第二十六話
カグツチの活躍もあり戦場は決して有利とは言えないが、士気も高く負けることを考えるような輩もいなくなっていた。
だが、上級兵との戦いも今回はあくまでも前菜のようなもの。
砲台からの光線をどうにかしないといけなかった。
「こちら司令部。敵の光線の射程圏内に入りました」
ここから先はいつ撃たれてもおかしくない。
しかしそれを防ぐ手段は持っていなかった。
もし光線が発射されれば避けるしかない。
「こちら司令部。敵中心部より高エネルギー反応を確認」
敵の黒い砲台には足が生えていた。
のしのしと歩きながらこちらに向きを変える。
「たぶんこちらに撃ってきますね」
明戸隊長の予想は見事に命中し、光線がこちらに向かってきた。
「主よ。我だけを使うのではない」
「我とスサノオの二つで一つなのだ」
「ここは俺におまかせっ!」
本当に信頼できるかは置いといてとりあえずスサノオを引き抜く。そして、
「モード:スサノオ」
翼は風に包まれる。
モード:カグツチのときとは違い服の色が青竹のような色になっている。
一番大きく変わったのは、
「カグツチが攻めなら俺は守りだ」
背中の部分である。カグツチのときは何本もの刀が背中に展開されたが、スサノオの場合はやけに刀幅の広い刀が二本展開されるだけだった。
これは腕の動きと連動する。
「なんだ、大したことないじゃん」
「大したことないってなんだよ~」
「一度使ってからそういうセリフ言えよ!」
そうこうしている間にも光線は近づいてくる。
咄嗟に翼は目の前でバツ印を作るように腕を交差させる。
すると、背中にあった刀が翼の顔の前に移動してその光線を受け止める。
「俺のモードは著しく防御力を上げるぜ」
あの絶大な威力である光線を受け止めることができたのはかなり大きい。
なにせ今まではその手段はなかったのだから。
翼が先頭に立ち光線からみんなを守ればこの戦いにも光が見える。
「けど俺が前線で戦ってエネミーを倒さないと数は減らないし……」
翼はカグツチの力だけでも三万体を倒していた。
おそらくその他の隊員の撃破数をたしてもそれには届かないだろう。
一体どうすれば――
「そんなのは簡単である」
「主が分身を使えばよい」
分身? その手があった。
「但し注意が必要っす。俺とカグツチは二本で一本」
「あまり離れすぎると力は出ない」
「分かったありがとう」
翼は自分そっくりの分身を出す。
「俺が守り? 本当は攻める方が好きだけど」
文句を言いながらも作戦には乗ってくれた。
翼はすぐに明戸隊長たちがいる前線部隊に合流する。
「翼が加わってくれると正直ありがたい」
「こっちはもう手いっぱいなんだよね~」
「私たちがこいつらの動きを止める。その間に轟は斬れ」
南畑はエネミーたちを一瞬で吹き飛ばすと、斎藤が罠を発動させて動きを鈍らせる。
その間に翼がカグツチで斬って斬って斬りまくる。
緑色の血が辺りから飛び散る。
青木は得意の氷魔法でどんどん氷の中にエネミーを閉じ込める。
この時一番ヤバかったのは明戸隊長だった。
隊長の固有能力は重力操作だった。
エネミーがいるところだけ重力を強くして地面にひれ伏せさせている。
分身なんかよりも全然すごい能力なんだと思うが……。
使えば使うほど12本の刀を操るのにも慣れてきた。
攻撃の手が12本あるだけで効率は十二倍いや、二十倍くらいは上がっている。
翼は刀を操っているだけではない。
翼は今までの戦闘スタイルだけでも一般隊員よりも優れている。
特別分隊が集まる先頭部分の状況はとても良かった。
ただ、少しばかりか左右の守りが弱くなってきた。
「第二分隊はまだ統率がとれてますが第一分隊の統率が少し乱れてきています」
「それは前から気づいてましたよ、轟君」
「そろそろあいつが来る頃だと思うんですけどね」
後方から光の速さのように飛んできた。
「明戸。これからは俺も戦線に加わる」
「やっぱり来たでしょ?」
「左右は俺たちに任せろ。一匹たりとも都市部には近づけない」
「了解、こっちは敵の殲滅に努めます」
戦況は好調といってもこちらもだいぶ被害が出ている。
一刻も早い応援が必要だった。
「司令部。こちら足立。第六師団はどうした」
「こちら司令部。現在埼玉県にはいなす」
「あと30分ほどです」
30分。出来ない数字ではないが少々厳しい。
それでもやるより他は無かった。
「全隊に緊急通信。あと30分で第六師団の応援が到着する予定だ。それまで頑張ってくれ」
全体の士気が上がる。
足立が戦線に加わっただけで全然違う。
最初は数で圧倒されていたが、既にエネミーの数は半分を切っていた。
もう半分やけくそになったのか一斉に攻めてきた。
これは意外と痛い。今回の戦闘配置は都市部にエネミーを行かせないために長く薄くなっている。
一斉に襲いかかられれば突破されてしまうかもしれない。
しかしその危険性はすぐに無くなる。
やつらは真っ正面から攻めてきた。
セオリー通りに来るならこっちもセオリー通りに迎え撃つだけ。
そこはさすがの第一分隊。なんなくこなしていく。
その間、特別分隊は後ろに下がり休んだ。
「皆さんお疲れ様です。このまま第六師団が来ればもう大丈夫でしょう」
ここまでが特別分隊の任務だった。
敵の数を減らした。応援が来るまでの時間を稼いだ。
これ以上の活躍はない。
翼は前にやった出撃会のことを思い出した。
またあんな風に皆でワイワイやりたいな。
その願いもこれが終われば叶えることが出来る。
「我々は念のためにここに残りますがもう出撃することはないでしょう」
「なにせあそこには足立がいますからね」
「ゆっくりと身体を休ませてください」
特別分隊は滅多にとれない休息をとることにした。
今になって思ったのだが、西武ドームを奪還したときから働きづめだった。
その疲れがどっときたのだろう。
すぐに夢の世界に入ってしまった。




