アンドロメダ /36-B
日本人は、ロボットを隣の友達ととらえている。それは、ロボットアニメが、人を助けるものと描いたから。
しかし、外国では、兵器、武器と開発されている。
無人飛行機。ミサイル。歩行ロボット。等々。
私達が日常使っているロボット掃除機。地雷撤去作業会社が開発した物。GPS、軍事衛星を利用した。電子レンジ、レーダーのマイクロ波を利用した物。
アンドロメダ-イブ。
イブの行動は、人間その物だった。
科学者は、イブを分解調査したいと考えるようになった。
人間に溶け込んだ、ロボット。アンドロイド-イブ。
日本では、隣人として。
外国の科学者の目には、ものである。サンプルがある。開発を促進するサンプルが。戦争の兵器が。
誰かが、欲しいと望んだ。多くの人間が望んだ。
アンドロメダが欲しい。アンドロメダを手に入れたなら、地球を我が手に。
我々が地球人を導く者だと。
考える政治家が、軍人が。
ある科学者が、囁いた。国の政治家に、トップに。
科学研究所の所長が、言った、大統領に。
どこかの軍事幹部が、会議の中で話した、アンドロメダが必要だ。
どこかのコメンテーターが、テレビ放送で話した。
宇宙船、アンドロメダがあんなに大きい訳が無い。地球の科学、技術では作れない。
日本政府は、今すぐに、アンドロメダの開示請求をするべきだ。
日本のテレビ番組も、アンドロメダを地球に持ってくるべきだと。
18歳の子供達に、宇宙船の管理を任せられない!
日本政府が、管理するものでない!
地球政府が管理するものだ!
日本政府は、アンドロメダが接近した場合の地球環境への影響を解いて回った。
アンドロメダが出した場合、どれだけの被害が起こるか! アンドロメダのシミュレーションを発表している。。
しかし、地球人類は、アンドロメダの存在自体疑っていった。
本当に日本列島に匹敵する宇宙船なのか?
地球科学、技術では作れない。
と、答を出した科学者。
アンドロメダおよび、アンドロメダ-イブは、大和ススム、飛鳥マヤを、所有者に選んだと、説明している。
機械が、コンピュータが、所有者を選ぶなんてことはない!
SF映画の見すぎだ!
日本政府が地球連邦政府の決定に従わない場合、輸出入関税処置対国にすると、警告した。
アンドロメダを我がものに! 国々が考えはじめた。大国は、中国、小国を巻き込んで、イブを我がものに動き出した。
ススムとマヤは、日本政府が良い舵取りをするだろうと、見ていた。
争い事のない方に進むだろうと。
ススムとマヤが帰って来て、2回目のクリスマスがきた。
商店街、アーケード街は、クリスマスのデコレーションでにぎやかになっている。
商店街のママさん同士の井戸端会議。
今年は、居酒屋を閉めて、クリスマスパーティーをと、話すマヤママ。
ススムが見ている。
マヤとイブの喜ぶ姿を。
日曜日には、ススムのおやじとおふくろが居酒屋に来ている。
おふくろは、キッチンに入って、仕込みの手伝いを。
マヤママが、お礼を言っている。
何回も来ている店。笑っているおふくろ。
おやじは、昼から、ビールを。
おふくろに注意されている。
ススムとマヤ、イブは、テーブルで、受験勉強をしている。
ススムの、マヤの学校の仲間達が来ている。
ヒカルも入っての勉強会。
商店街には、相変わらず、外国人が多い。バスツアーなのか?
