おや?シドーの様子が・・・・
シドーの背中で完全に夢の中へと旅立ったルシアを背負い、不機嫌なスゥーリアに部屋へと案内される。
「はーいじゃあシドー君おっぱいの時間はおしまいでーす。ザンネンデシター」
「だから~・・・ああもう何でもいいや!とにかく後は任せたぞ」
「魔王様、おやすみなさい。ルシアには朝起きたら私がきつく言っておくので。」
「べ、別に良いって・・・んじゃ、おやすみ。」
これ以上スゥーリアの視線に耐えきれず、ルシアをサヤに預けて用意してくれた部屋に入る。
中は簡素なベッドと机が置いてあるだけで、シドーは鎧を脱いで鎌と一緒に壁際に置くとベッドに横になる。
窓からは月明かりが差し込み、視線を窓に向けると森人の里が一望できた。
「大きな集落だな、婆ちゃん家の田舎みてぇ」
幼い頃訪れた場所と比べてしまい苦笑する。
「みんなどうしてるのかな~・・・死んだ人ってみんなこんな気分なんかな・・」
この世界に来てから毎晩一人になると必ず前世のことを思い出している。以前は寂しさや不安を感じていたが、この世界でやることを見つけたお陰で今はそれほどでもなかった。
(『森の悪魔』か・・・ガブリエルが正攻法で勝てない族長を殺したやつか・・・)
目に魔力を込め、久しぶりに魔眼を発動する。対象は里の外、薄暗い森の中を進んでいく感覚。
やがて1つの巨大な気配にぶつかり、シドーの視界が途切れる。
「・・・・あいつか・・・確かにヤバイな。」
距離があるせいかかもしれないが、魔眼で見つめたはずの情報が全く入ってこなかった。
「今までならある程度のステータスがわかったのに・・・何でだろ?」
ボーッとしながら、シドーは頭に浮かんだあることを実行してみる。
「・・・お、でたでた。」
それは自分のステータスの確認である。ゲームのステータス画面を意識すると頭のなかにシドー自信の姿と、体力や魔力などの情報やスキルが浮かんでくる。
その中の魔眼についてより詳しく視てみる。
魔眼:見つめた対象の真理を探る
「探れてねーじゃん。」
ボソッと愚痴ってベッドに俯せに寝る。
(『森の悪魔』って強いんだろうな・・)
一国の長、つまり自分と同ランクで武芸に秀でた人物が勝てなかった相手。どうしても不安になってしまう。さらに
「いつまでたってもレベル1だし、ステータス固定なのか?・・・ん?」
そこそこな激戦の後にも関わらず、レベルどころか経験値が入った気配も感じずにいるのが余計に不安を煽る。
「なんか・・レベルの表示が光って・・・」
ステータスを確認していたシドーは、レベルの欄が不自然に光っているのに気付き、魔眼の時のように詳しく視てみる。その瞬間
カッ!!!!
「うお!?な、なんだこ・・・・れ・・・・」
頭の中で何かがばっと光を放出したような感覚。じわじわと体が熱を帯びていき、しびれに変わっていく。
「なにこの正座の後の足ビリビリの全身バージョン・・・あが・・・ああああ」
うめき声を上げ、身悶える・・・つもりが体がピクリとも動いていなかった。
(まずいまずいまずいまずいまずいまずい・・・・サヤ!ルシア!・・)
必死で二人を呼んだつもりでも、パクパクと口だけが動いて実際に声は出ていなかった。
やがて次第にしびれが痛みに変わっていき、あまりの激痛にシドーは意識を手放した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おはよう!サヤちんルシアたん!昨日の話の続きなんだけどね・・・・って二人ともどうしたの?」
シドー達に会いに朝早く宿を訪れたスゥーリアだが、
「・・・・・・・」
「うぅ・・・ぐすっ・・うぇっ・・・魔王様あああぁぁ!!あぁ~・・・」
横たわったシドーの手をとり唖然とするルシアと、顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしたサヤが泣きじゃくっている光景に思わずドアを閉めそうになる。
「えっ・・・と、どうしたの?」
「ま、魔王様が・・魔王様がああああ」
ガバッとサヤがスゥーリアに抱きつく。サヤの方がだいぶ背が高いため、スゥーリアは苦しそうにサヤの背中を叩く
「ちょっサヤちん痛い痛い!背骨が折れる・・後地味に顔も痛い!鎧がごついんだよ~!!ルシアたん!シドー君がどうしたの?」
サヤに抱き潰されないよう必死で抵抗しながらルシアに聞いてみると、
「・・・・まおーさまが起きない」
と、サヤと違って冷静に告げる。しかしルシアもこの状況に焦りを隠せずにいた。
「起きないって・・・普通に寝てる風にしか見えないんだけど」
なんとかサヤホールドを脱したスゥーリアがシドーの顔を覗きこんで言う。
昨日見たときと変わらず、やや色白の肌に短い黒髪。寝汗をかいているがしんどそうにも見えず、呼吸もしている。
「・・・そう、ただ寝てるだけ」
