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光の魔と闇の魔  作者: あんころぼたもち
第四章 八百万の秘宝
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第十七話

 西武ドームが占拠されたことは全国の防衛隊に伝わった。

 本部では足立と明戸を召集し、緊急会議が開かれた。

「西武ドームを奪われるとは何をやっているんだ!!」

 それは質問という名の責任追求だった。

 西武ドームはエネミーの本拠地と東京の真ん中に位置する。

 エネミーがホールを開ける距離は今までは限られていた。

 だから東京を直接攻めることは無かった。

 だが西武ドームからホールを開いたならば、東京に直接エネミーが送られてしまう。

 それを防ぐために埼玉県の防衛は重要視されていた。

「もちろん君たちにも責任はある。それは後々考えなければいけない」

 その旨を伝えたのはこの防衛隊の頂点に立つ総隊長だった。

「戦闘前に明戸の隊員から妙なものを見たっていう報告があったらしいな?」

「なにやら黒い物体だったと聞きますね」

 そこから光線が出たという推測がされている。

「それに今までにない動きもあったそうだな」

 エネミーは真ん中を攻めてくる。

 これは防衛隊ではセオリーであり、これを元に作戦を作ってきた。

 今回もそれ通りに隊員を配置していたのだが、左右から攻め込まれたことで一気に形勢が逆転した。

「今回の最も大きな敗因はエネミーの進化か……」

 防衛隊が大砲を使用したように、エネミーもまた新しい攻撃方法を使ってきた。

「今回得たデータを元に敵戦力を解析した後、奪還作戦を実行する。各部隊に負傷者も多いと思うが準備を進めておくように」


 拠点を奪還したいのは特別分隊も同じだった。

 すでに南畑はなにやら地図を取りだし、作戦を作っている。

 あとの三人はとりあえずぼけっとしていた。

「実際に何をしようと考えても何も出ないですよね?」

 翼は今すぐにも溶けそうなくらいに机に倒れ込んでいる。

 あれ以来特別分隊は特に目立つ仕事が来ていない。

 あるのは書庫の整理の仕事だけ。

「書庫の整理をしたいんですが。青木さん、手伝ってくれませんか?」

 青木は最初は渋っていたが、自分もやることがないのか手伝ってくれた。


「防衛隊の書庫ってこんなに広いんですね」

 支部の書庫とはいえ、かなりの量の書物がある。

 その大半は古い本だらけ。

 ほとんどがほこりを被っている。

「こっちから右は閲覧禁止だから、左側の整理ね」

 何度もここを利用している青木にとっては家のようなものだ。

「正直言って書庫はなんか堅苦しくて入ったことないんですよね」

「翼君はあまり本を読まない派?」

「実をいうとあまり……」

「現代っ子だねぇ~」

 そう言いながらも二人は段々と仕事をこなす。

 翼が最後の棚に取りかかったときには青木はもう整理を終わらせていた。

 最後の棚は比較的に綺麗に揃っていたのであまり手を加える必要はないと思ったが、

「あ! あそこだけ変だな」

 他が綺麗に整っているので一つだけ上に積まれた本が妙に目立つ。

 翼は背伸びをして取ろうとするが微妙に届かない。

 何とかジャンプをしたら指先には触れたが、上手く掴めず落としてしまった。

 その時、本に挟まっていた一枚の紙が出てきた。

「なんだこれ?」

 翼は本の方を先に取った。

 その表紙には何も書かれてなかった。

 紙の方を取る。さっきまで白紙だった紙に文字が浮かび上がる。

「青木さん! 変な本があるんですけど?」

 書庫に詳しい青木に聞いたが、

「こんなの見たことないね~」

 そして、青木に紙を渡す。

「翼君、何も書いてないよ」

 嘘だろと思い青木の手にある紙を見るが、そこに文字は無かった。

 再び翼の手に戻ると文字が浮かんできた。

「とりあえず文字を読もう!」


 拝啓

 これを読んでいるあなたは選ばれし者の資格を持っている。

 そんなあなたにある兄弟のことを託したい。

 彼らの気性は少々荒いがこれを読んでいるとあなたなら大丈夫なはず。

 彼らは九つの頭の竜の逆鱗に住んでいる。彼らのことを頼んだ!

 紅の戦士より


「青木さん、これって……」

「今すぐに隊長たちを集めて分隊会議やるよ!!」

 翼が手を放すと文字が消えてしまうのでコピーをとることはできないが、とりあえず他の紙に文字を写すことは出来た。

 話し合う間もなく全員の見解は一致していた。

「これは紅のメッセージと呼ばれるものだね」

 紅のメッセージ。それは紅の戦士たちが後世に向けて残した遺言のようなものなのだが、いまだにその全ては解読されていない。

 さらにまだ今回のように発見されていないものもある。

「紅の戦士、兄弟。一つだけ心あたりがある」

「俺も噂だけでは聞いたことありますね」

「おそらく八百万の秘宝のことだろう」

 八百万の秘宝? 翼の頭は聞いたことのない言葉で埋め尽くされた。

「八百万の秘宝はまだ数えきれるほどしか発見されてないんだよ~」

「秘宝には神の力が宿ると言われてますからね」

 簡単に言えばものすごいものらしい。

「西武ドームの奪還のためには戦力増強として手にいれたいですけどね」

「轟が持たない限り文字が出ないことを踏まえて考えると、全員で探しに行くことはできない」

「けど目的地に着くまではサポートができるよね~」

 ここから特別分隊の秘宝探索が始まる。

 普通こういうのは探すのだけで何年もかかるものなのだが……。

「九つの頭の竜の逆鱗って言ったら秩父の方にある九頭竜の岩のことですよね?」

 九頭竜の岩は秩父にある岩で、その見た目が九つの竜の頭に見えることからそう言われている。

「けどそこってエネミーの生息圏の近くじゃなかったっけ?」

 埼玉県の最も西に位置する秩父市はエネミーの生息圏にとても近く、山奥は特定危険区域に指定されている。

 普通に行くことはできない。

「それは私の方で申請しときますから心配無用です」

 隊長が申請するなら通るだろう。

「申請が通り次第、九頭竜の岩に向かいます」

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