28話 神々の祝福
今回こそは短めの話を、と意気込んでいたらそんなに短くなりませんでした。
読んでいただければ幸いです。
「えっと・・・待ち合わせ場所はここでいいんだよね。」
「やっぱりまだ誰も来てないわね。」
今日はお仕事の日。
私とアンジェ、アデル、キトゥン、ヒューゴの5人でパーティを組み、A級クエストに挑みます。私にとっては初めての高難易度クエスト。昨日の夜からドキドキと不安で眠れなかった。
結果、集合時間の1時間以上も前に着いてしまった。
「まったく、緊張しすぎで時計見間違えるなんて。」
「アンジェだってソワソワしてたくせに。」
「き、気のせいよ・・・。」
シェブールに来たばかりの私なら怖くて嫌がっただろうけど、今は少し楽しみでもある。これからどんな冒険が私たちを待っているんだろう・・・だなんて、ガラにもない漫画の主人公みたいなことを思ってみたり。
「ねぇ地味子、みんな来るまで暇だしあそこ行ってみない?」
「あそこって・・・?」
アンジェの指差す先には多くの人が並び行列を作っていた。そのほとんどが私と同い年くらいの若い女の子ばかり。
キラキラとしたリア充オーラで溢れかえっている。
「・・・私、ああいうのちょっと苦手かも。」
「大丈夫よ、ただのスイーツ屋さんだから。今シェブール全土に展開する大人気のスイーツが食べられるらしいわよ。」
「でも、そんなお金無いよ?」
「心配ご無用!」
アンジェは1枚のビラを取り出した。新作スイーツ20人前30分以内完食でタダ、と書いてある。あー、そういうこと。
「これなら無料で美味しいスイーツが山盛り食べられるわ!」
「完食できることは前提なんだね・・・まあ、私も食べたいけど。」
甘い物にはちょっと弱い。私だって一応女子ですから。
「相席になってしまいますが、よろしいですか?」
私は店員のその一言に大きく激しく動揺した。相席? それって見ず知らずの他人と同じ席で食事を共にするってこと? 無理無理。混んでない日を見つけて出直すしかなさそう。
「別に構わないわよ。」
このクソ貧乳妖精が・・・!!
私の意志は完全に無視され、私たちは奥の席に通された。4人掛けのテーブルには既に1人の女の子が座っていて、美味しそうにケーキらしきスイーツを口に運んでいる。私たちに気付くと食べるのをやめ、軽く会釈をしてくれた。
少し垂れ目気味の大人しそうな女の子。
あれ? この子どこかで・・・。
「前の席、失礼するわね。」
「はい、大丈夫ですよ。」
私は女の子と向かい合う形になった。既視感のあるその顔をじっと見つめてみる。
いや、知らない顔だ。気のせいだったみたい。
「あの・・・どうかしましたか?」
「あっ、い、いえ・・・なんでもないです・・・!」
目が合い思わず逸らしてしまう。やっぱり初対面の人は厳しい・・・。人見知りは未だ直ってないようだ。
「何してるの地味子? ほら、来たわよ。」
「うわー、これはすごい。ていうかいつの間に注文してたの?」
女の子のテーブルさえも浸食した20人前ものケーキは圧巻だった。これを30分かあ・・・まだ午前中だというのに、本当に大丈夫なのかな。
「それ本当に2人で食べるんですか・・・?」
「もちろんよ。私1人で十分だけど、しょうがないから地味子にも少し分けてあげようと思ってね。」
「食いしん坊さんなんですね。」
女の子は上品に口元に手を添え、クスッと笑った。
さすがアンジェ、コミュニケーション能力が高い。
「食いしん坊さんじゃないわ、アンジェよ。」
「あ、えっと、地味子です。」
「アンジェさんに地味子さんですね。私はウェンディフラウといいます。長いのでフラウと呼んでください。」
フラウと名乗る女の子のその動作1つ1つはとても丁寧で可愛らしい。
「フラウはどこに・・・もぐもぐ、住んでるの? むしゃ・・・この近く?」
