第45話 後悔とこれから
その後ルシアの転移で囚われていた獣人族の住民を山の麓の村(ミリアの家のある村)に集めた。おかげでさしものルシアもヘトヘトになり、全員を転移させた後倒れるように眠ってしまった。
集まった住民達は互いの無事を喜ぶと同時に怪我の手当、そして、ここにいない者に気づくと悲しみ、泣き叫ぶ。
「・・・そんな・・村が・・・あ、ああああ・・・!」
「う・・・ぐすっ・・どうして・・」
犠牲になったのは殆どが抵抗した男、男女問わず老人である。数々の村も潰され、家を焼かれたものもいる。
そんな悲しむ人々を見るとシドーは胸が締め付けられるような思いになる。
「・・・・ごめんなさい」
自然とシドーの口から言葉が漏れる。決して大きな声ではなく、呟くような小さな声だが、聴覚に優れた獣人達はその声を聞き逃さなかった。
しんと辺りが静まり返り、シドーの口から零れる言葉のみが辺りに響き渡る。
「ごめんなさい・・!俺達が、俺達がもっと早く来ていればこんなことには・・・」
がくっと膝をつき、土下座の姿勢で泣きながら謝罪の念を口にする。
「ま、魔王様!?」
「シドーくん!落ち着いて!大丈夫だから!」
すぐにサヤとスゥーリアがシドーの介抱にかかる。
それでもシドーは頭を上げなかった。
自分達がこの事態に遭遇したのはたまたま偶然であるとシドーも理解はしてる。ただ手の届く距離で救えるはずの命を救えなかったという事実が16歳の普通の少年の心に突き刺さる。
「あれが・・魔王・・?」
「新しい魔王なの・・?」
「あんな・・まだ歳若い子どもじゃあないか」
ざわざわと獣人族達がどよめきだす。救出に来たサヤとルシアから話は聞いたが実物を見るのは初めてな住民達は戸惑うしかなかった。
「おにいちゃん!」
ざわめきをかき消す一声。
ミリアがシドーの元へ駆け寄り、小さな身体をめいっぱい広げてシドーを庇うように立つ。
「このおにいちゃんがわたしを、わたし達を助けてくれたんだよ!悪い人をやっつけて、あたしのお母さんを助けてくれたんだよ!」
「ミリア・・・でも、でも俺は君のお父さんを・・・」
「あなたがシドーさんですね」
シドーに声をかけたのは、ミリアを追うように現れた垂れた犬耳の女性。
「あなたは・・・」
「私はミリアの母です。この度は娘を、私達を助けていただいてありがとうございました。主人のことはサヤさんとルシアさんから聞きました。ですが、あなたの責任ではありません。それにあなたが助けてくれなければ獣人族はまた奴隷種族になってしまったかもしれません。あなた方は私たちの一生の恩人です」
ミリアの母はふらつきながらも娘と共にシドーに頭を下げる。その様子を見ていた他の獣人族達も互いに顔を見合わせ、一様にシドーに対し頭を下げる。
「そんな、俺は・・・」
「シドー君!みんな君に感謝してるんだよ!その思いを無下にする気?」
「え、いや、そんなつもりは・・・」
「魔王様、みな貴方のお言葉を待っておりますよ」
「・・・・・(こく)」
獣人族から、仲間たちから、感謝と期待を寄せられシドーは戸惑っていた。こんなこと転生する前にも経験した事がなかったからである。しかし、不思議と嫌な気持ちではなく、照れくさくてそわそわするような落ち着かないようなそんな感覚だった。
「・・・ん、ごほん。
本当にみんなが無事で良かった。今回のことは受け入れられない人もいるかもしれない。家族を亡くした人、住む場所をなくした人、傷ついた人もたくさんいる。でも、みんなは生きている。これからのことは生きているみんなで考え、協力していけば良い・・と思う。もちろん我々も復興のための協力は惜しまない。・・・・魔王の名において、この地の、獣人族の安寧を約束する」
すっと最後にもう一度頭を下げる。するとまばらだが1人、また1人拍手が始まり、最後は大喝采となる。
「うぉー!魔王様!」
「ありがとうございます!」
「魔王様バンザイ!」
「魔王様バンザイ!」
その日は日が暮れるまで喝采の声が止むことはなかった。
そして・・・・
次の日の朝
「・・・・・ん・・むぅ」
シドーは仮設住居の中で目を覚ました。昨日はあれから1番広い集落へと移動し、シドーの魔法とルシアの魔法で簡易的な住居を作り、交代で仮眠をとってからの記憶が・・・・・
「・・・・やべえ!寝過ごした!」
シドーは慌てて寝床から飛び出した。
すると集落の広場に大勢の人達が集まっていた。獣人族だけではなく、森人族の姿も見える。
「・・・あれ、なんでこんなたくさんの人が・・」
「あ!おっはようシドーくん!」
駆け寄りざまシドーの背中をベシンっと叩くスゥーリア。その行いにギョッとしたサヤがスゥーリアをしばきながらシドーにあいさつする。
「おはようございます魔王様。昨日はよくお休みになられたようで」
「ああ、おはようサヤ。悪い!昨日仮眠のつもりが寝過ごしちまって」
「いえいえ、とんでもない。あれだけのことがあったのですから。あまりにも気持ちよさそうに眠っていたので起こすのも申し訳ないと思いまして・・」
「サヤちん・・ギブギブ!あたしも気持ちよくお眠りしちゃうから・・」
「いやいや、大変なのは獣人族の人達なんだし、俺もなにか手伝わないと」
「そうですね・・・でしたらミリアに会いに行ってはどうでしょう。あの子もかなり疲れているでしょうし、魔王様のお顔を見れば気分も安らぐでしょう」
「そうだな、ついでに挨拶に回ってくるよ・・・あ、サヤ!それ持ってっていいか?」
「ええ、どうぞ」
サヤと別れたシドーは完全に堕ちているスゥーリアを引きづりながら集落の様子を見て回ることにした。
助けて!
新作のLASTWINGが全然伸びないの!ウケないの!(笑)