イブを見ようとする人達。
いつものように、歩行者天国になった道路。
町中会の人達が、テーブルを、イスを出している。
イスがない! と話す人達。どこからか、一升瓶のプラ容器が、イスになった。
イブが、マヤが、お客さんにビールを持って行った。
スマホにと、お客さんの要望に応えるイブにマヤ。
勉強会を終わらせて、手伝う、ススム達。
ススムは、たこ焼きに遊ばれている。マヤが、ビールジョッキに麦茶を入れてススムに。
お好み焼きに、焼き鳥。フランクフルト。等々。
クリスマスの飾りが。
マヤママは、おでんを。
他の店から、お惣菜が、大皿に載っている。
バイキング式に売れる酒のあて。
外国人のお客さんが、ビールのお代わりの催促を。
アルバイトのお姉さん達が、動きまわっている。
国道で、自動車事故が起こった。
パトカーが、消防車が、救急車が走る。警察職員が、SPの顔が変わった。
イブがテーブルにビールを持っていった。
男の人が、イブの手を掴んだ。
イブを囲む男達。
黒いバンが、歩行者天国に突っ込んだ。
投げ出された人々。
バンにイブを押し込める男共。
抵抗するイブの頭上で、拳銃が。
撃った男が、倒れた。
商店街から、ライフルを持った男達が、走って来る。
イブを離した男共、ライフルの男達を撃った。
イブは、男共の足下から、マヤママに向かって走った。
テーブルで飲んでいる人達が、転がっている。
男達の後ろから、飛ぶ弾丸。
マスコミが、カメラが映している。
テレビを見る人達が、青ざめた。
商店街の買い物客が、血を流して倒れた。逃げる人に銃弾が襲う。
テレビのキャスターが叫んでいる。
カメラが地面に。横倒しになってテレビに映っている。
キャスターがカメラマンの名前を呼んでいる。
首都、政府機関では、テレビ映像に青くなっていた。
警察がまだか! と、叫んでいる。
事故で、遠回りさせられるパトカー。救急車が、出払っていた。
イブの手を取ったマヤママ。マヤママを守るマヤとススム。
「なぜ?」
走るマヤママとイブ。
ママが崩れた。
「おばあちゃん!」
イブが!
肩を押さえる。血が流れた。
「おばあちゃんが撃たれた!」
男が、イブの腕を、掴んだ。
「おばあちゃんが撃たれた!」
「おばあちゃんを撃った!」
男は、飛んで、テーブルに落ちた。
「なぜ!おばあちゃんを撃った!」
誰かがイブを撃った。
イブが倒れる。
男共が走って来た。
イブの中から、光が。
男共の周りを回った。
光が固まって、壁を作った。
イブが現れた。
「なぜ、おばあちゃんを撃った!」
「なぜ、人を撃った。」
「なぜ、人を殺した。」
光のイブは、地球中に現れた。
銃を持っ人々をシールドで人間を閉じ込めた。
「なぜ、おばあちゃんを撃った。」
「ナゼ、人を撃つ!」
「何故、人を殺す!」
「なぜ!」
「何故!」
「答えろ!」
「答えろ!!」
マヤママの前。
シールドに囲まれた男が、撃った。
シールドをかけまわって、男の中にのめり込んだ。
「なぜ、あなたは人を撃つ!」
戦場で、銃を持つ人達に聞いた。
「なぜ、銃を持つ。」
「なぜ、銃を撃つ!」
銃を製造している会社にも、会社の社長や、重役にも。
「なぜ! 銃を作る!」
「何故! 人を殺すものを作る!」
銃を持つ人達にも。
「何故、銃を持つ!」
国家最高機関のトップ。
大統領にも。
「何故、あなた達は、戦争をしろと、命令できる!」
「命令する!」
イブの怒りが、地球の人達に入った。
「なぜ!」
「ナゼ!」
「何故!」
「誰か、教えろ!」
地面が揺れた。
太陽、地球、月。
太陽と地球の間に、宇宙船が現れた。
月が、地球に引きずられた。
宇宙船のワープ航行によって、太陽と地球の重力効果で、月が10万キロメートル、地球にと動いた。
海が荒れた。津波が、島を襲う。
いくつもの島国が、人間が、動物が、文明が一瞬に消えた。
宇宙船が、地球の重力を引っ張って、大陸では、地震が起きて、火山が噴火した。
大地が割れ、ビルが都市が呑み込まれた。
地球国際宇宙ステーションが、後、何分かで宇宙船に衝突する。
地上の有様をカメラで撮る乗組員。
「私を撮って!」
女性乗組員が、全世界に発信した。
「後、何十分かで、地球に現れた宇宙船にぶつかります。」
「パパ、愛している。ワガママ聞いてありがとう。子供私の代わりに、パパを助けて。」
泣きながら、船長をしている女性宇宙飛行士が、叫んだ。
マイクを投げる。何人もの宇宙飛行士が、乗組員が、最後にと、話をしている。
「いよいよだ!」
誰かがステーションの窓から見ている。
カメラが撮る。
大きい。デカい。
本体だろうか。大きな糸巻き状の宇宙船。葉巻タバコのような宇宙船。ミラーでコーティングされている。
その回りを3枚の翼が、螺旋状に回っている。
宇宙船が白いものを出した。
軌道修正をしている。
ステーションが宇宙船の本体と翼の中を走る。
宇宙飛行士達は、声が出ない。
「見ろ!」
「ア ン ド ロ メダ。」
「アンドロメダ!」
「木星にあるアンドロメダが現れたの?」
何度も軌道修正を加えた、アンドロメダ。
宇宙ステーションは、アンドロメダから離れた。
全身をカメラが捉える。
世界中の政治家が、科学者が、青ざめた。
デカい!
