アンドロメダ /25
東京に来て、毎日が検査に質問された。
マヤ、夜の食堂で愚痴っている。
多くの人達がいる食堂。
そので、人々と同じものを食べられることがうれしいのか、集まっている人達に話しかけるマヤ。
国の研究センターのひとつと、聞いたススムとマヤ。
みんな同じ白い作業服を着ている。
初日、作業服を着て、会議室に入ったススム。
ススムとマヤを調査する科学者達の前。
多くの人の中での挨拶に。
「SF映画の中に入ったみたいです。」
「あの有名な地球防衛軍の秘密基地ですか?」
言ってみんなを笑わした。
エレベーターに乗るのも、誰かがついてくる。
ドアを開けたら前に立っている。
監視される日々になれたこの頃。
いろいろとわかった。
マヤが大の注射嫌いだということも。
毎日の血液検査の為の採血。
「ハイ。刺しますね。痛いですよ。」
ナースが。
「痛い!」
「まだ、刺してませんけれど?」
「次、ススム君ね。」
ススムが座った。
「マヤ、本当に注射嫌いなんだな。」
「ウン。子供のとき、病院で注射ばかり打たれたの。」
マヤがススムを見た。
すぐに倒れた、マヤ。
ススムの採血を見て、失ったみたい。
「マヤさん。」
ベッドに寝かされたマヤ。
日の差さない地下の部屋、廊下にトレーニングルーム等々、ライトの調整をする。
数日後、マヤのママが、お姉さんと来た。
よく許してくれたものだと、ママとお姉さんに聞いた。
スマホも時計も取り上げられて、何枚もの書類にサインしたと、お姉さんが言った。
ママと会えたマヤ。
その日は、ママを離さなかった。
店を新しく入ったスタッフに任せて来たという、ママ。
マヤがいなくなって、常連さんが、毎日、来てくれると、話す、ママ。
マヤの学校の先生が、PTAも、マヤの居酒屋で、予約してくれてと、言う、ママ。
「ありがたいね。」
忙しい日々が、救われたと、ママが。
「お客さんに話したい。」
「でも、国がたいへんな事になるから。」
笑う、マヤママ。
「でも、あの日、マヤからの電話が、1番うれしかった。」
「姉さんにだけ、話したのに、内閣情報室の人達が、マヤに会える手続きをしてくれて、……。」
夕食は、別室で、4人で食べた。
セルフサービスのおかすがいくつも並んでいる中、ママは、お弁当を出した。「おでんも持って来た。」
と、タッパー3個に入ったおでん。
「ススム君も、どうですか?」
誘われた。
そして、SPのお姉さん達にも。
「おいしい。」
よろこぶマヤ。
「でしょう。」
1泊2日のママとの再会。同じ部屋で、多く話したと、言う。
ススムにも、
「マヤの子供の頃はね。」
「ママ、やめてよ!」
「いつ、娘は家に帰れるのですか?」
聞くママ。政府機関関係者は言葉を濁した。
「まずは、ふたりの安全を確認出来てからです。」
そして、ママと、お姉さんは帰った。
しかし、1ヶ月もたたないうちに、ママが来た。
研究センターのスタッフが言った。
「マヤさんとママさんの話しは有意義な話しだった。」
そして思わぬ人が、研究センターに来た。
シズクさんだ。
「お久しぶり。」
言うシズク。
彼女、神もどりの血を持っているらしい。
それで、検査に来たという。
饅頭いっぱい持って。
ススムとマヤが去った後、神議省の人達が、自衛隊員や警察、機動隊と来た。シズクのマンションにも来て、
「あの日、ママも休みで、昼、ピザ頼んだのよ。」
「で、誰が払うか、賭けした時にね、神議省の人が来て。」
「でも、お金がかかっているから、話し聞いて無くてね、結局、神議省の人が、ピザの代金を払ってくれたの。」
マヤは笑って喜んでいる。
SPは、イヤな顔して、聞いていた。
「私の家から、なにも見つからなかったのだけど。」
「本家と、分家から、見つかったの。」
「何枚もののレンズが。」
「それに、昔、祭りに使っていた、いくつもの神具が、本家の蔵から出て来たの。」
「それも盗まれたみたいで。」
「それに、いま、神の社が、大変なことになってしまって。」
話すシズク。神戻りの家が、強い力がある町で、よそ者を拒否していたという。
「神主も、神官も、紙戻りの家から、本家から選ばれていたの。」
戦後、県の歴史研究センターが、町の古墳を調べてたら、お宝が出て来た。
用途のわからない神具が、出て来たと、有名になった。
町の長老たちは反対したが、戦後に入所した人達には、関係なかった。
そして、昔、神もどり家に使われていた人々が、土地を手放して、住宅が、マンションが立った。
そのマンションに、新しい入所した人達。
市は、市税が増えたと、市長が、先導して、次々に、マンションが、ショッピングモールが作られた。
そんな中での県の古墳調査。国が古墳を管理して、県に、市に、金が入った。
神もどり家、当主、神主達は、ススムとマヤを監禁するつもりだった。
