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地味子の地味な異世界転移  作者: 汐とまと
第1部
12/75

12話 アデルとシリウス

よくあるお風呂の回ですが、お風呂っぽいことは何もしません。そういうのはまたの機会に・・・。(書き忘れたとは言えない)

「猫耳・・・?」


私はじっとその頭の2つの不自然な三角形を眺めていた。


「あぁ、これ? その通り、猫耳だよ。」

「そ、そうですか・・・。」


こっちの世界にもそういう趣味の人いるんだ・・・。私は付けたことないからよくわからないけど、この人にはよく似合ってるし可愛いと思う。

一緒に湯船に浸かり話していると、見覚えのある理由と名前を知られていた理由がすぐにわかった。


「ボクは地味子ちゃんと同じギルドのキトゥン。きぃって呼んでくれていいよ。」

「キトゥンだね、よろしく。」

「華麗なスルーだね・・・ところで、地味子ちゃんって面白い名前だよねー。」

「本名じゃないけどね。」

「えっ、そうなの?」


やっぱり認知されてなかった。ていうか、私の名前をちゃんと知ってくれてる人ってアンジェとギルドマスター以外にいるのかな。


「ねえキトゥン。その耳すっごく可愛いと思うんだけど・・・どうしてお風呂の中まで付けたままなの?」

「付けたままって、何がー?」

「いや、防水なのかなって・・・耳。」

「耳がボースイ?」


どこか話が噛み合っていない気がする。そもそも防水の意味が伝わっていない。


「えっとね、その耳って水とか吸ったりしないの?」

「吸うよ? シャワーとか浴びるとちょっと重くなっちゃうねー。」

「じゃあ、外さないの?」

「外す・・・? いやいや、何言ってんの地味子ちゃん! 外れるわけないじゃん! これ耳だよ?!」


キトゥンの言ってる意味がわからない。耳だから外れない? 猫耳ってカチューシャみたいに付けるものじゃなかったっけ?

ていうかこんな問答みたいなこと続けるより、思い切ってやっちゃったほうが早い!


「ごめん、キトゥン。」

「へ?」

「えいっ!」


私はキトゥンの猫耳を摘み、思い切り引っ張る。

キトゥンの叫び声が湯浴み場全体に響き渡った。


「いったぁ・・・もう! 何すんの地味子ちゃん!」

「まさか本物だったなんて・・・!」


その猫耳はコスプレではなく、紛れもなく頭から生えていた。


「でも、なんで猫耳なんか・・・?」

「あれ? 地味子ちゃん、獣人って見たことないの? まあ確かに、ここら辺じゃボクくらいしかいないし珍しいかもだけどー。」

「獣人・・・?」


キトゥンは異世界初心者の私に丁寧に説明してくれた。ここシェブールには人間以外にも様々な種族が存在するらしい。レッドウルフなどの魔物もその1つ。そしてキトゥンは人と動物の混ざった獣人という種族らしい。

うーん、シェブールでは珍しく、異世界っぽい。


「それよりさ、地味子ちゃんの噂もいっぱい聞いてるよー。」

「え、私の噂って何?」

「初めての仕事でアデルちゃんの命を助けたんでしょ?」


いや、確かに事実といえば事実だけど。


「あの、それはたまたま結果的にそうなったってだけで・・・。」

「それに盗賊団のボスを蹴り一撃で倒したとか。」

「それ尾ひれ付いてる! 事実無根! 蹴りは確かに入れたけど!」

「えー・・・でも、もうギルド中に広まってるよ。突如現れた期待のルーキーだって。」


期待のルーキー・・・嫌なイメージ付いちゃったな、どうしよ。まだ1人じゃなにもできない一般人なのに。難しい仕事はもちろん、簡単な採取クエストでもアンジェについてきてもらわないと不安だし。

私が戦えないってこと、みんなわかってくれてないのかな・・・?


「地味子ちゃんって戦えないのに、ほんとすごいよねー。」

「えっ?」


あれ、気付いてる? じゃあなんで・・・?


「ギルドのみんなとは違う、戦闘力とか魔力とは違う・・・何て言えばいいんだろ。不思議な力って感じー? 運や奇跡を引き寄せるみたいな・・・。」

「・・・またその話?」

「へ、またって? ボク、この話するの初めてだと思うけどー・・・。」


マスターにも言われた、私に宿る目に見えない不思議な力。正直というか当たり前だけど、私はまだその話については信じていない。でも、みんなが私を期待のルーキーなんて呼ぶのは、みんながその力を少なからず感じ取っているってこと?

