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光の魔と闇の魔  作者: あんころぼたもち
第四章 八百万の秘宝
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第十八話

 あれから5日後に申請が通り、出発にこぎ着けることが出来た。

「九頭竜の岩までは全員で行きますが、そこから先は轟君一人になります。いいですか?」

 はい! それについてはかなり前から心得ております!

 声には出さないが心の中で返事をする。

 さいたま市支部から九頭竜の頭まで二時間ほどかかる。

 その間も翼は装備の確認を怠らない。

 事欠くして九頭竜の頭に着いた。

「なんか神秘的だねぇ~」

 青木が言うとおり確かに神秘的ではある。

 遠くから見ると九つの竜の頭に見えるが近くで見ると所詮ただの岩。

 こんなところに秘宝があるなんて誰も思わない。

 今日は明戸隊長と青木が非番なので一緒に来てもらった。

「竜の逆鱗と言えば顎の下のことですね」

「けど、どの頭のことなんでしょう?」

 紅のメッセージにはどの頭の逆鱗とは書かれていない。

 紅の戦士が仕掛けたことなのだから、きっと違う頭を選んだら嫌なことが起きる予感が……。

「これは選ばれし者の轟君が選ぶべきですよね」

「やっぱりそうですよね~。翼君、早く!早く!!」

 完全に押し付けられた形で任されたが、翼はここに来たときから何となく右から3番目の頭だろうと思っていた。

 そこの逆鱗に触れる。

 翼が触れた瞬間、竜の顎の下が白く輝き始める。

 光が無くなったときには今までのような岩ではなく、光沢に満ちた銅像に変わっていた。

『汝、答えよ!』

「今誰かしゃべりました?」

 誰も話していないと言う。

『汝、前を向け! 我だ』

 まさかとは思っていたが、竜の銅像がしゃべっている。

『やっと我の声が届いたか。我は秘宝の守り手。ここから先は選ばれし者のみ行ける』

 ここからは翼一人の試練になる。

『汝ここを通れ。その先に本当の試練が待っている』

 銅像の首もとが人一人が通れるほどの大きさに開く。

「ここから先は轟君の役目です。頑張ってください!」

「私たちはここで応援してるから~」

「では行ってきます!」


 中に入るが天井が低く、体を屈めながら歩かないといけない。

「明かりがないのが辛いな」

 探り探りに四方に手を伸ばす。

 どうやら後ろは壁で左右もさほど広くない。

 前はいくら手を伸ばしても何にも触れないが。

「とりあえず前に進むか……」

 確実に一歩一歩足を進める。

 スタイラーの明かりを頼りにしてはいるが、まったく先が見えない。

「少し先から天井が低くなってるな」

 翼は天井に頭をぶつけないように明かりを天井に向けながら先を進んでいく。

 翼は後に後悔した、なんで足元に注意しなかったのだと。

 天井が低くなっているのではなく、そこから先が下り坂になっているだけだった。

 だが、そんなことに翼は気付かず足を進める。

 案の定、下り坂にはまり滑り落ちていく。

 途中からほぼ直滑降のようになり開けた場所に落ちる。

「痛ってぇ~」

 見事にしりもちをついた体勢で着地した。

 お尻を擦りながら立ち上がる。

 周りは本当に暗くてよく見えない。

 また前に進む。

 すると、壁にかけられた松明に次々と火がつく。

 ようやく部屋の全貌が見えてきた。

 部屋には台座に置かれた二本の日本刀があるのみ。

「君は誰だい?」

 前の方から声がする。自分以外誰もいないのに……。

「返事がないなー」

 誰だ!?

「我たちは今、君の前にいる」

 そんなこと言われても、前にあるのは台座に置かれた二本の刀だけ。

「だからここだよ、ここ!」

 誰も分からないだろう。刀が喋るなんて……。

「初めまして。我はカグツチ」

「そして俺はスサノオ。よろしく!」

「早速だが君に試練を与える」

「俺たちは分身能力を持つ人にしかついていかねぇ。前の主のように」

 翼は分身能力を持っていることは既に分かっているのだが、未だに上手く扱えていない。

 目をつむり心の中に願う。

 頼む分身よ……出て来てくれ……。

「俺をお呼びか? いいぜ、出て来てやるよ!」

 目を開けた時には隣にもう一人自分がいた。

 分身自体見るのは初めてだが、それにしても似ている。

 違うのは口調と性格くらい。

「君はやはり選ばれし者だったか」

「俺たちの新しい主として暖かく歓迎するよ」

「その前に契約をしなければいけない。二人で一つ一つずつ我々を持ってくれ」

 分身の方がスサノオを、自分がカグツチを持つ。

 すると今まで土やほこりを被っていた刀から脱皮をするように土やほこりが剥がれる。

 中からは普通の刀とは違い刀身以外は装飾が施されている。

「これが我々の本当の姿だ」

 それはまるで王族が手にするような宝のように光輝き、神々しい。

「改めて紹介しよう。我の名はカグツチ。火の神だ」

「そして俺がスサノオ。風の神だ」

 2つの刀の見た目はさほど変わりが無いが、カグツチのほうが柄が赤い。対してスサノオの柄は緑色だ。

「もう分身の方は消してもいいぞ」

 翼が心の中で消えろと念じると目の前から分身の自分が消えた。

「さあ我々を腰に差すんだ」

 元々腰に4本の刀を差していた翼にとって2本差す余裕は無かったが、強引に差し込んだ。

「こうすると前の主を思い出す」

「あの頃は楽しかったな~」

 どうやら二人も喜んでくれたようだ。

 さっき落ちてきた坂道を今度は登らなければならない。

 両手を突っ張り棒のようにして体を支え少しずつ登っていく。

 その途中で、

「なんで今まで誰にも見つかんなかったんだ?」

「それは前の主が我々が悪いやつの手に渡らぬように選ばれた者しかこの場所に入れないようにしたからだ」

「それにしても今まで長かった。我々は退屈すぎて死にそうだった」

「俺たちは次の主がいつ来るか楽しみだったんだぜぇ?」

「もう何十年と外に出てないからな」

 少々この話し声が気になるところだが、これはこれで楽しい。

 まだこの秘宝たちがどのような力を秘めているのかは分からないが、きっと人類の救いになるのは間違いなかった。

 少し先に明かりが見える。

「やっと帰って来た~」

「おつかれさまでした」

「ただいま戻りました!」

 上に上がる頃には日が傾き始めていた。

「この方たちが君の上官たちか」

「なかなか若いっすねぇ~」

「そうですよ」

「翼君、今誰に返事したの?」

「いや、今こいつが……」

「言うのを忘れていたが、我々はテレパシーを使って君の頭に直接話しかけてる訳であって我々の声は他の者には聞こえぬのだよ」

 それは先に言って欲しかった。

「いえ、なんでもないです」

「ではもう暗くなるし帰りましょう」

「明日から秘宝の能力をジャンジャン解析しちゃうよ~」

 翼たちが車に戻るときには九頭竜の頭は銅像から岩に戻っていた。

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