アンドロメダ /21
艦が見せたもの。
それは一瞬のことのように思えた。
頭の中に見せられた映画。
レンズを通して、頭の中にハンマーが入れられた。
マヤは座り込んでいる。
「すごい話だは。」
言うススム。マヤは黙っている。
人間、艦は人間とともに行動した。
そして、人間を信じていた。
しかし、人間は、戻らなかった。
ススムにもある。
ひとりになった日々が。友達をなくした日々。
誰にも言えなかった。
なのに、艦は、5000万年、孤独にさいなまれて、生きていた。
マヤもおかしい。
艦が、宇宙を見せた。
マヤは、地球を見つけた。3Dの地球。2メートルの球体。ずっと座っている。宇宙ステーションを見つけては拡大して見ている。
アメリカ大陸を拡大しては、映画で見たと、はしゃぐマヤ。
今は、マヤの前に南極大陸がある。
「ねえ、氷ない大陸を見せて。」
言うマヤ。
艦は、自爆スイッチを出したままである。
自殺したら、自爆したら、どうなるか? 聞いて見た。
太陽が数時間で爆発して、銀河宇宙に穴が、数千年かかって銀河宇宙は消滅すると言う。
マヤ、テレビを見たいと言った。
地球のテレビ。
その中から、日本のテレビを、ニュース、ワイドショーを見るマヤ。
「ススム。ススムと私が映っている。」
喜ぶマヤ。マヤの横で見た。
「ウソだろう。」
いくつものテレビ番組にはLIVEの文字が出ている。
「…と言う訳で、警察としては、捜索の打ち切りを決定しました。」
ススムのお父さんと、マヤママが、退出した。
「どういうこと!」
「私、私達、生きているのよ。」
泣きじゃくる、マヤ。
「少し待っていろ。艦と話しをする。」
ススムが、壁に向かった。
「艦。お前と話しをしたい。マヤに聞かれないように。」
「お前の本体に入れてくれ。」
艦は黙っていた。
突然、輝く世界が、浮いている。
光がススムにあたる。いやすり抜けた。
「ここは。」
『艦の中心です。』
「誰だ。」
聞いたススム。
『私。』
ススムはバカな質問をしたと思った。
「ここが、艦の頭脳か?」
『ハイ。』
「そして、動力炉?」
『ハイ。』
周りを見る。光が飛んでいる。
「俺は艦の動力炉に入ったんだな。」
『いいえ。』
『映像です。』
言った艦。
「そうだな。危険だからな。」
「俺達見たいになれるか? 人間の形に。」
光が集まって、人の形になった。
「ありがとう。この方が話やすいから。」
『ありがとう?』
「艦。お前の心は解る。」
「ひとりで、5000万年いたから。」
「でも、今からお前はひとりでないぞ。」
リングを見せた。
「解るか?」
『イエ。』
「俺達にくれたものだ。」
「この艦を爆発する鍵。」
「でも、お前の知識が流れ込んでくる。」
「気持ちも。」
黙っている、艦。
「解るか?お前は俺達の子供なんだ。」
顔を上げる艦。
「お前が望んでしたことなんだぞ。」
「俺達に、リングをつけた。」
驚く艦。
「お前は、俺達を親に選んだんだ。」
「すごいことをしたんだから。」
「親は、子供の死を望まない。」
「親は、子供に生きろと願う。」
泣き出した艦。
ススムは泣きやむまで、抱いた。
背中を叩いて。
「わかったか。」
『わかった。』
艦が言った。
『パパとママ。地球に帰る。』
「いいのか。」
『ウン。そして、私も地球に行く。』
ススムは倒れた。
『パパ?ころりんした。』
「でも、お前の身体は、どれぐらいなんだ。」
『うーん。大きい。でも、小さい。』
「地球を出してくれ。」
地球が出た。マヤが見ていた地球。
「それで、お前の身体はどれぐらいなんだ。」
影が現れる。
ススム。固まった。
艦の大きさは、日本列島に匹敵した。
「地球には、来れない。」
悲しい顔をする艦。
「でも、ママの大きさなら来てもいい。」
『えっ、本体。』
『でも、頭脳が入らない。』
「で、いいんだ。お前が見たこと、聞いたこと、感じたこと、この艦に送ればいい。」
「そして、艦の考えたことを、人間の大きさのお前に教えればいいんだ。」
『わかった。』
『ママ。心配しているよ。』
『ママのところに行って。』
「ありがとう。」
言って、手を出した。
「いつも、艦と呼ばれているのか?」
『違う。名前がある。』
言うと、話した。待て。
「俺達の速さで言ってくれ。」
すごい数を言った。
「いつも、人間が言ったのか?」
『私が言った。』
「俺達には、言えないな。」
「そして、お前も、言うことは無い。」
『……。』
「今日から、お前はアンドロメダだ。」
『アンドロメダ。』
「お前の新しい名前。」
「神話に出てくる、お姫様の名前。」
「アンドロメダ姫。」
『アンドロメダ。アンドロメダ姫。』
『私、アンドロメダって言うんだ。』
『お姫様なんだ。』
喜ぶアンドロメダ。
「そして、アンドロメダの頭脳を、アンドロメダ-イブと言う。」
『アンドロメダ-イブ。』
『素敵。』
「親が子供に名前をつけるんだ。」
「アンドロメダは、俺とマヤの子供だからな。」
『ウン。パパ。』
「で、すぐにすること。船体に名前を書くこと。」
『ウン。パパ。』
「じゃあ、ママのところに戻るね。」
目を開けた。
マヤが俺を叩いている。
「大丈夫だ。」
「どれぐらい寝ていた?」
「30秒かな。ススムが倒れてすぐだった。」
「今、アンドロメダと話しをした。」
「アンドロメダ?」
「そう、この艦の名前。俺がつけた。」
黙って聞いている、マヤ。
レンズを見せた。
「これ、艦が、俺達につけたんだ。」
うなずく、マヤ。
「人間で言うと、子供が親を選んだ。」
「助けてくれと。」
「俺は助けたい。」
「自殺なんかさせたくない。」
「だから、名前を付けた。アンドロメダと。」
「マヤと俺の子供。アンドロメダだ。」
マヤはススムに抱きついた。
「素晴らしことだわ。」
『パパ、ママ、出来た。』
アンドロメダが、船体に名前を入れた。
見たススムとマヤ。
「どうしてあんなものを。」
ケンカになる。
『だって、ママ好きでしょう。』
『パパが名前をつけてくれたもの。ママのものを書きたかった。』
アニメキャラクターが、戦姫のキャラ。胸には、なにもない。
『ママ、帰りたい?』
「帰れるの!」『ママが帰りたいのなら』
レンズが輝いた。
『ママとアンドロメダ、つながっているから。』
『地球に帰っても、私、ママの子供。』
言った、アンドロメダ。




