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地味子の地味な異世界転移  作者: 汐とまと
第1部
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2話 まずはお金

割と説明回かもしれない。そうじゃないかもしれない。

「で、どうやったら元の世界に戻れるの?」

「3日間ずっと言ってるわね、それ。いい加減諦めなさいよ。」


世界のバランスを保つためという地味な理由で異世界シェブールに来てから3日。私のサポート役、妖精アンジェのポケットマネーを使って服など必要なものを買い揃えた。高校の制服はしばらく出番は無さそう。日本のお金と携帯も、当然使えない。

私とアンジェは現在小さな宿に部屋を借り、そこに住んでいる。


3日間住んでみて、シェブールについてわかったことがいくつかある。私にとって1番ありがたかったことは、私のいた世界と共通点がいくつかあること。物の売買を通貨で行ったり、リンゴやパンなど知ってる食べ物もある。生活するには問題なさそう。


それよりも問題なのは、お金。


「まずお金を稼がないとね。地味子に合いそうな仕事とかあったかしら。料理人とか?」

「料理下手だよ。」

「じゃあ聖騎士。」

「絶対無理でしょ。」

「踊り子。」

「死んでも嫌。」


バイトもしたことないような私ができる仕事なんてあるのかな。元いた世界とは勝手が違うだろうし。


「そうだ、いいこと思い付いた!」

「どうしたのアンジェ?」

「地味子、ギルドに行こう!」


私たちは多くの仕事が集まっているらしいギルドに向かうことにした。私が浮かべていたゲームのようなイメージとは違って、魔物の討伐とか危険なものばかりじゃなく、非戦闘員用の簡単な仕事とかもあるらしい。

ギルドへ向かう道すがら、気になっていた質問をアンジェにぶつけてみる。


「アンジェってさ、神様から直接私のサポートを命じられたんだよね?」

「そうね、それがどうかした?」

「・・・アンジェって、何者?」

「私っていうか妖精は、そもそも全世界108のどこにも存在しない生物なの。神様の使いって感じかな? 地味子の件みたいな特殊な事例の時だけ直接世界に干渉するの。普通なら妖精が居るだけで注目を浴びるけど、シェブールでは私は元々存在するものとして認識されるようになっているわ。神様の力によってね。」

「神様って、何でもありなんだね・・・。」

「何でもありなのよ。」


ギルドは宿から歩いて数分のところにあった。木製の酒場のようなそれは昼間からお酒の匂いが漂っていて、人が多く出入りし活気に溢れている。


「ギルドってなんとなく聞いたことあるけど・・・本当にあるんだね。」

「あら? 地味子のいたチキュウにもギルドはあったのよ?」

「え、そうなの?」

「そして、シェブールでは経済をまわす重要な組織となっているわ。ここなら簡単な仕事の1つや2つ見つかるでしょ。」


ギルドの中は、まさに本で読んだ異世界って感じの雰囲気だった。

武器を持ち鎧を着た男たちが丸いテーブルを囲んでお酒を飲み、騎士のような風貌の人たちが談笑し、事務らしきメイド姿の女の人が受付で書類片手に様々なやりとりをしている。


「まずはあそこの事務で仕事を探すわよ。」

「う、うん・・・。」

「どうしたの? 浮かない顔して。」

「人が多い・・・。」

「そういえばあんた、人見知りだったわね・・・でもその調子じゃ人同士の繋がりを大切にするギルドではやっていけないわよ。ほら、事務のお姉さんに話しかけてきなさい!」


いずれは克服しなきゃと思ってたけど、まさか異世界でその時が来ようとは。私は覚悟を決めて話しかける。事務のお姉さんというよりは、メイドさんだった。


「あ、あの・・・。」

「はい、何かご用でしょうか?」

「仕事を・・・。」

「貴女はギルドの方ではありませんね。まずはギルドに所属されますか? それとも無所属のまま仕事を受けられますか?」


ギルドに所属? そんなつもりは全然無かったんだけど・・・どうしよ。


「ねぇ、アンジェ・・・。」

「いいんじゃない、所属しても。ギルドメンバー専用の宿に無料で泊まれるし、ギルドでの飲食代も安くなるし、何より・・・。」

「何より?」

「このギルドのギルドマスター、実はけっこうな読書家でね。メンバーになれば好きな本借り放題よ。」

「所属します。させてください。」


ギルド所属の手続きを音速で済まし、私とアンジェは正式にギルドのメンバーとなった。


「あんた本当に本好きね・・・。」

「早速マスターに今日読む分を借りに行こう!」

「その前に仕事!」

「えー・・・。」


私たちはクエストボードと大きく書かれた掲示板を眺めている。そこには無数の依頼書が貼り付けられていて、依頼内容と報酬が事細かに記されている。


「ねぇ、クエストボードの隣に書いてある、E級ってどういう意味?」

「クエストの難易度よ。ここに貼られているものは全てE級クエストってこと。クエストは難易度によってSからEに分けられているわ。因みに、D、E級クエストはギルドに所属していなくても受注することができるの。」

「ふぅん・・・。木の実の採取に落し物捜し、ペットの散歩・・・。」


思わず友達に頼めよと言ってしまいたくなるような内容のものまである。心の中でツッコんでいると、1枚の依頼書が目に留まる。


「薬草採取・・・緊急?」

「ん? あー、これ子供が依頼したのね。お母さんの病気を治すために薬草が必要なんだろうけど、報酬が200ゴールドって安すぎ。まあ、子供だから仕方ないわね。それより出来るだけもっと高いクエストを・・・。」

「私、これにする。」


ボードから依頼書を剥がす。


「ちょ、待ちなさいよ! 本気なの? 1ゴールドはあんたの住んでたチキュウでいう1円よ? つまり200ゴールドは200円。本1冊も買えない金額なの。せいぜい地味子の朝食代が関の山よ?」

「だって、お母さんが病気って・・・。」

「あんたねぇ・・・依頼人の都合だけで働いてどうすんのよ。気持ちは分からなくもないけど、私たちには今余裕が無いんだからもっと別の・・・。」

「でも、安い仕事ってことは誰もやらないでしょ? 緊急なのに・・・だから、私がやらないと。」


アンジェの制止を振り切り、私は依頼書を持って事務で手続きをした。困っている人がいたら助けたいとか、そういう正義感じゃない。


「こういうモヤモヤは解消しないと、今夜の読書タイムが楽しくなくなっちゃうでしょ。」

「地味子ってお人好しなんだか、そうじゃないんだか・・・。」


私とアンジェは初めての仕事、薬草採取のため近くの森へと出発した。






ありがとうございました。ぼちぼちやっていきます。

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