」


 どんな勧誘の仕方だよ。

 って思っていたら、


「おかしっ!?」


 ティファは思い切り釣られていた。


「あ……でもティファ、まほーつかえないよ?」


「かっかっか。構わん構わん。魔術師ギルドは才能ある者を見つけだし、その者を導くのも使命の一つじゃからな。もしお主が望むのであれば、ギルドマスターであるこのワシ自ら教えようではないか。どうじゃ? ん? 魔法を使ってみたくはないか?」


「うかってみたい! ティファまほーつかいになる!」


「かっかっか。魔術師(・・・)じゃよ。魔術師ギルドに所属するものは己を『魔法使い』ではなく、『魔術師』と呼ぶのじゃ」


「ティファまじゅつしになるー!」


「そうかそうか。ギルドに入るか。ではお主のギルド証も作らねばならんのう。すぐに用意させるとしよう」


「シュマイツァー導師、ありがたい申し出なのですが……また金貨5枚を支払うのはちょっと厳し――」


「心配無用じゃ。お主の妹の分はワシが払おう。なにせこのワシの後継者となるやも知れんのじゃからな。かっかっか!」


 シュマイツァー導師は絶好調に盛り上がっている。


「大陸に2人しかいない光魔法の使い手。その『3人目』をワシ自ら教え育てることになるとはのう……。かっかっか、年甲斐もなく血が滾っておるわ」


「あ、僕たちは旅の途中なのでティファの修業はお断りします。それと金貨5枚もちゃんとお支払いしますね」


「……」


 俺がきっぱり言うと、シュマイツァー導師は分かりやすいぐらいにしょんぼりしていた。

 こうして、ティファも魔術師ギルド(見習いとして)に加入するのだった。

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