記念すべき最初の雑魚敵
「~~♪みんな!もうすぐ森を抜ける一本道に出るよ。そこからなら徒歩で3日くらいで海沿いにある獣人族の村に着くよ」
鼻唄を歌いながら上機嫌で先を行くスゥーリア。心なしか表情が明るいのは敵討ちを果たしてシドー達の旅に同行させてもらえるからかそれとも
「よかったなスゥーリア!あ、サヤ、そこに刺さっているのは優しく頼む」
「えっと・・・こうでしょうか?」
「アア!?・・・おおお~・・・」
不用意な発言をしたシドーに制裁として無数の矢をくらわせられたからなのか、真相はわからない。
「・・・面白そう。サヤ、次は私にやらせて」
「ダメだ!遊んでいるわけではないんだぞ!」
「いだだだだ!サヤ!サヤさん!?そこ結構深く刺さってるから慎重に!慎重にお願いしま」
「・・・・えい」
「ひぎゃあああ!!」
「魔王様あああ!!」
一行は森人族の里を抜け、スゥーリアの言う森を抜ける一本道である街道に向かう途中だった。幼い頃から森を歩き慣れているスゥーリアを先頭にシドー達が木の根に躓きながらもついていく。3時間ほど森を歩いていると先頭のスゥーリアが不意に立ち止まり、止まるよう指示を送る。その表情は先程までと違い、真剣みを帯びた狩人の目だった。
「風の魔力探知に引っ掛かった!・・・・この先にウルフの群れがいる。多分『森の悪魔』に殺されたツインヘッドウルフが率いてた群れの生き残り」
「どうする?やり過ごすか?」
「奴ら街道で待ち伏せをしているみたい。武装した隊商が通る道だから本来ならあんなところで待ち伏せなんてするはずないのに・・・」
「・・・・とにかく邪魔」
因みにここではシドーは完全に3人においてけぼりをくらってる。
「あのー、サヤさん?ウルフって一体・・」
「ウルフとは鋭い牙と爪を持つ、毛皮の生えた四足歩行の魔物です。単体であればさほど驚異でもなく向こうも襲ってはきませんが、知能が高く群れで獲物に襲いかかります。勿論私達も例外ではありません」
「マジか・・・」
シドーは息を飲む。ウルフという響きから間違いなく前世で言うところの狼であろう。そして、同じであると言うことは
「あのウルフ達、こっちを真っ直ぐに見てる・・・まだ相当距離が・・・!奴らこっちに向かってくる!?」
「何でだ?」
「奴らは鼻が良い・・・でもこの距離なら余程匂いが強くなきゃ・・」
ここで3人の目線がシドーに向く。正確には先程ルシアが面白半分に引き抜いた矢の傷から血がドバドバと溢れて
「・・・そうかわかったぞ!あいつら俺の血の匂いに反応して」
「もう遅いわああああ!!」
スゥーリアがツッコミと弓を構えるのと、茂みから2体のウルフが飛び出してくるのは同時だった。
「はぁッ!」
スゥーリアが弓を放つ。目の前に迫ったウルフに対しカウンターで決まったそれはウルフの眉間を貫き絶命させる。しかし、矢を放った直後の無防備なスゥーリアの横からもう一体が迫る。
しかし、それにはすでにサヤが迎撃に向かう。赤い髪をなびかせ、疾風のごとき速度でウルフに肉迫すると大きく開かれた顎をしたからアッパーカットで撃ち抜く。
「シィッ!」
「ギャウンッ!?」
短い悲鳴を残し、ウルフの頭部が消し飛ぶ。
あまりにも一瞬。目の前で起きたことにシドーは目を丸くするだけだった
「すげー・・・」
「何をおっしゃります、魔王様はこれ以上のことを何度も成し遂げているではありませんか!」
「確かに!」
ガブリエルやブラックパラサイトに比べればウルフなど雑魚でしかない。
「ようし!俺もや」
「・・・『ブリザード』」
シドーが鎌を構えて飛び出そうとした瞬間、凄まじい吹雪と氷柱が舞い、ウルフ達を根こそぎ氷漬けにして吹き飛ばした。呆然とするシドーにルシアが親指を立てて
「・・・フッ」
と意地悪な笑みを浮かべていた。
「俺の見せ場~~~・・・」