当の本人である私にはまったくわからない。


「えっと、地味子ちゃん? ボク、嫌なこと言っちゃったかな・・・?」

「あ、ううん全然・・・。よし、この話はおしまい! それより聞きたいことがあるんだけど、いい?」

「なぁに?」


私がシリウスという男を初めて知った時から、あの時からずっと気になっていること。


「アデルさんとシリウスってどういう関係なの?」

「・・・!」


キトゥンは少し驚いた表情を見せた後、ゆっくりと口を開く。


「シリウスのこと、知ってるんだ?」

「うん、まあ・・・。」


ギルド内では確か、シリウスは仕事で出て行ったきり帰って来なくて死んだと思われてるんだよね。ここのすぐ隣町で会って、しかも闇社会に通じる人間だなんて口が裂けても言えない。


「アデルちゃんとシリウスの関係かぁ・・・うまく言い表せないけど強いて言えば、親子って感じかなー。」

「親子・・・?」


予想外の答え。てっきり恋人か何かだと思ってた。


「アデルちゃんがシリウスの教育係だったってことは聞いてる? マスターの弟であるシリウスはそのコネでギルドに入ったの。実力はあるけど素行が悪くて、最初はよくほかのメンバーと衝突してたんだよねー。そこで監視兼教育係に指名されたのが、当時ギルドに入ったばかりのアデルちゃんだったんだよ。」

「どうしてアデルさんが?」

「正直・・・みんな嫌になってたんじゃないかな。怪我をさせられた人だってたくさんいたし、ボクも仕事先で何度かぶつかったなあ。だから、頼める人がアデルちゃんしかいなかったんだよー。」


そんなに素行悪かったの? まるで不良だよ・・・。


「でも、アデルちゃんが教育するようになってから少しずつ変わったんだよね。シリウスが悪いことする度に叱って、ギルドのみんなと仲良くするように言い聞かせて・・・本当に親子みたいで、アデルちゃんの言うことにだけはなぜか反抗できなかったんだよねー。アデルちゃんの方が年下なのにだよー? そうするうちに、シリウスはだんだんみんなと馴染むようになっていったの。ちょっとずつだけど、笑顔も見せてくれるようになってたし。」


少し笑いながら思い出のように語るキトゥン。キトゥンもまた、アデルさんと同じような寂しい目をしてる。


「ボクも、シリウスとは仲良くなれたと思ったんだけどなぁ・・・その矢先だったの。シリウスが仕事先から帰って来なくなったのは。今、どこで何してるのかな・・・無事だといいなぁ・・・。」


キトゥンの話を聞く限り、アデルさんの教育やギルドのみんなに嫌気がさした・・・という感じはしない。私の勝手な考えだけど。

仮に私の考えが合っているとして、シリウスはどうして盗賊に手を貸したり闇社会に通じたりしているんだろう。出て行く時に仕事を受注していたというのもよくわからない。アデルさんの監視だって毎日24時間続いているわけじゃなかったはず。出て行くなら夜中にでも勝手に出て行けばいい。


そもそも、本当に彼は自分の意志で行動しているの・・・?


私の疑問は増す一方だ。


「えっと・・・地味子ちゃん? 何をそんなに考え込んでるのー?」

「なんでもないよ。そろそろ上がろっか。」

「ん、そだねー。」


私とキトゥンは湯浴み場を出て脱衣所で着替える。猫耳にばかり気を取られていた私は驚いた。

キトゥンの胸・・・でかい。


「このギルド、巨乳の人多いな・・・。」

「地味子ちゃん、何か言った?」

「ううん、何も。」


自分も小さい方ではないと思うけど、さすがに自信を無くしてしまう。


「あ、そうだ地味子ちゃん、明日のあれ出場するのー?」

「あれって・・・?」

「毎年恒例、マスター主催の宝探し祭り!」

「な、何それ?」


初耳なんですけど。でも、宝探しってなんだか楽しそう・・・初めてだし、ちょっと参加してみようかな。


「丸1日小さな島1つ貸し切って行われるすっごいお祭りなんだよ! 賞金を懸けてギルドのみんなが本気でバトるんだよー。」


あ、やっぱやめた。死んじゃう。





ありがとうございました。エアコンかけすぎて風邪ひきました。みなさんもお気をつけて。

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