アンドロメダ /20
ススムとマヤが行方不明、神隠しにあって10日がついた。
警察当局による、捜索の打ち切りが発表された。
多くのマスコミメディアの中、ススムのお父さんとマヤのママが挨拶をして、退場した。メディアの質問に答えずに。
その3日前、マヤママは車上の人となっていた。
自衛隊の寮から自動車の中に。
カーテンは閉まっある。
後ろからバイクの音がする。
パトカーのサイレンが聞こえた。
「上手く行きましたね。」
女性自衛隊員が言った。
先日からお世話になっている女性隊員の3人。
降りたところは、小型ジェット機が止まっていた。
席についたママ。
「大丈夫なんですか。」
「私、飛行機。初めてで。」
女性隊員が、手を握ってくれた。
飛んでは、すぐ降りた。
夜の飛行場。黒のバンが5台。
ドアの中には、ママと同じ服装の女性が座っていた。
その1台に乗った、ママ。
「ここは。」
女性隊員が笑った。
止まって、ドアが開いた。
部屋に通された、ママに、お弁当を用意してくれた隊員。
「あの…。」
「今の内に食べて下さい。」
言われるままに食べる、ママ。
隊員が見ている。
どれだけ時間が過ぎただろうか。
時計もスマホも無い。
女性隊員が呼びに来た。
会議室。講堂?に通された、ママ。
多くの自衛隊幹部が、スーツ姿の人達が座っている。
ママはカッターシャツにジーンズ。ジャケットの姿。
「こんなのでいいのですか?」
女性隊員に聞いたママ。
笑う隊員。
「あの、私なんかいては…。」
言うママ。
ママを1番前の席に案内する隊員。
横には女性隊員が座ってくれた。
横の横には、ススムのお父さんがいる。
会釈する、ママ。
誰も話をしない。トビラが開いた。
立った人達。
ママも立った。
スーツ姿の人達が、自衛隊幹部が、警察幹部が入って来た。
お辞儀に敬礼する人達。
ママも、お辞儀をした。
男の人達がススムのお父さんと話をしている。
テレビでよく見る人達だった。
店では、野球中継の後のニュースに出てくる人達。
マヤママのところに来た。
握手をするママ。
横の男性が言った。
「内閣総理大臣、……。」
ママ、腰を抜かした。手を見る。
「あの…、今、握手をしました?」
「ハイ。飛鳥さんと握手をしましたよ。」
内閣総理大臣が言った。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫でありません。」
ママが。
「内閣総理大臣さんと握手なんかして。」
涙声で話すママ。
笑う大臣。
「よろしいですか?」
と、聞く男の人。
内閣官房長官…。防衛大臣…。科学技術大臣…。と、次々に紹介されて握手をした。
「私、どこにいるのです?」
女性隊員に聞いた、ママ。
「では、」
と、発表する、科学技術研究所の所長。
「気分が悪くなったら言って下さい。」
と女性隊員が言ってくれた。
モニターに現れた穴。
映像を見て説明する人達。
「がい骨が、恐竜時代から現代にいたるまでの…。」
「恐竜と人間が戦っていて…。」
話をする人達。
「あの…。」
ママが聞いた。
「死んだ人達は、どうなるのでしょうか?」
ママの顔を見る人達。
「だって、あの穴にひとり寂しくいたのでしょう。」
ママの話を理解した人達は、家族に帰れますよと、話をした。
「よかった。」
言うママ。
科学技術研究所の人達が、困っている。
探査機の映像をモニター越しに説明する科学者達。
大きな目、大渦巻きが映った。
渦巻きに呑み込まれる、隕石。
稲妻が、炎が上がった。
木星に探査機が行ったと話をする科学者達。
なぜ木星に探査機が行った? 原理は? 聞く人達。
「あの…、木星って、どこの街ですか?」
マヤママが女性隊員に聞いた。
大臣が木星を説明するように話をした。
笑いが出る会場。
机を叩く人が。内閣総理大臣。
「あんた達、大和ススム君と、飛鳥マヤさんが行方不明になったから、マヤさんのママがゲートを開けてくれたから、今、木星を身近で見られるのだろうが。」
「それを、あんた達は、何を考えている。」
「お前達が発見したように、話して。」
怒りが収まらない、内閣総理大臣。
「飛鳥さんの解るように、きちんと、説明しなさい!」
科学者達は、汗をかいて、説明した。
木星を知ったママ。
モニターに映る目が台風だと知ったママ。
木星と地球の大きさを見たママ。
もし、自動車で行くならば。
聞いたママは話せなかった。
「で、これからが、問題の映像です。」
映像がズームインする。
「えっ?」
黒い中、白いものがふたつ。
「この映像を処理しました。」
「えっ?」
ススムとマヤが映っている。
「えっ!」
カメラを見て、手を振るふたり。
「ええっ!!」
生きている。
「生きていた。」
ママが泣いた。
他の人達は、時間が止まった。
「どういうことだ!」
科学者は言った。
「見ての通りです。」
みんなが科学者を見た。
「お前な!」
つかみかかる人も。
「私でも、説明付かないことだらけですよ!」
