アンドロメダ /03
寺町の入口。朱に塗られた山門がある。大きさは3メートルはあるだろうか。二体の仁王像が立っている。
その下、石垣に座って、持たれて、学生達が集まっている。先ほど、一緒に登った外国人のカップルと話を盛り上がっている学生達。
「まだかな。」
あくびしている学生も。
托鉢僧が何人も門にいる。参拝に来た人達が、拝んでいる。
バスが、自動車が、通り抜ける。
「お腹すいたな。」
「お土産、なにする?」
「えっ、胡麻豆腐?」
「定番過ぎない。」
「大人の食べる物よ。」
「まんじゅうでしょう。」
「これも定番。」
女の子達が、雀のようにしている。
「よく話続くな。」
あきれる、男共。
男より、女の子が多いクラブ。
「歴史研究会ってなにするんだ。」
聞く学生達も。
そんな中、引率の教師と坂上光達が着いた。
「これで全員だな。」
顧問の教師が言った。
「大和君と飛鳥さん、まだです。」
学生が言った。
「えっ!」
最後に来た、引率教師を見る。
「すぐ来ますよ。」
「飛鳥さん。靴擦れしていたからね。」
笑う、学生。
顧問の教師が、時計を見た。
「探しに行こうか?」
教師が言った。
学生が見ている。交番に入る人達を。
手には、黄色のリックサックが。
「あれって、ススムのと?」
交番に走る学生達。
「ええ、ハイキングコースにリックサックが…。」
話をする人達。
「スイマセン。」
リックサックを開ける学生達。
ススムのだ。
ファスナーに、マクドのホルダーをつけている。
「君達は?」
お巡りさんが聞いた。
県立高校の学生で、今日、クラブ活動の一環として、高野の山にハイキングに来た事を言った。
「ふたり。大和ススムと飛鳥麻耶がまだ来ていないんです。」
お巡りさんが、学生達と来た。
話をと言うお巡りさん。
最後に歩いた教師が、すぐ来ますよと、言っている。
「先に、リックサックだけ歩いて来たのですか?」
学生に突っ込まれた教師。
「交番で。」
教師が交番に向かった。続く、学生達。
御経をやめて、見ている托鉢僧の皆さん。
何人か、交番に来た。
「えっ! 行方不明!」
托鉢僧が大きな声で言った。
鈴をならして走り回る、多くの托鉢僧。
「神隠しだ!!」
「神隠しだ!」
驚く人々。
「神様が隠した!」
寺町が騒然となっている。
走り回る、お坊さん達。
高僧は、護摩木の用意をするように命じた。
寺町警察署は、非番の警察官に召集をかけた。
「山狩りだ!」
僧侶が、警官が隊列を組んで、進む。
その僧侶に、警官に地元の人達が、お店の人達が、火打ち石で浄めた。
驚いた観光客に、外国人達。
何事かと、店の人に聞くが、外国人に神隠しを説明できない。
「カミカクシ?」
外国メディアが取材旅行に来ていた。
「カミカクシ?」
僧侶が警官が、隊列を組んで、山を降りる姿は、地球中に流れた。
「なにがあったのですカ。」
外国のメディアが、聞いた。
インタビューに答える、おばあちゃん。
「昔のことだはさ。」
方言丸出しで話おばあちゃん。
戦争中、女子学生達が、山に山菜採りに行って、神隠しにあった、とか。
兵隊さんが、神隠しにあって、探しに行った兵隊さん達も神隠しにあったとか。
神隠しにあった人が、何年かして戻って来たけど、歳をとってなかったとか。神隠しから戻って来た人を神戻りって言うんだけど、その人が、村を豊かにしたとか。
「昔、昔のことだはさ。」
「本当のことですか?」
「さあさあ、ワシらも、枕のなかで聞いたことだから。」
と、笑うおばあちゃん達。おじいちゃん達。
「えっ?」
「早く寝ろってな。いうこと聞かなかったら神隠しに合うぞってな」
通訳してくれたお孫さんが、寝物語に聞かさた話だと言った。
「でもな、一度だけ、神戻りの人にあった。」
警官が指揮している。
リックサックがあった、水飲み場に、ペットボトルがあった。
血はついていない。教師が何人か来て、聞いている。警官が、僧侶が山を上り、谷に降りて行った。
必要なら自衛隊の出動もあるだろうと。