「ぐすっ・・・何をやっても目が覚めないんだ。」
幾らか落ち着きを取り戻したサヤが言う。異常に気づいたのはスゥーリアがくる少し前であり、スゥーリアが来るまで色々と試してはみたが・・・
「・・・・打撃、冷気、熱気、電撃、タライ、くすぐり、******、○○○○○、・・・・色々試してはみたけどダメだった。」
「そっか・・もしシドー君が起きても試した内容は教えないでおこうね。・・・それより昨日の話の続きなんだけどね・・・」
スゥーリアが話を切り出そうとしたその時、甲高い警報音と共に、焦燥をはらんだ声が響き渡る。
『非常事態発生!非常事態発生!か、怪物が!結界を破って里へ侵入してこようとしている!結界が守っている間に戦える者は里の入り口まで来てくれ!女子どもは地下へと避難しろ!忙ー!!わああああああ!?』
バツッと、悲鳴を最後に声は途切れてしまった。
「今のは何!?」
スゥーリアが慌てて窓から里の様子を見ると、誰もが驚いて家の外へ飛び出したり、周りの者と集まって話をしている。
「まさか‼・・・みんな!僕の話を聞いてくれ!」
スゥーリアが窓枠に足をかけ、声を張る。住民達は何事かと一斉にスゥーリアへと視線を向ける。
誰もが不安の色を隠せずにいた。誰からも慕われていた先代が倒れてから日が浅い。その娘とは言え、森人の中では年若い少女に里を任せることに、不満を漏らす者もいる。加えて今回の非常事態で住民の心には絶望すら浮かんでいた。
そんな目線を一斉に向けられ、スゥーリアは息が詰まってしまい、二の句が出せずにいた。
(僕に・・・みんなの不安を取り除くことなんて出来るのか?)
そう思った途端、言おうとしたことは霧散し、口のみが震える。口だけでなく、手足の指先から全身に悪寒が広がる。
思い浮かぶのは父の最期の姿。勇敢に戦場へ向かい、何度も敵を撃退してきた逞しい背中。あの日も無事に帰ってくるのだと思っていた。しかし、戻ってきたのは無惨な死体のみ。まるで次にこうなるのはお前だと言わんばかりに。
(・・・違う!)
次にこうなるのは自分と、里に住む森人の民だと。
(もうあんな思いをするのは絶対にイヤだ!絶対に誰も死なせない!)
頭を振って悪い考えを吹き飛ばし、大きく息を吸い込み。
「『森の悪魔』だ!封印を解かれ、我が父先代族長を殺し、我ら森人族の平穏を脅かそうとしている!守衛隊が食い止めている間に急いで地下へと避難するんだ!」
その言葉に、事態の深刻さを理解したのか、皆それぞれ行動をとり始める。
避難場所である地下へと急ぐ者、そして、各々武器を取り、里の入り口へと向かう者。
「な!?みんな何してるんだ!僕は避難しろって言ったんだぞ!族長の指示に従えよ!」
スゥーリアは叫ぶが、武器をとった一団は歩みを止めない。それどころか、
「族長、みんな同じなんだ。俺達だって先代の敵をとりたいんだ。」
「それに里のことを考えるなら、一番大事なのはあんたの命だ。」
「我ら森人族は!森の戦士としての誇りがある!先祖代々からの仇敵に引導を渡してやる!」
おぉー!!と戦士達の雄叫びが響く。
「・・・・・ふざけるな・・・みんな死ぬ気かよ・・・みんなヤツがどれだけ恐ろしいかわかってるくせに・・・・」
「スゥーリア・・・」
サヤが震えるスゥーリアの肩に手を置く。スゥーリアの瞳からは大粒の涙がこぼれ落ち、床に染みを作っている。
「あはは、ごめんねサヤちん、ルシアたん。折角の再開なのにこんなことになっちゃって・・・二人はシドー君を連れて逃げて。地下から坑道が続いていて、樹海の外に繋がってるんだ。」
「まさかいう通りにすると思っているのか?」
「・・・・・・・・・」
じっとスゥーリアを見つめるサヤ。睨んでいると言っていいくらい怒りを込めた視線にスゥーリアはばつが悪そうに目を反らす。
そんなスゥーリアを見て、サヤはため息をつく。
「どれだけ年月が経とうが私達は親友だ。親友の命の危機に何もしないわけないだろう。正直、あのシルバー様が勝てなかった相手に私ごときが役にたてるかわからないが、それでも精一杯助力させてもらう。」
「・・・・・ぐすっ、・・・ありがとう」
「・・・・私はまおーさまの側にいる。目を覚ましたらすぐに転移でとんでいく。」
「頼んだぞルシア。もしもの時はお前が避難民を守るんだ。」
「・・・・縁起でもない」
そう言ってサヤとスゥーリアは武装して、森人族の戦士達の後を追う。
ルシアも意識のないシドーと共に避難場所である地下へと急ごうとするが
「・・・・・どーやって運んでいこう?」
スゥーリア・シルフィン
種族 森人族 年齢16~18
レベル27
H 2300
M 1200
A 950
G 800
S 1800
身長 164cm 体重「あっはっはっは」kg
明るい性格でノリが軽いギャル
魔法 風、治癒、支援
スリーサイズ B72 W57 H82
よく言えばスレンダー・・・・