巨大すぎる!!
イブが、世界中の人に聞いている。
「なぜ!」
「ナゼ!!」
「何故!!!!」
アンドロメダ-イブの怒りが、アンドロメダを呼んだ。
まだ、姿を保っているイブの身体に、マヤが抱きついた。
「大丈夫。」
「大丈夫よ。おばあちゃん。大丈夫だから。」
マヤママが、イブを抱く。
「イブ。大丈夫よ。ありがとう。」
街は、炎に包まれた。
「あんたが町を壊した!」
町内の人達が、怒りをぶつける。
「止めて!」
マヤママが叫んだ。
「イブに、アンドロメダ-イブに、憎しみを、怒りを、悲しみを、教えないで!」
ススムが宇宙を見ている。
「もう遅いの。ママ。」
マヤが話した。
「アンドロメダが、意思を持った。感情を持った。」
「憎しみを。怒りを。」
「遅い! 今、アンドロメダは、地球の静止軌道上に現れた。」
ススムが次いだ。
「粒子エネルギーで、ワープ航行を。」
「そのエネルギーで、月が動いた。」
「巨大すぎるアンドロメダ。そのエネルギーは、惑星を破壊するだけのエネルギーを蓄えているから。」
「アンドロメダ自身、巨大なエネルギータンクだから。」
「ワープ航法の余波は、月の軌道も変えるエネルギーだった。」
「私達は、地球政府に言い続けた。」
「でも、日本政府も言い続けた。」
「でも、地球政府は、アンドロメダを受け入れてくれなかった。」
「地球人のレベルで見ている。」
「昔から、地球人は、地球人同士、価値観を持っていて、他の価値観の持ち主を否定したように。」
「己の利益しか考えていない人達によって。」
「多くの人々が死に、国が滅んだ。」
「どれだけのカネが動いたと思う。」
「どれだけの科学が、壊されたと思う。」
「どれだけのエネルギーが、ムダに亡くなったと思う。」
ススムとマヤがテレビに話している。
アンドロメダは、地球に降下している。
ススムは、何も言わない。マヤは、
「イブ。止めて!」
「何故、おばあちゃんを殺そうとしたのよ。」
「ママは、おばあちゃんが好きでしょ。」
イブが言った。
「でも、多くの人が死ぬのよ。」
マヤママが。
「おばあちゃんは、多くの人が亡くなるの、見たくないの。」
「でも、人間は、多くの人間を殺した。」
「今も、この人間達は、イブのお友達を、仲間を撃って、殺した。」
シールドの檻に入っている人間を見て、イブは、言った。
「あなた達の言う。」
「地球の歴史で、人間は人間を殺して、新しい時代、文化を作った。」
「他の生命体を破壊しつくして、町を、都市を、国を作った。」
イブが言った。
「イブは、おばあちゃんが好き。ママが好き。パパが好き。」
「おばあちゃんをいじめる人間は嫌い。泣かす人間を憎む。傷つける人間を、許さない。」
男は、イブの目を見ている。
「人の目でない!」
イブの腕にしがみつく、マヤママ。
止まる。イブが。
「ごめんなさい。イブは、あなたは、人を殺したらダメ。人を憎んだらダメ。」
「私の孫だから、人を好きになって。」
「お店にくるお客さんと、仲良しになるように。」
マヤママが、マヤが、イブを抱いている。
「ススム。」
マヤが呼んだ。
地震が起こっている。
地震で、いくつものビルが倒壊した。
マヤも見ている。
「何が?」「アンドロメダが地球の重力圏に入った。」
宇宙ステーションが、何度もアンドロメダを撮っている。
ゆっくりと地球に沈むアンドロメダ。バンアレン帯を裂いて、大気圏を割って、大陸に落ちる、アンドロメダ。
地上のテレビが、世界中に発信している。
炎を上げている。
翼が、炎をかき混ぜている。
地上に炎が落ちる。大地が割れる。都市が、呑み込まれた。
