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光の魔と闇の魔  作者: あんころぼたもち
第六章 運命のラストチャンス
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第二十八話

最終話です。

「私が防御壁を張って矢の雨を防ぎますね~」

 青木は詠唱の準備にはいる。これほど大規模の防御壁を張るのは困難を極める。

 特別分隊は四人で中央の防衛に努めた。

 もう全体的に最初の勢いは無くなっている。

 翼にも限界がきていた。いくら八百万の秘宝があるとはいえその力は限られている。

 刀を持つ手の力が無くなってきた。いまいち安定しない。

 それでも意地でなんとか体勢は崩さないでいた。

「明戸、聞こえるか? 足立だ」

「しっかり聞こえるよ」

「右翼が突破されそうだ。増援を頼みたい」

 こっちもこっちで手一杯だったが……。

 突破されるのはなんとしても食い止めなければいけなかったので南畑と斎藤を送った。

 また後で会おう。――そう約束して

 もう翼の後ろにいる人も少なくなってきた。

「左翼が突破されました!」

 誰が行った通信なのか分からないが左翼は突破された。

 恐らくそこからエネミーが都市部に向かうだろう。

「隊長。私に迎撃許可をくださいよ~」

「青木さん、あなたには迎撃ではなく左翼の穴埋めに行って下さい」

 それでは誰も止める人がいなくなるんじゃないですか? そう隊長に進言する。

「そうです。このままだとエネミーは都市部に多大なる被害をもたらすでしょう」

「だから行くんです。あなたが……」

 選ばれたのは翼だった。

「しかし、俺が抜けると――」

「気にしないでください。ここには私たちがいます」

「だけど俺じゃなくてもいいじゃないですか」

「君を選んだのには理由があるんですよ」

「友達を守って下さいな」

 左翼側には翼の学校があった。エネミーは一直線に中心部に向かうと思うが、途中で被害がでないとは限らない。

「これはあなただから命令するんです。さあ行って下さい」

「それでもまだ行けません!」

 特別分隊のみんなを置いていくのと学校を見捨てること。翼にとっては仲間を捨てるほうがつらかった。

「じゃあ、少し昔の話なんですがね」

 明戸隊長はたどたどしく話始めた。

「我々の存在が公になったのが最近なのを知ってますよね? 今でも我々の存在に異議を唱える者がいるぐらいですから」

「恐らく今回の作戦に参加した者のなかには自分の仕事内容を誰にも話していない人をいます。それを踏まえて聞いてください」

「ここで死んだら普通は自分が生前に何をしていたのかを詳しく知る人はいなくなります」

「前に戦死した私の部下は家族には汚れ仕事をしていると伝えてしたようで、葬式の時に仕事に関して散々けなされていました」

「本当は大義のある仕事をしていたのに誰も知らないせいでこうなってしまうんです」

 それは一理ある。けどそれは隊長が直接遺族に伝えれば良かったのではと思ってしまうのだが。

「残念ながらそれはできません。彼は生前、死んでも家族にはこの仕事のことを言わないで欲しいと言われてましたから……」

 それはとても悲しい。もし自分が同じ扱いを受けたらとても傷つく。

「けどあなたには本当のことを知る友達がいますね。たしか星見君でしたっけ?」

「なんで知っているんですか!?」

 あれは学校での話。明戸隊長が知っている訳ないのだ。

「私には君の監督責任があるのでね。たまに学校に見に行ってたんです」

 ということはその他にも色々見られていたのか……。

 しかし、

「それでもまだ行けません。今俺に必要なのは友達より仲間です!」

 翼は姿勢を変えない。決意だけは本物だった。

「全く仕方ないな……こうなったら強硬手段です」

 明戸はスタイラーに何かを打ち出し、懐から書類を取り出す。

「隊長権限でこれより君の全ての任を解きます。あなたがここにいる理由はもうありません」

 翼は目に涙を浮かべながら、

「分かりました。今までありがとうございました」

 翼はすぐさま後ろを向き学校の方に向かう。

 最後に敬礼をしようと思ったが、なんだか振り向いてはいけないように感じたのでもう後ろは向かなかった。

「轟君はもう行ってしまいました」

「ここからは彼に代わって我々が踏ん張るところです!」


 何も考えないで前に前に進んだ。

 もうなにも後悔はない。最後に隊長からもらった任務をするだけだ。

 もう一度ぐっと刀を握り直して新しい戦場へ。

「間に合ってくれ……」

 心の底から出た願いだった。

明日のエピローグで最後になります。

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