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第十二羽 戦闘?

「天の反逆者!死神アストラル!今こそ神の報いを受けるが良い。」

女天使の掛け声とともに大量の天使がアストラル目掛けて殺到してくる。

「わっ!」

「…く!」

直撃する寸前、私を抱えかわすアストラル。だが爆風が吹きつけ、少し飛ばされ後方に着地する。

着地するなり私を地面に置くと同時に何か地面に書き付ける。

素早くそして正確に一メートルほどの真円が書かれ、その中に私は置かれる。

「…いいか?ここを動くな?」

「え?あ!アストラル後ろ!」

「っち!」

天使たちの刃がアストラルの背後から迫り、アストラルは横に飛びのいた。だが、そこにはまだ私がいるわけで。

「ぎゃあ!」

天使の槍が私の頭上に迫る。が、何か透明な壁にでも当たったように、その切っ先が跳ね返された。

「え?」

その後、天使たちの攻撃が私に向かおうとするが、その度に私に届く前に高い音を立てて跳ね返される。

「っちい!結界か!?小ざかしい!」

女天使の憎憎しげな顔が間近に見えたが、アストラルが何かしたのだろう。地面に書かれた新円の範囲内に天使たちは入れず、私に手を掛けることは出来ない。

私はへたり込んだ。

「どこを見ている?お前達の相手はこちらだろう?」

アストラルの声が聞こえたかと思うと、私を取り囲む天使の後方で悲鳴が上がる。その声とともに天使たちの生垣が割れ、巨大な黒い鎌を持ったアストラルの姿が見えた。

まさに死神の鎌。下手をすれば自分すらも巻き込みそうなほど巨大な刃が、休むことなく翻り、一度に何対もの天使をなぎ倒す。

「ほらほら!どこを見ている。よそ見できるほどお前達は強くはないだろう!」

アストラルが後方から次々と天使たちを血祭りに挙げていく。私はその光景を呆然と見ていた。

私のすぐ隣にいた女天使が逆上したように吼えた。

「貴様ぁ!よくも我が同胞を!皆!かかれ!悪魔の使徒を滅ぼせ。」

女天使の声とともに天使たちが一斉にアストラルに向かう。だがその大群の切っ先はすべて死神の鎌に流され、的確に振られるその刃に吹き飛ばされる。

「どうしたぁ!所詮大群とはいえ、烏合の衆でしかないか?」

左から甲冑の天使が鋭い突きを繰り出すが、アストラルはまるで舞のような優雅な動きでそれを紙一重で交わし、返す刀と言うのか返す鎌の刃で天使を甲冑ごと切り割く。だがそれで吹き飛ばした相手の後ろから又新たな天使が現れ、アストラルに向かう。それを鎌の柄で突いて飛ばす。

アストラルの動きは天使たちのような大降りで無駄の多い動きとは違い、優雅で極小の動きで全てを処理している。力の差は歴然だ。それは素人の私でもわかる。だが。

「覚悟!」

「っ!ち!」

左からの攻撃に気を取られたアストラルの右から剣の凪が襲い、よけたが皮一枚持っていかれ、アストラルの綺麗な顔に一筋の赤い筋が浮かぶ。その剣をアストラルは素手で掴むとその勢いで、剣を持ったままの天使を放り投げた。だが、その後にも天使たちは殺到し、アストラルに休む間もない。

一人ひとりの天使たちはおそらくアストラルにとってそれほど脅威のある相手ではないだろう。だが、圧倒的に数が違う。どんなにアストラルが倒しても無尽蔵なくらいに天使たちは次々とアストラルに群がり攻撃を仕掛けてくる。見ている間にアストラルの身体につき傷は軽いが、確実に増えていった。

私はその戦いをはらはらしながら見守っていたが、あることに気付いた。

(…!?おじちゃんの花が!)

大量の天使たちとアストラルの戦いの中であれほど咲き誇っていた花が踏みにじられ無残な有様になっていた。

最早一本も無事なものがないのではないかと言うほど荒らされた地面に悲しさが込み上げる。勿論そんなことを言っている場合ではないとは思う。アストラルが殺されそうになっているのだ。だが、悲しいものは悲しい。

そのとき、私は気がついた。踏みにじられた花たちの間に一本だけ無事な花がある。鮮やかな赤い花。私がおじちゃんの死んだ場所でばら撒いた花と色が違うだが同じ種類の花だ。おじちゃんが好きだった。だが、あのままあの場においていたらいつ踏み潰されるかわからない。いくら強くてもあれほどの人の足に踏まれれば、立ち直れない。

だが、今この結界の中から出れば、まずいことくらいはいくらなんでも私にだってわかる。だが、ある天使の足が花にかすめ花の一部が舞い散るのを見て、いても経っても居られず、思わず飛び出してしまう。

(おじちゃんの花!)

たどり着くと同時に、花を土ごと引っこ抜き、そのまま胸に抱える。花を確保すると同時に結界に再び戻ろうと走り出そうとしたときに、不意に目の前に影が差した。

見上げると既に天使の一人が私の頭上に剣を翳し振り下ろそうとするのが見えた。こんな状況に不慣れな私がよけきれる距離ではなかった。私は思わず花を抱えて目を閉じてしまった。

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