しかし、町の外から来た神職が、神議省に連絡したことで、ススムとマヤは、東京に来たという。
神議省に連絡した神職は、怒られて、首にされた。
神職は、神議省に訴えて、他の神職も、ボイコットしているという話だった。
「あたり前だろう。日本に住んでいて、紙戻りが神になったつもりか?」
笑った、ススム。
その日、神議省の人達に囲まれて、本家の敷居をくぐったと、言うシズク。
本家の人達が、座っている。巫女ふたりも。
スカートにシャツ姿のシズクとママ。
ママは、震えながら挨拶をしていた。
シズクも挨拶をする。
蔵から出てきた宝を並べる神議省の人達。
巫女ふたりが手にしても、起こらない。
他の神もどりの人達も同じだった。
シズクのママも起こらなかった。
シズクが手にしたレンズ。
「ススムさんとマヤさんのと、同じかも?」
「でも、これは、つかえませんね。」
「持ち主から離れた時に、死んでました。」
当主の話しでは、神もどり様の何人か、レンズを付けていたと言う。
その人達は、座敷牢に入れた。
亡くなって、土葬した後、何年かして、掘り起こして、レンズを外した。
ススムとマヤにも、座敷牢に閉じ込めるつもりだったと、話した。
左手には、レンズのついた金属の手ブクロを付けて廊下に立った。
目をつぶって、立っている。
目を開けたとき、光がレンズから出た。
松の巨木を雷に打たれたように、折れた。
シズクは、悲鳴を上げながら飛んで、神議省の人達に受け止められた。
「驚いた!」
あぜんとする人達の前で、言うシズク。
「頭の中に、入ってきたの。使い方。」
「使い方どおりにしたら、あんなになっちゃつた。」
シズクがもう1度、2度と、撃つ。
塀を壊して、池を爆発させた。
鯉が、血を流して死んだ。
「あぁぁ…。」
聞こえる中、シズクは、鯉を取って、
「ママ。今日のおかず。」
「いくらしたと思っているんだ。」
怒る人達が。
シズクと目が合った。
黙った神戻りの家の人達。
「あっそうだ。」
シズクは離れに入った。
老婆がひとり寝ている。
シズクの顔を見て喜ぶおばあちゃん。
神議省の人達が、本家の人達が、科学技術研究所の人達がきた。
「治せるかな?」
「なにが?」
「おばあちゃんの腰。」
言うと、シズクはレンズをおばあちゃんにかざした。
驚く人達。
柔らかい光がおばあちゃんにそそぐ。
「気持ちいいね。」
おばあちゃんが。どれぐらいたっただろうか。
シズクが手を降ろした。汗が滴り落ちる。
「おばあちゃん、立って見ようか。」
「ダメダメ。立てないよ。」
言うおばあちゃん。
シズクは腰に手を置いて、立たせた。
驚く人達。
ゆっくりと、ゆっくりと歩くおばあちゃん。
神議省の人と変わったシズク。
「本当の目的は、治療器具です。」
と話した。シズクのママが、おばあちゃんをイスに座らせた。
話しする、シズク。
「で、今、神議省の人達が、神の社を見ているの。」
「神もどり家の人達は。」
「今までどうりの仕事を続けているの。」
「ただ、私は、いじめがなくなった。」
「その分、他の人達が被害を受けているかも。」
「気をつける。」
シズクが言った。
「神の力持った気分は?」
マヤが聞いた。
「悪い気はしないわよ。」
「そうね。シズクさんがやったように、破壊できるから。」
「力を入れたのだけど、どう使うかよね。」
「ウン。神もどりのひとりが現れたときは、人々を助けたと書いてあった。」「でも、その神もどり、立場が決まった時に、王になったとき、人々を従わせるようなことをしたの。」
「暴君、魔王になったらしいは。」
「で?」
「人々に殺された。」
「だからかも。現れた神戻りの人達を、座敷牢に閉じ込めたのは。」
「俺たちも、その力を持ってしまったからな。」
「日本では、脅威だよ。」
「世界ではでしょう!」
「まだ、日本政府が守ってくれている。」
「監禁じゃなくて?」
「そうだろう。俺たちの力を使えば、木星まで行けるのだから。」
「俺たちの力を使えば、地球征服もできるだろうな。」
「じゃ、飢餓に苦しむ子供達を救えるね。」
笑うススム。
「夢があるね。」
ススムが言った。
「そして、私はヒトラーになる。」
回りの大人がススムを見た。
目をむくマヤとシズク。
「そして、民衆に、大衆の期待に答えられなくて、私は凶弾に倒れる。」
「やめて!ススム!」
ふたりが青くなった。
SPも見ている。
「誰もできないさ。地球統一なんて。」
「地球人全員の70億の希望に答えられないよ。」
ススムは言った。
「アンドロメダを持ったとして、神の力を手に入れたとしても、地球統一はできない。」
「結局、誰かを抑えつける事になる。」
「それが、反対意見になり、反対勢力になって、指導者に弓を引く事になる。」ススムが言った。
「そんなのは、やりたい奴にさせればいいんだ。」
「……。政治家に。」
SPを見て言った、ススム。




