アンドロメダ /07
マヤがライトを手で隠した。
「何するんだ!」
怒るススム。
「光っている。」
胸ポケットに入れているスマホから光が出ている。
スマホを出したススムが見たものは、スマホに付けたストラップが輝いていた。
ストラップを見る、ススム。
「どうしたの?」
マヤが聞いた。
「御守りが、輝いている。」
ススムを座らせたマヤ。
「俺が子供のときにもらった御守りなんだ。」
マヤは、リックサックからペットボトルを出してススムに渡した。
一口飲むと、マヤに。
マヤも飲んだ。
「俺、子供のころオヤジに連れられてこの山に登ったんだ。」
話す、ススム。
ススムが小学生の時に、お兄さんとオヤジと3人で修験者修行に来たという。
親子連れの修験者修行で、50人ぐらいいただろう。
夏休みのイベントのひとつ。いくつもの山歩きに、苦行。
夜は、ゲーム、バーベキューありの修行。
「親の言うこと聞くか!」
ロープ1本の命綱で身を落とすと、よくテレビでやっている行をしていた。
「親の言うこと聞くか!」
「あの修行は怖かった。」
オヤジも、兄貴も、他のみんなも、
「聞きます!」
と言ってしまった。
俺の番になってロープと足二本で身を落とされた時、
「親の言うこと聞くか!」
「イヤダ!」
と、言ってしまった。
岩から見えたのは、母親の笑った姿。
いつも、殴ってくる。俺がなにをしたのか、なぜ怒ってくるのか、教えてもくれないで、八つ当たりする母親。
母親と兄貴は、おいしい料理で、夕食をとっているのに、俺は同じテーブルで、メイドの食事より落ちる御飯を食べて、笑う母親に兄。
「親の言うこと聞くか!!」
聞く、修験者の人。
「イヤダ!!」
あの母親の言うことを聞かないといけないんだと、怒りが湧いてきてな。
「親の言うこと聞くか!!!」
「イヤダ!! なんで言うこと聞かないといけないんだ!!!」
言ってしまった。
その時、足が浮いて、山の中に落ちてしまった。
ロープも身体から外れて、何本もの杉の枝に身体がぶつかって、落ちてしまった。
下に枯れ葉がクッションになって、命は助かったけど、ミイラにされて、入院になった。
その後、修行は中止になって、みんなが帰ったと聞いた。
目が覚めたとき、ひとりの修験者が見てくれた。
修験者に親のこと、家のこと、話しているうちに、泣いてしまって、ゴメンと、修験者に言った。あなたには関係ないのに。
マヤが手を握ってくれた。
入院中、オヤジは時間を作ってくれて何度も来てくれたけど、母親と兄貴は一度も。
何人かの修験者が、僧侶が見舞いに来てくれて、僧侶にならないか、なんて。
俺のことを心配して、誘ってくれたと思う。
退院の何日か前に、話を聞いてくれた修験者が来て、くれたんだ。
御守りを。
修験者が話てくれた。大事な御守りだと。
「いいの?」
聞いたら、いいと。俺に託すと。
修験者の若い頃、まだ修験者になってないとき、神の国に行ったと話てくれた。
その時に、握っていた御守りだと。
「もう一度、神の国に行きたいと、修験者になって入口を探しているけど、この歳になっても見つけられなくて、と、話てくれた。」
マヤは黙っている。
笑う、ススム。
「神の国なんて、あるのかな?」
「でも、素敵な話ね。」