「アニメに、映画の話ですよ。」
「私こそ、教えて欲しいです。」
手を離す人。倒れて、咳をする科学者。
「すまない。」
あやまる人達。
「酒をくれ…。」
ススムのお父さんが言った。
総理大臣を見る自衛隊員。
「一杯だけです。」
お父さんにはウイスキーをマヤママにはワインを。
イッキに飲み込むお父さん。
ゆっくりと飲むママ。
「どうして?」
聞くお父さん。
「洞窟は、」
「すぐ、閉じました。科学者が答えた。」
「ゲートが空いても入れるかどうか。」
ゲートの奥は真空状態だと。
ススム君とマヤさんのいる場所が20キロメートル、あると。
「娘は、マヤは、」
ママが。
「全力で救い出します。」
「なぜ、あんなに遠くに。」
「わからないのです。」
「私達に、できるだけ時間を下さい。」
話す人が。
「大臣。」
うなずく大臣。
「少し休憩しようか。」
「よかった。生きていてくれて。」
その後会議は続いた。
お父さんも質問している。
御手洗にと、ママが立った。
自動販売機の前、イスに座って飲んでいる。
女性隊員たちが一緒に。
「何か、話が難しくて…。」
言うママ。
女性隊員に聞いた。
「お子さんは。」
「ふたり。女の子です。」
「ダンナも自衛隊員で、」
と話た。
「私ね。」
と話すママ。左手のやけど後を擦りながら。
「マヤは、卵焼きが得意で…。」
「私、頭悪いから…。」
「マヤの学校の宿題も見てやれなくてね。」
「ある日、私んとこで、大学の飲み会があったの。あの合コンってやつ。」「女の子。居酒屋で!って、ものすごく雰囲気が悪くて…。」
「マヤが宿題持って、店に来たの。」
「私、答えられなくて、」
「お兄さんが宿題見てくれて。」
「いつの間にか、女の子も、マヤの宿題教えてくれて…。」
「お兄さんと女の子の中が良くなってね…。」
話すママ。
「それから、マヤの勉強、お客さんが一緒にしてくれてね…。」
「先生でも無いのに?」
聞いた女性隊員。
「そうよ。先生でも無いの。でも、好きな事に夢中になる人っているでしょう。」
「歴史が好きな人って、オタクって言うのよね。」
「マヤに、話するのよ。ずっと。」
「科学の先生なんか、学校で出来ないことをカウンターでマヤとするのよ。」「学生さんなんか、数学を見てくれてね。」
「マヤ、好きになっちゃって。」
「でも、タダでは無いは。」
「生ビール、一杯おごりだから。」
「ええっ!生ビール一杯だけ?」
「安い授業料ね。」
出てきた自衛隊幹部に大臣達が、ジューススタンドでしている、井戸端会議に目をむいた。
「あの日の朝も、マヤ、お弁当を作ってくれて…。」
「私、2階の窓から見送ったの。」
「おにぎり、1つ食べて、また寝たの…。」
話すママ。
「よかった。」
「遠いところだけれど、生きていてくれて…。」
泣き出した。
「よかったですね。」
長い会議。
マヤママは疲れて別室で寝ていた。
会議が終わったと、連絡があり、ママは起こされた。
会議室に通されたママ。
内閣総理大臣。官房長官。科学技術大臣。
自衛隊幹部の皆さんが、入って来た。
ススム君のお父さんもいる。
大臣が説明する。
国際上のとか。
国のとか。
科学のとか。
ママにはわからない事だらけだった。
内閣総理大臣が、ため息をついた。
「大和ススム君と飛鳥マヤさんは、日本国籍を持つ人です。」
「日本で生まれた日本人です。」
「高野の山も、日本の国土です。」
「もし、他の国が、高野の山から木星に行くことのできるトビラを知ったら?」
「ススム君とマヤさんが、木星に行って帰って来たとわかったら?」
ママの顔が…。
「私は、日本国代表として、大和ススム君と飛鳥マヤさんを守る権利があります。」
「ハイ!」
「よろしくお願いします。」
マヤママが言った。
「わかりました。」
内閣総理大臣が。
「国家を上げて、マヤさんをおかあさんのところにお返しします。」
言う内閣総理大臣。
「で、これからのことですが。」
変わろうとする関係者を止めた、内閣総理大臣。
「日本国として、おふたりの捜索を打ち切ったと、マスコミメディアに発表します。」
ママの顔が変わった。
「そうすることで、ススム君とマヤさんを守れます。」
「発表することに同意していただけますか?」
「しかし、内閣総理大臣の名前の権限の中、日本国の科学技術の力を上げて、ススム君とマヤさんの救出いたします。」
涙が出て来た、マヤママ。
総理大臣が、ハンカチを差し出した。
「お願いいたします。」
立ち上がって、両手でマヤママの手を握り絞めた。
「わかりました。」
落ち着いた、マヤママ。
書類をススム君のお父さんとマヤママに出した。
「機密保持文書保護書類です。」
内閣総理大臣が分厚い書類を見せた。
マヤママに1枚1枚説明する内閣総理大臣。
ススム君のお父さんも、質問している。
お父さんがサインしたのを見てサインするママ。
そして、総理大臣が退席された。
3日後。会場で、ススム君のお父さんが挨拶して、退席した、お父さんとマヤママ。