「こら、食べながら喋らないの。」
「いえ、近くではないです。もっと遠くですね。」
「ふぅん、じゃあ今日はわざわざスイーツを食べにここまで来たの?」
「はい、好きなんです。」
アンジェとフラウは自然に会話を進めている。これぞ忌まわしき3人グループあるあるの1つ、『2:1になる』。それは異世界でも変わらない。1の方は必ずと言っていいほど私。
ぼっちの過去を思い出して寂しくなった私はヤケ食いを始める。
「ふふ、アンジェさんは面白い人ですね。」
「それほどでもないわよ~。ちょっと地味子、黙ってばかりいないであんたも喋り・・・って超食べてる?!」
「わあ、地味子さんも食いしん坊さんですか?」
調子に乗って20個のうち半分を平らげてしまった。食べ過ぎてちょっと気持ち悪い・・・。
「地味子さん大丈夫ですか? 背中さすってあげます。」
「うぷ・・ありがとうございます・・・。」
「小食なのに無理するからよ・・・完食できたからいいけど。」
「でも、いい食べっぷりでしたよ。」
「あはは・・・それはどうも。」
フラウは優しく背中をさすりながら、ニコリと笑った。体調が優れない今の私にとって、この可愛らしい笑顔は癒しかも・・・。
私はその笑顔をずっと見ていたくなるような衝動に駆られる。
しかし、そう上手くはいかなかった。
「あっ・・・すみません、もう行かなきゃ! 人を待たせてるんです!」
「へっ? そ、そうなの・・・?」
慌てふためきながら鞄の中をゴソゴソと漁っている。何かを探しているようだ。
「お、お会計・・・あれ? お財布が無い・・・?!」
「もしかして、落としちゃったの?」
「かもしれないです・・・どうしよう・・・。」
「じゃあ私たちが立て替えといてあげるわよ。ね、地味子?」
また勝手に決めて・・・。まあ、別にいいけど。
「そ、そんなの申し訳ないです!」
「ううん、大丈夫だよ。その代わり、いつか絶対返してよね。」
「・・・このご恩は一生忘れません!!」
「あ、いや、そんな大したことじゃないと思う・・・。」
「では失礼します!!」
まるでハヤブサのように忽然と去ってしまった。
「な、なんだったのかしら・・・。」
「さあ・・・。」
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2人と別れた少女は人の多い大通りではなく、人気の無い路地裏へと入って行った。しばらく歩くと日差しは完全に遮られ、埃っぽく薄暗い空間が現れる。
そこにいたのは少女の2まわり、3まわりは大きい巨漢たち。いずれも黒いフードに身を包み、静かに佇んでいる。
少女の姿を確認すると、一斉に片膝を付き礼をした。
「ごめんなさい、付き合わせてしまって。」
「いえ、滅相もございません。」
「テスラドは怒っていましたか?」
「心配されてましたよ。人間で溢れた町に1人で行くなんて、と。」
相変わらず心配性で、優しい。少女はそうボソリと呟いた。
テスラドに借りたお財布落としちゃった、どうしよう・・・謝れば許してくれるかな。
少女は心配性で優しい友人を思い浮かべ、心の中でごめんなさいと謝罪した。
「それにしても驚きました。まさかあのお祭りに参加していた女の子と相席になるなんて・・・咄嗟に記憶を改竄したのでバレませんでしたが。」
「この近くに奴らが・・・では、しばらく町には出歩かないおつもりですか?」
「いえ、それこそ有り得ません。」
上品に可愛らしく、クスッと笑う。
「また、無茶なことを言うかもしれません。今度私がわがままを言ったら、また付き合ってくれますか?」
「当然です。我々はそのために存在しているのです。」
「七魔戒将が長、『神々の祝福』ウェンディフラウ様のために。」
寒くなってきましたが、暖かい部屋でぼちぼち書いていきます。
また読んでくださると感謝感激です。




