生きるということは人生という道に迷うこと
「アルコール♪アルコール♪
お酒が大好き~♪はしごも大好き~♪
どんどん飲もう~~♪
糖質~プリン体~♪ビールっぱら~♪
1本指が~2本、3本に見える~♪
吐くまで飲んで~♪ふつか・よ・い~~~♪」
俺の名前は美和 志童。
何処にでもいそうな目の死んだ高校生。友達からは「目がキラキラしていたらそこそこイケメン」と微妙な評価の顔。童貞ですが何か?
彼女こそいなかったが友達がいる時点でぼっちではないのだよふははははは!
ちなみにあだ名は「シドー」、なんだか魔王みたいな名前だ。
そんな俺だが車に弾かれそうになった婆さんを助けて死んじゃったんだよこれが。いやあ参った参った!(笑)
・・・・まあ笑い事じゃないんだけどな。
そのまま天国か地獄に行くかと思ったらまさかの異世界ですよ!
しかも残念な巨乳の天使に謎のガチャガチャを引かされて魔王を引き当てた。
分かりやすくいうとハロワで「今日からあなたの職業は魔王ですよ」と言われた感じ。
その結果異世界グランにおける悪の根源、全人類の敵である魔王となってしまった。証拠に召喚早々矢を射られたし。なんも痛くなかったけど正直心が痛かった。
良いさ、魔物は俺の味方してくれるはずだし。もしかしたら超かわいいサキュバスとかとイチャイチャできるかもしんないし、何より超すごいステータスを手にいれた時点で俺最強☆
・・・・なんて思いながら自作の替え歌を口ずさんで魔王城へととことこ歩いていた訳ですよ。そしたらね
「ここ何処だ?」
迷いました。
「さっきから俺を呼ぶ声のする方に歩いているはずなんだけど一体いつになったらたどり着くんだ?同じ景色が続くばっかで進んでいる気がしねーよ。
てか今何時だ?薄暗くてよくわからん。」
そこで学ランのポケットに入っているはずの携帯電話を探す。
携帯電話があるはずのそこにあったのは何やら不思議な感触。
「なんじゃこりゃ?手紙?」
ポケットには携帯電話の代わりに手紙が入っていた。
「えっと何々・・・・・」
『シドーさんへ。この手紙を落ちてる間に読んでいることを祈ります。
魔王への転生おめでとうございます。しかしあなたはすぐに死ぬことになるかもしれません。神様がグランの各王達に『魔王が転生してくる』なんてチクりやがったせいで聖王が討伐隊を派遣したのですよ。そいつらは血も涙もない冷酷な軍隊で聖王に敵対する存在を例え子供であろうと一族もろとも排除しようとするとんでもない奴等なのです。クラスこそノーマルですが数も多い上に一人一人のレベルも高いのでレベル1のシドーさんでも殺されるかもしれません。なのですぐにマノクニの魔王城へ向かってください!そこに協力者がいるはずです。
最後に万が一討伐隊と出くわした際に備え、これを贈ります。ちなみにこれはあなたが魔王のガチャを引いたときに欲しがっていたものです。』
手紙を読み終わった瞬間、空から巨大な何かが目の前に落ちてきた。
「おわぁっ!!な、なんなんだこりゃ・・」
それは身の丈程の長さの漆黒の鎌だった。
ギラリと光る刃、柄の先端にはドクロの装飾があしらわれている禍々しい鎌である。
「これが魔王の最強の武器って訳か、てかおせーよアリー。その討伐隊とやらはとっくに逃げたっつの。あんなんで血も涙もない冷酷な軍隊とか言われてるのかよ。・・・・俺のステータスがヤバいだけかもしんねーけど」
アリーも言ってたようにシドーのステータスは歴代魔王の誰よりも優れていて完全に世界のパワーバランスを崩すレベルだと。
