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第46話 その手で救ったもの

スゥーリアをつれて仮設住宅の方に行くと見知った二人がいた。森人の里にいたルークとエドワードだ。


「ルークさん!エドワードさん!来てたんですね!」

「おお!シドー殿、それに族長も!」

「二人ともおかわりないようで」

「相変わらずですよ、ほらスゥーリア起きろ」

「へげぇ・・!あれ?・・なんでいきなり二人が目の前に・・?」

「ルシア殿が伝令を飛ばしてきたため救援に来たのですよ」


その言葉通りたくさんの森人族がやってきて仮設住宅の建設や炊き出しを行っていた。獣人族達も一晩ゆっくり休んだおかげか、昨日より表情が明るかった。


「詳しい事情はサヤ殿から聞いております。最近獣人族の里と頻繁に連絡がとれなくなっていたので不穏な気はしていましたがまさかこんなことになっていたとは」

「・・・・ええ、本当に」

「シドー殿達がいなかったらどうなっていたことやら」

「俺達は・・・結局野蛮なやり方でしか解決できなかったんですよ」


俯くシドーにルークとエドワードは顔を見合わせて微笑む。


「それでも貴殿がいたからこそ、これだけの被害で済んだ。それにもし、獣人王が台頭していたら各国との戦争が起こり、より多くの被害がでていたかもしれない」

「話し合いだけで解決できるにこしたことはありませんが、それで済むほど平和な世界ではないのですよ」

「・・・・・」


(まただ。結局前世の価値観や考え方に縛られて、この世界の情勢だったり価値観をしろうともしないで

勝手に悩んでたのか)


「二人とも、ありがとうございます。少し考えてみますね」

「はい、ごゆっくりと」


そう見送る二人の穏やかな表情にシドーは安堵するのだった。


「シドーくん!そういえば朝ご飯っていうかもう昼過ぎだけどなにも食べてないじゃん。うちの里の炊き出しもらいに行こ!」

「・・・・あの肉なし汁か」

「空きっ腹には丁度いいでしょ」

「そうだな」


そして二人で炊き出しをもらいに行くとシドーは驚愕の光景を目にする。


「いらっしゃいませモウ~」

「・・・」

「どうしたのシドーくん?良かったじゃんお肉もあるってさ」

「いや、そうだけど・・・」


シドーが目にしたのは香ばしい香りと食欲を唆られる音をたてて焼かれている肉の串焼き。それだけなら良かった。しかし、


「なんで牛の獣人が牛肉焼いてんだよ・・・」

「ギュウニク?・・これはウミウシの肉だよ?」

「ウミウシ?」


ウミウシと聞いてシドーの頭に思い浮かぶのは海にいるナメクジのような生き物。しかし、どうみても目の前の串焼きは紛うことなき牛肉にしか見えなかった。


「海にいる角の生えた動物だよ。水の中をものすごい速さで泳いでね、黒ぶち模様が可愛いんだ」

「そしておいしいんだモウ」

「なるほど」


シドーは頭の中で海中を泳ぎ回るホルスタインを想像して、異世界なんだからと言い聞かせて考えるのをやめた。ちなみに牛の店主は黒毛だ。


「にいちゃんには感謝してるモウ。嫁も戻ってきて家は壊されちまったけどまた家族で暮らせるモウ。ほいこれ、焼きたてだモウ」

「あ、ありがとうございます」


焼きたての串焼きをもらって一口。口いっぱいに広がる肉汁と香ばしい香りにシドーは思わず「うまっ!」と叫んであっという間に平らげてしまった。


「おいしいですこれ!まさに牛肉・・・いや、昔食べた事のある肉に似てますけどこっちの方が美味しくて・・・」

「よかったねえシドーくん。・・・ね?よかったでしょ?」

「ん?なにが?」

「シドーくんが守ってくれた、助けてくれたおかげでこうやってみんなで美味しいご飯が食べられるんだよ」


スゥーリアの言葉にはっとする。亡くなってしまった人も怪我をした人も大勢いる。失ったものは数え切れない。それでも、今ここにいる人達は助ける事ができた。大勢で笑いながら酒を酌み交わす者、家族との再会を祝している者、自惚れるつもりは一切ないが自分達が来ていなかったらこの人達もみんな今ここにいなかったのだと改めて痛感した。


「・・・・・」


もぐっと肉を噛み締める。少なくとも自分の行いは、この人たちを救うことができたのだと納得すると、少しだけ気が楽になったような許されたような気持ちになる。


「ああ、・・・・それなら良かったよ」

「にしし、やっと笑ってくれた。夜もずっとうなされてたし、起きてからも眉間に皺よりっぱなしだったし、サヤちんもルシアたんももちろんあたしも心配だったんだからね」

「ああそうだったのか、悪いな心配かけて。・・・すいません、この串焼きもう二人分もらえませんか?」

「はいよう!ちょっと待ってるモウ」

「スゥーリアには・・・今度良いもの見つけたら奢るよ」

「ふふ、楽しみにしてるね」


そしてシドーとスゥーリアは手土産をもってルシアとサヤの元へ向かうのだった。



「なあ、ルシア。ウミウシってどんな生き物か教えてくれないか?」

「・・・ん。ウミウシは海や綺麗な川に住んでいて、大きさは私の腰までくらい。角が生えてて黒ぶちもようで・・・」

「(?意外と小さいんだな)んで、四本足で尻尾があって毛が生えてるんだろ?水の中だからヒレか?」

「・・・・?。足も尻尾も毛もない。ヒレはあるのとないのがいる」

「え?・・・ちなみに絵とかある?」

「・・・ちょっとまってて。・・・・(カキカキ)こんなの」

「!!、これって・・・嘘だろ?嘘だと言ってくれ!」

「・・・・ホント」

「!!!!・・・・あう(バタッ)」

「・・・・どうしたの?」


この世界のウミウシは、白黒の色合い以外まんま海にいる巨大ナメクジだった。

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