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光の魔と闇の魔  作者: あんころぼたもち
第一章 平和の夜明け
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第二話

全力疾走のかいあってか始業時間の5分前に学校に着いた。


 翼が通うのは埼玉県にある立刀高校。男子校であるがゆえに、青春の大事な部分が少し? 欠如しているようなしてないような。

 学校を取り囲む桜が有名で、春には学校への坂道が桜色の絨毯のように花びらで埋まる。

今はまだその桜が咲き誇り、春風が花びらたちを踊らせている。


 翼の教室である1年2組に行くと、もうクラスメイトが7割方来ていた。


「よう!今日もギリギリだな、翼」


 今話しかけてきた彼は翼の前の席の星見友則。明るいやつでなかなか話も合う、高校生活で最初にできた友達だった。


「今朝のニュース見たかお前?」


「見たけど」


「あれ見てよくそんなにのんびりと学校に来れるよな~」


「いやいや、今それ関係ないっしょ」


「だな」


 こんな感じで星見が翼のギリギリ登校に釘をさす下らない会話からいつもの1日が始まる。

 始業時間になり教室上部のスピーカーからチャイムの音が鳴り響く。

 ガラガラガラと教室の扉を開けながら、担任の先生が入ってくる。


「起立、礼」


 号令係が大きな声を上げて授業の始まりを告げる。


「みんな、おはよう。本日は前にも言ったとおり総合学習として国防を取り扱います。」


 ここ立刀高校では4月の初めの方に総合学習の一環として、国防について学ぶという世にも珍しい学校だ。


「まずは先日配った資料の最初をみてくれ。そこにざっとした歴史がのってる。1998年までの歴史は他の授業で扱うので今回はそれ以降の説明をしようと思う。今朝のニュース見たやつ何人いる?」


 するとクラスの半分以上の人が手を挙げた。もちろんそのなかに翼も含まれている。


「2000年以前は国を守るのは自衛隊の仕事だったんだ。だけどエネミーが地球に侵攻した際、自衛隊の装備ではエネミーを倒すことはできなかったらしい」


「先生何でですか?」


「俺もあまり詳しいことは知らないが、エネミーってやつらは皮膚がとても硬くて攻撃が通らないらしい。それにやつらは空中を移動するらしいからな。そこで自衛隊は奥の手を使ったんだ。知ってるやついるか?」


「はい! 自衛隊特殊能力部隊です」


 教室は感心の声で満ちた。


「ご名答、そのとおりだ。特殊能力部隊はその名前のとおり特別な能力を隊員が持っていたとされている。そしてその後にあらゆる事態に対し防衛出動ができるようになった防衛法が制定されて、それと同時期に特殊能力部隊が独立してある組織になった。皆も知ってると思うが今や国防に携わる第二の組織として知られている水準防衛隊だ。配った資料の3ページを見てもらいたい」


 そこには水準防衛隊のエンブレムや防衛隊の前身である特殊能力部隊の写真が載っていた。

特殊能力部隊の写真は白黒写真で、ほかの写真がカラーであることで、より一層歴史があることを思わせる。


「水準防衛隊はエネミーを専門とした組織で、外部からの侵略行為等は自衛隊と別れている。自衛隊は政府の機関だけど、水準防衛隊は独立機関なんだ」


「先生! 防衛隊はどうやってエネミーと戦っているのですか? 詳しく教えてください」


 先生は少し言葉をつまらせてから、


「これもあまり詳しいことはわかっていないが、主に日本刀と不思議な能力を使うそうだ。先生も見たことはないけど」


 その場にいた全員が自衛隊の戦車、戦闘機でも敵わなかったエネミーにそんな武器だけで戦っているのかと耳を疑った。そもそも不思議な能力ってなんだと。


 翼を除いては。


「最後に、エネミーの襲撃があった際の避難方法だ。最近ニュースでもあるようにエネミーの襲撃が活発化しているからな。避難警報がなったら近くの防衛隊指定のシェルターに逃げろ。そこが一番安全だからな。ちなみに学校の体育館は指定のシェルターになってるのは分かってるよな。警報がなったらすぐに体育館に逃げるんだぞ! 分かったか?」


「そんなこと言ってもここには来ないっしょ。エネミーなんて」


「それなー」


「まじ同感」


 教室がざわざわとする。しかしそれは終業のチャイムによって遮られた。

 そのあとは至って普通の授業が続き、何事もなく放課後を迎えた。

 帰ろうと席を立ち、教室から出ようとすると、後ろから声がかかった。


「これお前のだろ? なんか普通のスマホと形が違うんだな」


 ポケットから落ちたのだろう。彼の手ひらには翼の携帯端末が拾ってあった。


「ありがとう。次からは気を付けるよ」


 翼は彼から端末を受け取った。



 立刀高校は部活動が盛んなことでも有名である。終業のチャイムが鳴ると同時に、多くの生徒が部活に向けて移動する。それも走って。

 なかには部活には参加していない生徒もいる。翼もその中の1人だ。

 たまに身長が高いせいかバレー部やバスケ部に勧誘されるが、やるべきことがあるため断っている。

 やってる暇なんてないんでね。

 春といえども学ランを着ていると少々暑い。翼は一度家に帰り着替える。

 制服を脱ぐことで高校生という身分から解放される。

 学生はとても疲れる。勉強をしていて何が楽しいのか俺には分からない。これも仕事のためなのだからしかたないけど。

 高校生という肩書きを取り払った翼は学校に行く道とは反対の方向へと歩いていく。

 翼も普通の高校生だったら、今頃みんなと一緒に部活をやっていたに違いないだろう。だけど翼にはやらなきゃいけないことがある。どうしても。

 その仕事は学校が終わってから始まる。いや、朝起きたときから始まっているともいえるか。

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