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加減が出来ないチート程怖いものはない

あれから何度かウルフや、空から鋭い嘴で襲ってくるデビルホークという鳥型の魔物に襲われたが、シドー達は難なく退けていた。正確にはシドー達ではなく、サヤ、ルシア、スゥーリアの3人だが。サヤ達がうち漏らした敵をシドーが倒そうとするとルシアが先に倒してしまう形で、シドーの出番は皆無だった。


「ちぇー、なんだよなんだよみんなして・・」

「そうおっしゃらず機嫌を直してください。私達は魔王様をお守りする義務があるのです。」

「ルシア、サヤの本音は?」

「・・・『力の制御もろくに出来ないウンコ魔王様にでしゃばられると正直邪魔なんでございますー⤴』・・・って」

「ぶはっ!?・・・はははくくく・・・」


表情はそのままに、ルシアが悪意たっぷりにサヤの声真似をすると、サヤは顔を真っ青にして否定する。ちなみにスゥーリアは余程可笑しかったのか吹き出して蹲っている。


「そうか・・・前から思っていたけどルシアとスゥーリアはタメ口なのにサヤだけはいつまでも堅苦しい敬語なのは俺のこと内心では嫌ってたからなのか・・」

「め、めめめ滅相もございません!全てはルシアのバカの妄言です!」

「・・・・脳筋にだけはバカって言われたくない」

「うるさい!元はといえばお前がふざけたことを言うからだろ!」

「あっははははは!あーお腹痛い・・・ふう・・・でもルシアたんの言いたいこともちょっとわかるかも」


爆笑が落ち着いたスゥーリアは、地面に落ちていた石を拾って空高く放り投げる。


「シドー君、あれ魔法で壊してみて!」

「お?・・ああ」


言われるがままシドーは自由落下を始めた石めがけ重力魔法を放つ。シドーの左手が黒い光を放つと、石も同じように光り始め、その形を縮めていき、プチッという音と共に消え去ってしまう。


「これでいいのか?」

「ぶっぶー!残ねーん!私は『壊してみて』って言ったんだよ。『消し飛ばして』なんて言ってないよ」

「消し飛ばしてはいないぞ!限界まで全方位から押し潰して粒子レベルで破壊しただけで・・・あ」


気づいたシドーは先程ルシア達が倒したウルフやデビルホークから剥ぎ取った毛皮や肉を一瞥する。


「皮や肉を売ったり食料に出来なくなる・・・」

「ピンポンピンポン大正解!ご褒美にぎゅうってしてあげようか」


ほれほれとドヤ顔で両手を広げるスゥーリアに無性に苛立ったシドーは


「いや、硬い胸はちょっと・・・骨があたって痛いだけだし」

「ぶふっ!・・・」

「な・・・!?なんですってこの名ばかりのなんちゃって魔王が!ガチの戦闘でしか役にたたないとか非効率すぎなのよ!それとルシア!なにあんたも吹き出してんのよ!」

「スゥーリア!魔王様に向かってなんたる無礼を!いくらお前でも許さないぞ!」

「えーんえーん、サヤ助けてー貧乳が苛めるよー」

「・・・えーんえーん、無い物ねだりしてくるよー」

「サヤちん退いて!そいつら殺せない!」


ブチキレるスゥーリアに対しサヤを盾にするシドーとルシア。

このあと勿論サヤの雷が全員に落ちた。



それから3日ほど道なりに歩き、道中ルシアから魔力の制御法、サヤから鎌の扱い方、スゥーリアからは狩りのやり方や獲物の捌き方を教わり、シドーは立派な野生児魔王へと進化していた。


「ウッホウッホ、ウッホホウホホ!」

「キャハハ!シドー君エイプ(ゴリラみたいなモンスター)の真似上手!」

「・・・・むしろなりきってる」

「はぁ・・・」


ため息をつくサヤからの視線が痛くなり、シドーは咳払いを1つして真面目な顔になる。


「この先から強い魔力反応と潮の香りがするんだけど海が近いのか?」

「はい、この先は海で魔力反応は恐らく海中の魔物のものかと。海の魔物は皆大型なので」

「そいつらの近くを通っても大丈夫なのか?」

「はい、奴らは海中から出ることは出来ないですし、かなりの高さの崖になっているので海に落ちない限りは大丈夫です。」

「それフラグにしか聞こえないな・・・」


そんな心配をしながらも一向は森を抜け、青空の下へとでる。目の前に広がる崖の道が山の陰まで続いているのが見え、崖下には陽光を反射して光る海がどこまでも続いている。まさに絶景と言える場所だった。


「うおお・・すげー・・ゲームの中でしかみたことねえよこんな景色」

「・・・うぅ眩しい、め、目が~」


目をキラキラさせるシドーとは対照的に帽子を目深に被って目を守るルシア。


「ずっと森のなかを歩いてたからな。大丈夫かルシア?」

「・・・ん~」

「日頃の不摂生がたたったな。これを気にルシアも少しはトレーニングを・・・」


猫のような仕草で目をこするルシアを見て、サヤがどこか冗談っぽく言う。潮風が漂う穏やかな気候。一向の雰囲気も自然と和やかになり、笑い声と共に歩みを進めていた。森を抜け、丘の上から緩やかな斜面を下っていた時だった。


それは突然訪れたざわめき。和やかな雰囲気を一転させる身を切るような叫び声と、爆音が辺りに響き渡る。


「!!なんだ!?」

「わかりません!ですが警戒を!スゥーリア、辺りを探れ!」

「りょーかい!・・・・!、みんな、あれ見て!」


現在、森を抜けたシドー達は丘を下って剥き出しの岩石の平地にいる。そこからスゥーリアは近くの高台に飛び乗り辺りを見回してあるものを見つけた。

スゥーリアが指差す先に魔物がいた。ウルフである。それもただのウルフではなかった。普通のウルフより二回りほど大きな体を持つウルフが、数匹の群れを率いて獲物を崖っぷちに追い立てていた。その獲物とは、


「女の子が襲われてる!速く助けないと!」

「俺が行く!」


ダンッと勢いよく駆け出したシドーは速度のステークスにものを言わせた全力疾走で迫る。しかし、距離が遠い。ウルフ達はシドーに気づくことなくさらに少女との距離を詰める。もう少女には文字通り後がなかった。


「おおおおおお!!」


残り10m弱。そこまで近づかれてやっとウルフ達はシドーに気付き、警戒を顕にする。少女も気づいたのかそれまで恐怖に歪んでいた表情が見るからに明るくなる。が、しかし、少女の足元の崖の一部がほんの僅かだが崩れ、それに足をとられた少女がバランスを崩して崖下へと真っ逆さまに落ちていってしまった。



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