そんな存在がただのノーマルクラスの人間の軍隊でなんとかなるはずがなかった。
「とりあえずこの鎌は貰っておこう。学ランに鎌ってけっこーシュールな絵面だよな。」
鎌を拾い背中に背負ってみる。不思議と重さを感じず、動きも阻害しないが確実にそこにあるという感覚が伝わってくる。
「無闇に振るのはやめておいた方がいいな。何が起こるかわからない。とりあえずは魔王城に行こう。・・ってどういけばいいんだ・・・」
そう思い魔王城へと行こうとするが元々迷子だったことを思いだし、その場にorzする。
すると、地面に手をついた瞬間に背負っていた鎌がポロッと落ちる。
「うぉっ!ビックリした・・・なんか先っちょのドクロが光ってるしキモッ!・・・ん?これは・・」
偶然かどうか知らないが地面に倒れた鎌の先端のドクロが淡い光を帯びていて、その方向から声が聞こえてくる・・・・ような気がしていた。
「行ってみるか、どうせこのままじゃ一生辿り着けなさそうだし。」
ガシャンッと鎌の先端を前につき出すように持ってテクテクと歩いていくことにした。
一方、魔王城では・・・・・・・
「・・・・やっと気づいたよまおー様。こっちに来る」
小型の望遠鏡のようなものを覗きこみながら青髪の魔法使いルックの少女が気だるそうに呟いた。
「本当か!?よかった、さっきからずっと呼び掛けてるのにてんでちがうほうに行ってるから聴こえてないと思った」
ふうと魔法陣の上でため息をつく赤髪の少女。どうやらこの赤髪の少女がシドーを呼んでいた声の主のようである。
そんな赤髪の少女の様子を見ながら青髪の少女が首を横にふる。
「・・・なんか違うみたい、反応はあったし声は届いていたはず。あの鎌が私たちの魔力を感知しているみたい。」
「え゛?つまりこの数日間魔王様を呼び続けてきた私の努力は・・・」
「・・・完全にムダ。ぷぷぷ」
青髪の少女がバッサリと切り捨てる。赤髪の少女はぷるぷる震え、その顔を自分の髪のように真っ赤にして叫んだ。
「ふざけるな!~あたしがどんな思いでこの魔方陣の上で呼び続けてきたと思ってるんだ!!一回退くと魔方陣が消えちゃうから5日間お風呂にも入れなかったし食事もルシアが意地悪してあたしの嫌いなものばかり投げ込んでくるしたまに寝過ごしたとかで食事抜きだった時もあったし携帯トイレも漏らすギリギリまでくれないし石畳だから硬くて寝られないしも~~~!」
「・・・・いい忘れてたけどその魔方陣外に出ても10秒以内に戻ってくるか違う人が入れば魔力供給が維持されるから出たかったら誰かと交代すればよかったんだよ」
「え?何それ初耳なんだけど、てか誰かと交代すればいいってあんたしかいないじゃないか!!むき~ぃぃぃ!」
「・・・・zzz」
「寝た!?ちょっ起きろルシア!起きろって!もうすぐ魔王様来るっていうのに~!ねぇお願い!せめてシャワーだけでも浴びさせて?」
「・・・サヤめんどいzzz」
「ちょっとぉぉぉぉ!?なんであたしが悪いみたいになってんのよぉぉ!」
そんな感じで赤髪と青髪の少女・・サヤとルシアは魔王城でシドーが来るのを待っていた。魔王シドーを迎えて《マノクニ》の復興、魔人族の繁栄のために。
そんなことも知らないシドーは
「なんかギャーギャーうるさいなぁ、呼ぶ声っていうかなんか言い争ってるみたいだしとりあえず呼んでくれてた人はシャワーに行かせてあげよう。」
まだ顔も名前も知らない少女の不憫な扱いを哀れんでいた。
冒頭のシドーが歌っていた替え歌の原曲がなんなのかわかった人は感想欄まで(笑)