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地味子の地味な異世界転移  作者: 汐とまと
第1部
28/75

28話 神々の祝福

今回こそは短めの話を、と意気込んでいたらそんなに短くなりませんでした。

読んでいただければ幸いです。

「えっと・・・待ち合わせ場所はここでいいんだよね。」

「やっぱりまだ誰も来てないわね。」


今日はお仕事の日。

私とアンジェ、アデル、キトゥン、ヒューゴの5人でパーティを組み、A級クエストに挑みます。私にとっては初めての高難易度クエスト。昨日の夜からドキドキと不安で眠れなかった。


結果、集合時間の1時間以上も前に着いてしまった。


「まったく、緊張しすぎで時計見間違えるなんて。」

「アンジェだってソワソワしてたくせに。」

「き、気のせいよ・・・。」


シェブールに来たばかりの私なら怖くて嫌がっただろうけど、今は少し楽しみでもある。これからどんな冒険が私たちを待っているんだろう・・・だなんて、ガラにもない漫画の主人公みたいなことを思ってみたり。


「ねぇ地味子、みんな来るまで暇だしあそこ行ってみない?」

「あそこって・・・?」


アンジェの指差す先には多くの人が並び行列を作っていた。そのほとんどが私と同い年くらいの若い女の子ばかり。

キラキラとしたリア充オーラで溢れかえっている。


「・・・私、ああいうのちょっと苦手かも。」

「大丈夫よ、ただのスイーツ屋さんだから。今シェブール全土に展開する大人気のスイーツが食べられるらしいわよ。」

「でも、そんなお金無いよ?」

「心配ご無用!」


アンジェは1枚のビラを取り出した。新作スイーツ20人前30分以内完食でタダ、と書いてある。あー、そういうこと。


「これなら無料で美味しいスイーツが山盛り食べられるわ!」

「完食できることは前提なんだね・・・まあ、私も食べたいけど。」


甘い物にはちょっと弱い。私だって一応女子ですから。



「相席になってしまいますが、よろしいですか?」


私は店員のその一言に大きく激しく動揺した。相席? それって見ず知らずの他人と同じ席で食事を共にするってこと? 無理無理。混んでない日を見つけて出直すしかなさそう。


「別に構わないわよ。」


このクソ貧乳妖精が・・・!!


私の意志は完全に無視され、私たちは奥の席に通された。4人掛けのテーブルには既に1人の女の子が座っていて、美味しそうにケーキらしきスイーツを口に運んでいる。私たちに気付くと食べるのをやめ、軽く会釈をしてくれた。


少し垂れ目気味の大人しそうな女の子。

あれ? この子どこかで・・・。


「前の席、失礼するわね。」

「はい、大丈夫ですよ。」


私は女の子と向かい合う形になった。既視感のあるその顔をじっと見つめてみる。

いや、知らない顔だ。気のせいだったみたい。


「あの・・・どうかしましたか?」

「あっ、い、いえ・・・なんでもないです・・・!」


目が合い思わず逸らしてしまう。やっぱり初対面の人は厳しい・・・。人見知りは未だ直ってないようだ。


「何してるの地味子? ほら、来たわよ。」

「うわー、これはすごい。ていうかいつの間に注文してたの?」


女の子のテーブルさえも浸食した20人前ものケーキは圧巻だった。これを30分かあ・・・まだ午前中だというのに、本当に大丈夫なのかな。


「それ本当に2人で食べるんですか・・・?」

「もちろんよ。私1人で十分だけど、しょうがないから地味子にも少し分けてあげようと思ってね。」

「食いしん坊さんなんですね。」


女の子は上品に口元に手を添え、クスッと笑った。

さすがアンジェ、コミュニケーション能力が高い。


「食いしん坊さんじゃないわ、アンジェよ。」

「あ、えっと、地味子です。」

「アンジェさんに地味子さんですね。私はウェンディフラウといいます。長いのでフラウと呼んでください。」


フラウと名乗る女の子のその動作1つ1つはとても丁寧で可愛らしい。


「フラウはどこに・・・もぐもぐ、住んでるの? むしゃ・・・この近く?」

「こら、食べながら喋らないの。」

「いえ、近くではないです。もっと遠くですね。」

「ふぅん、じゃあ今日はわざわざスイーツを食べにここまで来たの?」

「はい、好きなんです。」


アンジェとフラウは自然に会話を進めている。これぞ忌まわしき3人グループあるあるの1つ、『2:1になる』。それは異世界でも変わらない。1の方は必ずと言っていいほど私。