大地が動いた。軍の施設が、鉄とコンクリートで出来たサイロが壊れて、核ロケットが、核ミサイルが爆発した。都市を何個も揉み込む穴が出来て、放射能が渦巻きになった。
大陸を横切るアンドロメダ。海水が割れた大地になだれ込んだ。
「なぜ、アンドロメダが。」
「アンドロメダの重力。エネルギーでは、地球に及ぼす影響が大きいの。」
「宇宙空間で、粒子を使って跳ぶことは出来る。」
「地球を離れる事は出来る。」
「しかし、人間が粒子エネルギーを浴びて、遺伝子が書き換えられたときは?」
ススムが話した。
「人間が人間でなくなる。」
「地上に降下して、重力ジャンプする方が、被害が少ない。」
イブが話した。
「そんな、どうにかしろ!」
男達が怒っている。
「私達は、日本政府を通じて、地球政府に各国政府に、全てを発表したはずだろう。」
ススムが。
「それを、各国政府が、あんた達に命令した人達が、政治家が、軍事幹部が、科学者達が、否定した。」
マヤが。
「イブを、モルモットに、実験材料に、しようと、強奪したのは、誰だ!」
「俺達に怒りをぶつけるのはいいが、イブを解剖しようと考えた者達の責任は? 誰だ!」
「お前達に命令したのは、誰だ……。」
カメラが撮っている。
「楽しいだろう。人間を殺して。」
「私達の母星を、壊して、人間が住めない世界にして。」
イブを襲った男達に、ススムは、缶ビールを渡した。
「あんた。子供は?」
「このようなことが起こると予想して、私達は地球に警告していたはずだ。」「それを、無視して、イブを奪い取ろうとした者は、誰だ!」
「あんた達の家族、生きていたらいいけど。」
泣き出す、人々。
大洋が大波を立てて海岸を襲う。
大地が崩れて、海が割れて、海底の地面が見える。
タンカーが、貨物船が、大型旅客船が、滑り落ちる。
炎を上げる船舶。
その上に海水が襲いかかる。
ステーションが、望遠カメラで撮っている。
軍部の偵察機が、世界中に。
偵察機が、大波に飲まれた。
今や、大国という名を言うの国は、全て亡くなった。
国が、軍隊が、警察が、民を守ってくれなかった。
日本も、次々と火山が噴火して、地震が、大陸棚が崩して、村が町がなくなった。
多くの核発電所が、爆発して、炎を上げている。
「俺の責任でない!」
プレス会場で叫ぶ、大統領が。
罵る、大臣達。
「お前ら、俺に押しつけるな! 賛成しただろう!」
台風が大量に発生して、渦巻きが襲う。
町が、都市が、凶器となって、人々に襲う。
宇宙ステーションの乗組員が見たものは。地球が動いている姿。
大地が動き、大陸が移動している。
たった何時間のあいだに、目で見える距離を移動する地球。
「おやじ。おふくろ。俺達、旅立つよ。」
「ママ。行くね。」
アンドロメダが、ススムの頭上に来た。
アンドロメダと、読める。
「このままでは、おばあちゃんが死んでしまう。」
イブが抱きついた。
日本政府は、今、踏ん張っている。
内閣総理大臣が、ススムと話をしている。
「おばあちゃん。大好き。」
「また、会いにくるから。」
抱きしめて耳元で話すイブ。
うなずく、マヤママ。
アンドロメダが、エレベーターを降ろした。
アンドロメダに入ったススムとマヤ。イブ。
アンドロメダが翼の回転を上げた。
地球の重力ジャンプに入るアンドロメダ。
日本から、大陸に進路を取る。
ユーラシア大陸が、国という国が、揺れた。
街が、都市が、崩れて大地に帰った。
道が壊されて、自動車が、竜のように燃えている。
国会議事堂が破壊されて、多くの人が、土埃に埋もれた。
ゆっくりと、昇る、アンドロメダ。
宇宙ステーションが、地球を離れるアンドロメダを撮らえた。
大きくなった月を背景に。
それは、神々しいものだった。




