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仲間が増えた!

時刻は夜。『森の悪魔』ことブラックパラサイトは無事討伐され、シドー達は森人族の里で戦いの疲れを癒していた。

サヤとスゥーリアは秘薬を飲んだとはいえかなりの出血をしていたため救護所に運ばれ、ルシアもその付き添いに行っている。そのためシドーは1人で事の顛末をルークやエドワードといった里の重鎮達に報告していた。


「そうですか···何から何までご助力頂き、誠に感謝いたします。」

「いえいえ、俺達はスゥーリアに協力しただけであって···戦士の人達もあんなことに····」

「彼らのことは残念でしたが、致し方ないこと。彼らも戦士の本懐を遂げたということです。」


エドワードが口ではそういいながらも神妙な面持ちで祈りを捧げる。みたことない礼法だがこれが彼らなりの死者を弔う祈りなのだと納得する。


「····さて、シドー殿も御疲れでしょう。部屋を用意しておりますのでそちらでお休みください。」

「はい、ありがとうございます。」


そう言ってシドーは社を後にするが、宿へは行かずある場所へと向かった。








「····ここか」


里の人達に尋ねながらシドーが訪れたのは里の端にある墓所だった。そこからさらに小高い丘を登り、一本の巨木以外なにもない開けた場所にでる。

よく見ると巨木の根元に墓石があり、ある人物の名前が記されていた。



「あれ?シドー君、なんでここに?」


後ろからの声に振り返るとそこには病着姿のスゥーリアがいた。

頭に包帯を巻いているが、血色も良く足どりもしっかりとしていた。


「抜け出してきたのか?」

「うん!ボク注射嫌いだから」

「子どもか!」


あっけらかんと言いながらシドーの隣にぺたりと座り込む。

シドーもそれにならいその場に座るとスゥーリアがシドーの肩に頭を乗せてもたれ掛かる。


「ちょっ!?なになになに!?」

「もうじっとしててよ!まだ少しふらつくんだからさ」

「じゃあ寝てろよ!」

「ええ!なにする気!?」

「ここでじゃなくて病院でだ!」

「病院で!?シドー君たらマニアックな···」

「病院で寝てろっていってんだよ」


クスクスとからかうように笑うスゥーリア。


「ボクたちってさ、会ったばかりなのになんでこんなに息合うんだろうね?」

「自分で言うかよ。確かにな、友達の友達みたいな?部下の知り合い?」

「ま、結局打ち解けられるかどうかは当人次第ってことなんだよね」


スゥーリアは立ち上がると墓石の前に行き、片膝をついて祈りを捧げる。

そこに先程までのおちゃらけた感は全くなく、真摯な面持ちであった。


「··········」


どれぐらいの時間が経ったのか、スゥーリアはシドーの元へ戻ってくる。


「いいのか?」

「ん、もういいの。決めたことだから。シドー君どうぞ」

「お、おう」


スゥーリアに言われて緊張しながらもシルバーの墓へと祈りを捧げる。


「ねぇシドー君。シドー君はこの旅で何を見つけるつもりなの?」

「え?何をって···なんだろな。神様的な人から世界を救ってくれみたいなことを言われたからとりあえず世界をまわってみようかなって。どうやって救うかは各国の人達と話し合うよ」

「出来るの?魔王なのに?」

「何が言いたいんだ」


シドーとスゥーリア。互いに成り立てとはいえ一国を率いる王の称号を持つもの。互いの間にはピリピリとした緊張感が漂っていた。


「この世界の人達の魔人族に向ける目線は敵意しかない。うちは以前は友好関係だったけどボクとしては中立でいたいかな。そんな敵意の中を君はサヤちんとルシアたんを引きずり回すっていうのなら···」


スゥーリアの手には弓矢がすでに構えられ、その矢先はシドーへと向けられていた。


「ボクが君を止める。ボクじゃどうやったって君には勝てない。でも君がボクを殺せば、君達の関係は間違いなく破綻する。今じゃなくてもそう遠くない未来にね。さぁどうするんだい魔王シドー!」


スゥーリアの意気に呼応するかのように辺りに風が吹き荒れる。


「俺はあの二人に『俺について来い』とは命令していない。それどころかついてくるなって命令したのにあいつらは俺が心配だからってついてきたんだ。

それは紛れもなくあいつらの意思だ。どんな目に遭うかなんてあいつらはとっくにわかってる。止めるのなら俺じゃなくてあいつらの方だ。」

「········」


吹き荒れていた風が静かに止む。


「止めたさ····でもいくら言っても二人はきかなかった。『魔王様が心配だから』ってさ。それもあるのだろうけど、二人も期待しているんだよね。君が世界を変えることを」

「荷が重いな····ん?二人も?」

「ボクも君に期待していいかな?ボクと森人族全員の命をかけた期待をさ」


にっとスゥーリアが笑いながら言う。


「最初からそのつもりだったのかよ」

「ボク言ってたでしょ?決めたことだからって」


あっけらかんと笑うスゥーリアにシドーはどっと疲れを感じてため息をつく。


「正直二人のことを任せようと思ってたけど、そういわれちゃまた置いていけないな」

「ひどーいシドー君!二人にチクってやろおっと!それぇー!」


ピゅーっと昔の漫画のように足をぐるぐるさせながら逃げようとするスゥーリア。しかし一瞬立ち止まり、


「あっ!そーだシドー君!もうひとつ決めたことがあるんだ!」

「なんだよ」


ぶっきらぼうに言うシドーに満面の笑顔で


「ボクも君達の旅についていくから!よろしくぅ!ちなみにサヤちんとルシアたんの許可は降りてます。エドワードとルークにはこれから言う。たぶんめっちゃ怒られるだろうけどそんときは一緒にお願いしてね!」


キャハッと言い残して丘を走って去っていってしまった。



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