ぼっちの過去を思い出して寂しくなった私はヤケ食いを始める。


「ふふ、アンジェさんは面白い人ですね。」

「それほどでもないわよ~。ちょっと地味子、黙ってばかりいないであんたも喋り・・・って超食べてる?!」

「わあ、地味子さんも食いしん坊さんですか?」


調子に乗って20個のうち半分を平らげてしまった。食べ過ぎてちょっと気持ち悪い・・・。


「地味子さん大丈夫ですか? 背中さすってあげます。」

「うぷ・・ありがとうございます・・・。」

「小食なのに無理するからよ・・・完食できたからいいけど。」

「でも、いい食べっぷりでしたよ。」

「あはは・・・それはどうも。」


フラウは優しく背中をさすりながら、ニコリと笑った。体調が優れない今の私にとって、この可愛らしい笑顔は癒しかも・・・。

私はその笑顔をずっと見ていたくなるような衝動に駆られる。


しかし、そう上手くはいかなかった。


「あっ・・・すみません、もう行かなきゃ! 人を待たせてるんです!」

「へっ? そ、そうなの・・・?」


慌てふためきながら鞄の中をゴソゴソと漁っている。何かを探しているようだ。


「お、お会計・・・あれ? お財布が無い・・・?!」

「もしかして、落としちゃったの?」

「かもしれないです・・・どうしよう・・・。」

「じゃあ私たちが立て替えといてあげるわよ。ね、地味子?」


また勝手に決めて・・・。まあ、別にいいけど。


「そ、そんなの申し訳ないです!」

「ううん、大丈夫だよ。その代わり、いつか絶対返してよね。」

「・・・このご恩は一生忘れません!!」

「あ、いや、そんな大したことじゃないと思う・・・。」

「では失礼します!!」


まるでハヤブサのように忽然と去ってしまった。


「な、なんだったのかしら・・・。」

「さあ・・・。」



________________________________________



2人と別れた少女は人の多い大通りではなく、人気の無い路地裏へと入って行った。しばらく歩くと日差しは完全に遮られ、埃っぽく薄暗い空間が現れる。

そこにいたのは少女の2まわり、3まわりは大きい巨漢たち。いずれも黒いフードに身を包み、静かに佇んでいる。


少女の姿を確認すると、一斉に片膝を付き礼をした。


「ごめんなさい、付き合わせてしまって。」

「いえ、滅相もございません。」

「テスラドは怒っていましたか?」

「心配されてましたよ。人間で溢れた町に1人で行くなんて、と。」


相変わらず心配性で、優しい。少女はそうボソリと呟いた。

テスラドに借りたお財布落としちゃった、どうしよう・・・謝れば許してくれるかな。

少女は心配性で優しい友人を思い浮かべ、心の中でごめんなさいと謝罪した。


「それにしても驚きました。まさかあのお祭りに参加していた女の子と相席になるなんて・・・咄嗟に記憶を改竄したのでバレませんでしたが。」

「この近くに奴らが・・・では、しばらく町には出歩かないおつもりですか?」

「いえ、それこそ有り得ません。」


上品に可愛らしく、クスッと笑う。


「また、無茶なことを言うかもしれません。今度私がわがままを言ったら、また付き合ってくれますか?」

「当然です。我々はそのために存在しているのです。」



「七魔戒将が長、『神々の祝福』ウェンディフラウ様のために。」





寒くなってきましたが、暖かい部屋でぼちぼち書いていきます。

また読んでくださると感謝感激です。

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