第二十七話
いきなりですが、残りは最終話とエピローグになります。
これは最終話ではありません。
まだ30分も寝てないのに叩き起こされた。
「緊急事態です。至急集まってください!」
手短な報告書によると第六師団は途中でエネミーの襲撃に逢い立ち往生しているらしい。
「第一分隊と第二分隊の現状戦力を考えるとだいぶきついな」
「敵の数が少ない右翼の人員を回すのは?」
「防衛範囲を縮めましょう」
「もう少し左翼に人員を回してくれ」
現場は混乱していた。そもそも今回は第六師団の応援が来ることを前提にたてられている。
「これを予想できなかったのは俺の責任だ」
「轟君をフルに使ってもいつまで持つか……」
もうどうすることもできなかった。
「現在の陣形を維持したまま交戦する。ここからは我慢比べだ」
あくまでも徹底的に粘る。それが出された結論だった。
その知らせを聞いた隊員たちに困惑の色は無かった。
元より覚悟を持ってここに来ている。
みんなの思いは一つだった。
最後の戦いが始まった。
翼は最初のほうにだいぶ力を使っていて動きが少し鈍っていた。
しかしそれは特別分隊がなんとかカバーしている。
南畑と斎藤が翼の護衛をすることで翼は攻撃に専念することができた。
残りは大体三万体くらいだろうか。少しは終わりが見えてきた。
敵は上級兵。気を抜けば殺される。
もうこんな戦いは早いところ終わらせたかった。
「隊長。光線が邪魔でなかなか攻められません」
「分かりましたよ。私が道を開けます。その間によろしくお願いしますね」
明戸は重力波を前方に集中させる。
光線の発射装置までの道が開ける。
翼は一瞬で発射装置に向かいまずはその足を破壊する。
必死の抵抗か発射口が光り始める。
「そう簡単には撃たせねぇーよ」
あらかじめ集めておいたエネミーの死体の山を発射口にぶちこむ。
発射口は塞がれ逃げ場を無くした膨大なエネルギーが暴発する。
己のエネルギーによって発射装置は周りを巻き込みながら爆発した。
そのまま翼は敵の中心部に突っ込む。
あと敵の数は一万。あと少し。
「総員に告ぐ。敵の数は残り一万体ほどだ」
「全員でこれを潰す」
大移動が始まった。エネミーの数には到底敵わないがそれでもまあまあの数の防衛隊員がいる。
これは好機。やつらを潰す。
全員に追い風が吹いていた。神風のように。
全員が己の勝利のために進んだ。一歩一歩前に。
今思えばここまでよくやったと思う。元々これは第六師団の応援ありきの作戦だった。
それを第六師団抜きで成功させていた。
敵部隊の十分の一の壊滅はほぼ勝利を意味していた。
けどやっぱり同じことは何度も起きるのか。どこか前にあったことに酷似していた。
前にもあった完全に勝利していたと思い込んでいた時が……。
「なんか嫌な予感がしますね。一旦我々は退きましょう」
明戸隊長には珍しく退くなんて言葉が出た。
「どうしてですか? これは好機ですよ」
「轟君。忘れてしまったのですか?」
「この展開、西武ドームの時になんか似てませんか?」
確かに言われて初めて気づいた。
今の状況はあの時似ている。
「ここは一旦身を引いて様子を見た方がいいよね~」
「俺も同感だ」
「それしかないでしょ」
この時の明戸の判断は正しかった。この時その他の隊も同じ判断をしていればあんな悲劇は起こらなかった。
防衛隊のレーダーに反応があった時、防衛隊員たちは黒い光の矢で撃ち抜かれた。
その後もひっきりなしに矢の雨が降り注ぐ。
「足立隊長! 敵から弓矢の攻撃を確認しました」
「隊員の半分が戦闘不能に陥りました」
どこから来たのか分からなかった。
ましてやエネミーが遠距離攻撃をしかけてくるとは思わなかった。
「上級兵による攻撃か?」
「上級兵に武器を持っている様子はありません」
じゃあいったいどこから? 正体不明の攻撃が一番戦場では危険視される。
「こちら司令部。ホール付近に大量の魔力反応を確認しました」
足立が望遠鏡で覗くと、ほとんど人と同じ大きさの鋼鉄の鎧を着たなにかしらがいっぱいいた。
その姿は下級兵でも上級兵でもなかった。
先の弓矢の攻撃で防衛隊は後退を余儀なくした。
「隊長の言うとおりに待っていて正解でした」
「見事に我々は敵に誘い込まれたのですよ」
すでに防衛隊は大きなダメージを受けている。
上級兵の相手をするのも限界に近かった。
翼は分身を消しスサノオを戻す。
もう後戻りはできない。
防衛隊の意地とプライドをかけた戦いの最後の幕が今上がった。




